AngelList創業者Naval Ravikantが語る、成功するスタートアップ・ハブの作り方(3/3)

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左から:Naval Ravikant (AngelList)、Jai Choi (Teckton Ventures)

本稿は、5月14日〜15日に韓国・ソウルで開催されたスタートアップ・カンファレンス「beLAUNCH 2014」の取材の一部である。2日目に行われたファイヤーサイド・チャットのセッションに、起業家と投資家をつなぐソーシャル・ネットワーク「AngelList」の共同創業者 Naval Ravikant が登壇し、スタートアップ・シーンにおけるエンジェル投資やクラウドファンディングの重要性、成功するスタートアップやスタートアップ・ハブの作り方について考えを披露した。

今回はその第三回目である。なお、このセッションのインタビュアーは、サンフランシスコを拠点にスタートアップ向けシード投資を行っている、Teckton Ventures の Jai Choi が務めた。

(トランスクリプションと翻訳:池田 将)

前回からの続き)

では、君が最近興味を持っているものに話を移してみよう。最近、心を躍らされるビジネスモデルや企業を教えてくれないかい?

Naval: 私なら、投資家にどんな会社をやるべきかなんて聞かないね。投資家にそれがわかるくらいなら、私が先に始めているよ。そういうことではなくて、起業家は世界中の誰よりもよくわかっていること、熱意を持てること、10年以上やれることをやるべきなんだよ。

2つほど興味のある分野があるが、いずれも深い技術的な専門知識が必要になる。Bitcoin と、そのウォレットである Blockchain、暗号技術には興味を持っているよ。ウェブならではの、中央集約化されてないしくみをうまく利用しているからね。

ドローンの世界に目を向けてみると、この分野でコンシューマ向けアプリをまだ見かけていない。ビジネス向けや軍事用ばかりで、多くの技術は開発途上だ。3D プリンティングも将来有望だ。ハードウェアはよりソーシャルに、コネクティッドに、安価になっていくだろう。そこでは面白いことが起きている。より深い技術が展開されていくだろう。共有経済は巨大だ。料理、車、家、掃除機、洗濯、食品店、あらゆる分野に共有経済の可能性がある。

こういうものはシリコンバレーで始まったばかりだが、韓国や中国市場では適用できて、それ以外の市場には合わないようなものもあるだろうと思う。韓国の人々が共有しているものがあるだろうが、モバイルやブロードバンドを使えば、もっと効率よく共有できるだろう。共有経済は新たな可能性ある分野だと考えている。マーケットプレイスのビジネスだからだ。サービスを供給する側と享受する側の両方に、うまく合わせなければいけない。それがうまくできれば、信じられないようなビジネスになると思う。

これまでに見てきたアイデアやビジネスの中で、もう一度やってみたいと思うものはある?

Naval: 全部やってみたいね(笑)。すべて形にしたい。それこそ、私が今 AngelList をやっていることの理由だ。すべての会社とつながっていられる。そこには何十万という素晴らしいアイデアがあるからね。アイデアに限界は無い。エグゼキューションあるのみだ。

現在、レイターステージのファイナンス事情を考えてみると、より多くの PreIPO やヘッジファンドが流入してきていますよね。これはいいことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか? こういうキャピタルは現在の市場状況において差別化できるのでしょうか?

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Naval: いいか悪いか、白黒つける必要は無いと思うよ。必然的なものだからね。かつては、3社に1社が次ラウンドへの資金調達をし、10社に1社が大きな会社になっていた。今ではそれが、5社に1社、ないし、10社に1社が次ラウンドへの資金調達をし、100社に1社が大会社になっている状況だ。大きな会社へと成長していた企業が、今では速いスピードで超巨大な会社と成長するようになった。すごい短期間でゴジラのようにね。

そこで投資家はこう考えるようになった。「どうせ成功者に賭けるのなら、成功者にすべてを賭けよう」ってね。ごく少しの限られた成功者に多額を投資するんだ。

この傾向は顕著になっていると思うよ。ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドは、投資した企業がIPOしたり、多額のバリュエーションになったりするまで待たなくなるだろう。そこは市場の多くが存在する場所ではないんだ。市場の多くが存在する場所では、彼らは私がどんな会社に注目しているか、常に調べているよ。

