視覚追跡機能を持つヘッドマウントディスプレイのFOVEが優勝ーー第7回SF Japan Night全6サービス

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サンフランシスコに拠点を置くクリエイティブエージェンシーのbtraxは11月5日、海外進出を目指す日本のスタートアップのためのピッチイベント、SF Japan Night VIIファイナルをサンフランシスコで開催した。東京予選に14社が出場し、サンフランシスコでの本戦に6社が選出、審査の結果、視覚追跡機能を持つヘッドマウントディスプレイのFOVEが優勝を勝ち取った。

Silicon Valley Bankのディレクター職を務めるLilly Huang氏、AirbnbとTwitterで海外事業部門で活躍されていたThomas Arend氏、そしてFenox Venture Capitalのジェネラルパートナー兼CEOであるAnis Uzzaman氏の3名が審査員として各サービスを評価、テクノロジー、ビジネスモデル、グローバル展開、ピッチスキル、ユーザーバリューの5つの基準で審査が実施された。

1位: FOVE

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FOVEはヘッドマウント・ディスプレイで、アイトラッキング機能を使って直感的にバーチャル世界を体験できるサービス。サンフランシスコ本戦を前に実施されたDraper Universityでのファイナリスト6社とアメリカのスタートアップ数社とのピッチイベントでは、総合2位、日本勢1位という結果を残している。

FOVEは一般的なゲームユーザー市場は84億ドルの内、ハードコアゲーマ市場である16億ドルの市場をターゲットにしている。また、ハードコアゲーマー市場以外に、将来的に、医療分野にも進出できる可能性を示しており、デモの中では視覚障害の人がFOVEを使い、ロボットを動かす動画を流していた。このレポートによると、国内の医療機器市場は2.4兆円にも及ぶとのことで、ハードコアゲーマ市場以外に、どう医療機器市場へも参入するかが期待できるポイントとなるかもしれない。

2位: AgIC

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AgICは銀のナノ粒子を含んだ特殊導電性インクを使って、専用プリンタで印刷すれば簡単に電子回路が作れるというサービスを提供している。1週間程度かかる電子回路制作の工程時間の問題を、短時間で簡単に作成することで解決する。

具体的には、通常のやり方で電子回路を作るのは1週間、そして3Dプリンティングで制作する方法では最大で10時間程度かかる一方、AgICを利用すれば、2、3分しか時間がかからないという点がアピールされていた。製造業における電子回路作成の時間短縮に焦点が置かれていたが、知育分野への進出に関する話題も興味深かった。

3位: Sansan

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Sansanはクラウド型の名刺管理サービスを提供している。専用の端末に名刺をスキャンすれば、スキャナが名刺データを読み取り、かつオペレーターによるダブルチェックも行われ、100%に近い精度を保つことができるのがサービスの特徴である。

全スタートアップのプレゼンの中で、もっともエンターテインメント性と熱意が感じられるプレゼンであった。ただやはり今後はビジネスカードの文化が乏しい欧米市場へのローカライズが問題となると思われる。実際にサンフランシスコのミートアップなどのイベントにいっても、自分から積極的に名刺交換するというシーンはあまり見受けられない。このローカライズの問題に対してしっかりとした戦術を打ち出すことが求められる点となるであろう。

KAIZEN Platform

kaizen

KAIZEN Platformは、世界中のグロースハッカーにUI改善のためのA/Bテスト及び改善案依頼ができるクラウドソーシングサービスを提供している。最近、COOに元Boost MediaのErik Ford氏が就任した。

ピッチスキルはネイティブの人がやっていたこともあり、各スタートアップの中で秀でていた。しかし、クラウドサービス型のUI改善サービスは強豪が多く、例えば先日の500Startupsのデモデイにも出ていた、ユーザービリティーに関するデータを収集、解析するサービスのUXCamや、モバイル向けではあるがA/Bテストサービスを提供しているApptimizeがなどが挙げられる。

2014年第一期の収益の成長率が200%ということで今が急成長期にあたると言える。これからはクラウドであったとしても、専属のプロ・グロースハッカーチームに依頼するのと同等のサービスが受けられることが求められるかもしれない。

Akerun

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Akerunは、スマートフォンのBluetooth機能を使って、鍵の開け閉めができるスマートロックデバイスを提供している。家事代行サービスのAny+Timesと連携してサービスを展開をしている。ドアに貼り付けるだけで設置が完了するという手間のかからなさが特徴である。

デモでは、モバイルを使って瞬時にドアを開けるというパフォーマンスを見せており、製品設定の手軽さがしっかりとアピールできていた印象を受けた。またプレゼン中に、スマートロックデバイスは約5億ドルあり、今後8億ドル以上のホテル市場、22億ドルの家事代行市場など他の分野と手を組めばより市場が広がることを示していた。このように、これからはパートナーシップを各関連業界の企業と結び、どうサービス拡大に努めるのか注目される点となるであろう。

CafeTalk

CafeTalk

CafeTalkはスカイプを利用して世界中の講師と生徒を繋ぐオンライン学習サービス。レッスン数は4000件以上あり、日本では語学学習目的、海外からは楽器演奏の学習目的で利用されることが多い。

すでに海外には50カ国から480人のチューターが、そして30カ国から2万7000人以上の生徒がおり、今後も市場拡大が狙えるとのこと。しかし日本国外の生徒は約15%とのことで、このシェアをどの程度拡大できるかが鍵となる。日本国内の生徒向け、海外にいる生徒向けのそれぞれ違うユニークポイントを訴求する必要があるだろう。今後はしっかりと各国のオンライン学習事情を分析し、ローカライズできるかが鍵になると思われた。

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