予防医療や超高齢化社会を見据えるヘルスケアスタートアップ「FiNC」、”36歳年齢差”の経営陣にインタビュー

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8月1日、「FiNC オンラインダイエット家庭教師」を運営するヘルスケア系スタートアップのFiNCに、元みずほ銀行常務の乗松文夫氏が取締役副社長 CFO として就任した

乗松氏は、みずほ銀行常務を退任後、協和発酵キリン常務、協和発酵フーズ社長、総合商社ミヤコ化学社長など幅広い企業の経営に携わった経験をもつ。

FiNC代表取締役 CEO の溝口勇児氏は現在 29 歳。乗松氏は 65 歳で、その年齢差は 36 歳。ライフネット生命の経営陣を彷彿とさせる年齢差経営陣に、インタビューを行った。

多様性のあるチームに

左:乗松氏、右:溝口氏
左:乗松氏、右:溝口氏

FiNCは2014年3月より元ナイキジャパン 社長の秋元征紘氏、ガリバーインターナショナル創業メンバーにして元常務取締役の吉田 行宏氏、元クックパッド執行役 CFO 成松淳氏らが社外取締役を務めている。そうそうたるメンバーの役員陣に、乗松氏が加わることは大変興味深い動きだ。

元々、FiNC取締役CTOの南野 充則氏が以前乗松氏と仕事をしたことがあり、その縁から今回の参画の話がスタートしたという。

溝口氏「CTOの南野が以前の仕事で乗松さんとお付き合いがあり、そうした縁もあって顧問や監査役などでお手伝いいただくことを考えていました。ですが、実際にお会いしたらメンバー全員が乗松さんに一目惚れしてしまいまして(笑)。常勤で来てもらいたい、と考えるようになりました。

私は創業期にライフネット生命の岩瀬さん、出口さんに影響を受けていたこともあって、ダイバーシティにあふれたチームにしたいと考えていました。乗松さんと一緒だったら、面白いチームにできそうだな、と。」

乗松氏「私は人の生は楽しく豊かでないといけないと考えていまして、そのために健康はとても重要なものだと考えています。震災以降、東北の復興関連の仕事で、介護の現場や地域包括ケアなどにも携わり、心や身体の健康とはどういうものなのだろうか、と考える機会が増えていました。

そうしたタイミングでCTOの南野さんがFiNCに入るという話を聞き、パーティなどに呼んでもらう機会が何度かあって、参加するうちに楽しそうだなと思うようになりました。ここなら私のこれまでの経験も生かすことができそうだと考えたこともあって参画を決めました。」

ヘルスケア領域でビジネスをする上でもプラスに

FiNCが取り組むのは健康やヘルスケアといった領域。従来のスタートアップのように、若い人だけをターゲットにしたサービスの作り方ではなかなか規模を大きくすることができない。事業展開を考えていく上でも、乗松氏の参画は大きい。

溝口氏「ヘルスケア領域ではどうしても若い人だけだと信頼面、安心感などが不足してしまうことがあります。そういった面でも、知見の多い乗松さんに参画していただけることは大きなプラスです。」

乗松氏「これまで銀行、メーカー、商社などを経験し、経営者にもなりました。ベンチャーというよりも、大きな企業での仕事が多かったのですが、健康・ヘルスケアを標榜して事業をしていくからには、企業内での年齢層の高い人たちも対象になります。私がいろいろなところとのつなぎ役になることで、貢献ができるのではと考えています。」

新たなチームづくりの事例に

溝口氏が語っているように、これだけ年齢差があるスタートアップの経営陣はほとんど例がない。彼らはこうした事例がもっと増えていくといいのではとコメントしている。

溝口氏「こうしたチームの事例が増えてくると面白いのではと考えています。起業家で良いビジネスモデルがあっても、老練さや経験が足りないため上手くいかないこともあります。それはとてももったない。私たちのようなスタートアップのフェーズで乗松さんのようなキャリアの人に入ってもらえることで、足りない部分を補うことができるので、とてもありがたいですね。

さらに、乗松氏がIT業界の出身ではないことについても溝口氏は触れる。

溝口氏ユーザの大半はIT以外の顧客です。乗松さんが培ってきたネットワークやルートはITとは全く異なります。その出会ってこられた人の質と量と、私たちのビジネスには良いシナジーがでるはずだと思います。」

乗松氏「これまでのキャリアでも会社の役員として参加することなどはあったので、自分の中では珍しいことをしたつもりはありませんでした。実際に足を踏み入れてみたところ、考えていたよりもレアケースであることがわかりました。こういうケースはもっと増えてもいいのではないでしょうか。」

自分の健康をコントロールできる未来をつくる

多様性あるチームとなったFiNCが目指していくのは、「人が自らの健康を自分でコントロールできるようになる未来」だ。溝口氏は知識と判断基準を提供していくことで、自分のコントロールを可能にしていこうとしている。

溝口氏「自分自身をコントロールするために必要な知識と判断基準を提供することができれば、無責任なダイエット情報に踊らされることがなくなります。そのためには、ゆくゆくは検査を無料で実施できるようにしようと考えています。」

FiNCでは、遺伝子検査や血液検査、300項目にわたる生活習慣に関するアンケートを実施した後、そのデータを元に管理栄養士がクラウドソーシングでダイエットに向けてのアドバイスを行う。

溝口氏「管理栄養士やトレーナーの隙間時間を利用して仕事をすることがマジョリティとなる時代を作れたら、と考えています。1人の専門家が50人くらいの人間に対してサービスを提供すれば生計が立てられるようになれば、これは大きな変化です。

生体情報を集めることができたら、それをサービス化をして提供していきます。そうすれば、絶対に世の中は良い方向に向かっていくと考えています。自分たちのサービスが広まった先にあまり世の中がよくなっていないのはつまらないですから。」

溝口氏は「紀元前と紀元後のようなターニングポイントを作りたい」とコメントしている。

予防医療や超高齢化社会を見据えて

溝口氏「今はダイエット支援のサービスを提供している印象が強いかと思いますが、1年後には別の印象が強くなると思います。FiNCが提供するソリューションには一貫性がありますが、次第に、予防医療に特化したサービスを提供していく方向に向かっていきます。」

乗松氏「国の医療費がこれだけ膨らんでくるとなんとかしないといけなくなります。医療費に頼るのではなく、自らが健康をコントロールしないといけない。これが唯一のソリューションだと思います。」

話を聞いているといくらでもやることとやる意義が出てくるヘルスケア領域。FiNCは近々資金調達を予定しており、さらにスピードを上げて走って行くための体制を整えている。社会の未来を見据えて彼らはチャレンジしていく。

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