起業家にとって、これからの十年間は会社を作ることより、会社に投資してもらうことの方が難しくなるだろう。もし会社をやるなら、じっくり考えた方がいい。週末に友達とちょっと考えたようなアイデアで、会社を始めない方がいい。そのアイデアがうまく行かなかったら別の週末には退屈するだろうし、思ったように行かなければ、次の週末にはそのアイデアをやめてしまうだろう。やろうとしていることに深い知識と確信を持たなくちゃいけない。皆が失敗すると言おうが、毎度のように障害にぶち当たろうが、進み続けられる勇気と確信をね。

多くの駆け出しの起業家にとって、現在、資金調達は重要なことですよね。投資家に何を求めたいですか? シード・インベスターや(レイターステージに投資する)ベンチャー・インベスターにとって、何が重要でしょうか?

Naval: シード・インベスターやベンチャー・インベスターは、同じものを求めているね。だって、エンジェルやシード・インベスターの所へ行って、「(ある程度育った)ベンチャーとしてはまだ十分ではないけど、あなたにはちょうどいいかも。だって期待値も低いし、さほど多くの資金も調達できていないでしょう?」とは言えない。

問題はシード・インベスター達が、彼らのポートフォリオのスタートアップが、ベンチャーマネーを調達する必要が生じることを知っていることだ。(レイターステージを相手にする)ベンチャーキャピタリストが企業に対して持つべき基準に、シード・インベスター達が縛られてしまっている。だから、シード・インベスターは、ベンチャー・インベスターと同じものを求めてしまっている。

シード・インベスターなら、ベンチャー・インベスターのように考えたり、起業家に「その市場は十分に大きいの?」なんて聞いたりするのをやめるべきだ。逆に起業家にはこう言うべきだ。

「大きくて重要なことをやっているのか?」「君のチームはそのことを長くやっていけるのか?」「チームはそのことに見識があるのか?」「競合からの追い上げを交わせる要素はあるのか?」「多くのユーザがサインアップするほど、会社が力を得るとか、技術が高度になるとか、そういうマーケットプレイス効果はあるのか?」

そして、最後に、「それはよいディストリビューション・モデルなのか?」「普及させる方法を知っているのか?」

ディストリビューションを独占するのは大変難しいけど、賢明なスタートアップなら、その方法を見出せるだろう。

では、そろそろセッションをまとめたいと思います。会場から質問ですが、数十年にわたり起業家兼投資家をやっている立場からアドバイスをもらえますか? 人生哲学とか。

Naval: そうですね、私は若かった頃、若くいられるなら何でもしたいと思っていた(笑)。この壇上で話している人から何かを得られたとしても、それは聴衆の皆さんの若さに比べれば貴重なものではない。若さにしがみつくべきだ。若くい続けられるなら、そうすべき。強くお勧めしたい。

なので、私は常に生き急いでいた。常に前のめりで生きて来た。決断も速くし、苦労し、走り、競争し、急いできた。時として、短時間で決断すると、答を誤ることもある。しかし、すべてを人生の糧だと思っている。人間関係であれ、健康であれ、お金であれ、ビジネスであれ。

Warren Buffett が一代で世界一の富豪になったのは、彼が我慢強かったからだ。彼は投資して30年間待った。彼は株を売ることもせず、お金が必要なときにも、そこから換金することもしなかった。

同じように、人間関係においても、今後20〜30年間にわたって人生を共にするであろう人と仕事し、彼らを愛するべきだ。今後20〜30年間にわたって続けられる、ダイエットやワークアウトをすべきなのと同じようにね。

20〜30年後に誇りに思える人と、誇りに思える方法でビジネスをすべきだ。なぜなら、報酬は最後の最後にもたらされるから。いろんな要素をかけ合わせ続けるんだ。その要素から得られた数式が、人生のあらゆる場面に応用できることがわかるだろう。ビジネスのことだけを言ってるんじゃない。我慢強く、常に長期の展望を持って計画することだ。

私は常に自分に問うている。「この決断について、1年後の自分、5年後の自分、10年後の自分はどう感じるだろう? この人と10年後も一緒に仕事しているだろうか? こういうふうにやっていたいだろうか? 作ったものに自信を持ち続けられるだろうか?」

その人と2年間仕事を共にできないのなら、その仕事はやめて他のことをやった方がいい。だって、そんなことやっても意味はないから。

時間です。貴重な話をありがとうございました。(会場拍手)

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