ユーザの声に耳を傾け、シンプルなUIを追求し続けた家計簿アプリ「おカネレコ」が300万ダウンロードを突破

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スマートアイデア 創業者兼代表取締役 江尻尚平氏

日本というのは、ことごとく高度な技術を実装することで、世の中を便利にしようとする傾向にある。しかし、人工知能を用いてコンバージョンを上げようとする日本のEコマースとは対照的に、タイのそれはチャットベースであるにもかかわらず、先進的なプラットフォームより高いユーザ・エクスペリエンスを提供している。日本は電子マネーを導入することで、切符を購入せずに公共交通機関が利用できる環境を作り上げたが、そもそも改札を作らないヨーロッパの国々や韓国の方が、導入コストもかからず便利な世の中だったりする。

言うまでもなく、高度な技術を実装しても、必ずしもユーザの利便性や満足度が高くなるとは限らない。simple is best は、デザインのみならず、アプリやシステムのあり方にも適用してよい発想だろう。

スマートアイデアが提供する「おカネレコ」は、まさに simple is best を地で行くアプリだ。世間に多く出回る家計簿アプリが、レシートの自動読み取りや他のオンラインシステムとの連携を強化するのを尻目に、「おカネレコ」は品目と金額の簡単な入力のみに特化してきた。ローンチから3年弱を経て、今月「おカネレコ」は Android 版iOS 版をあわせて、300万ダウンロードを達成した。

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ノキアでプロダクト・マーケティングに従事していた江尻尚平氏が2005年に、マーケティング・リサーチ会社の MobileMarketing.JP を設立。その後、2012年にアプリ開発専業会社としてスマートアイデアを設立した。レシートを見ながら簡単に入力ができる「おカネレコ」と、買い物しながら予算超過しないように金額が記録できる「買い物レコ」など、家計簿入力とその周辺ニーズに特化したアプリのみを開発している。

スマートアイデアを立ち上げた当時、家計簿アプリをいろいろ探してみたが、なかなか長続きしそうなものがなかった。まわりにも長続きしていない人が多いので、自分でも続けられるものが作れればいいと思い、「おカネレコ」の開発に着手した。

買い物したときに、2秒で品目や金額が入力できるのが売り。買ったその場で入力できる設計。家計簿をつける面倒さをなんとかできないか、習慣化できないかを考えたところ、この形に落ち着いた。(江尻氏)

このアプローチが正しかったのは、ユーザからのフィードバックに現れている。iOS と Android 向けにリリースされているアプリの MAU は80万人で DAU は 15万人、つまり4人に1人は継続的に「おカネレコ」を使っていることになる。昨年スマートアイデアが行ったユーザ・アンケートによれば、ユーザ満足度が96%に達しているのだそうだ。

ユーザは、女性が7割で男性が3割。女性は家計管理に使う人が多く、男性は結婚されている方は、お小遣いの管理に使われている方が多い。また、お金をたくさん持っていない大学生の利用も多いです。

さらに、リーマン・ショック以降は、アメリカでカード破産する人が増え、financial literacy の必要性が議論されるようになり、学校の授業などで「おカネレコ(英語名は Quick Money Recorder)」を紹介してもらえる機会が増えたようです。(江尻氏)

スマートアイデアでは、年に一度のユーザイベント、半年に一度のユーザインタビュー、3ヶ月に一度のアンケートを開催しており、これらの機会にユーザから寄せられた機能追加や改善への要望を、ビデオやテキストで記録。「おカネレコ」の開発を担当するベトナム・ハノイのチームにユーザの声を直接届けることで、継続的な開発の必要性を共有し、開発者のモチベーションにつなげている。

スマートフォンが出始めた頃は、スマホユーザはテックユーザだった。しかし、フィーチャーフォンが消えゆく時代、スマートフォンは誰もが持つもの。スマホユーザは、テックに敏感ではない、ごく一般の人たちに変化している。そういった層には、例えば、アカウント・アグリゲーションとかは求められていない。

OCR を使ったレシート読取機能を売りにするアプリも数多くあるが、結局、認識率は100%にはなり得ない。手で入力するのが最もシンプル。手軽に入力を続けるという家計簿の問題を完全に解決できているソリューションは無いと思っている。その問題を解決していくのが「おカネレコ」のミッション。(江尻氏)

先ごろ紹介したビジネス向けの情報共有プラットフォーム「Pie」も、テックではない人々を対象とすることで Slack との棲み分けを図ると語っていた。テックサビーな人々のみならず、そうではない人もスマートデバイスを使うようになった現在、あらゆるアプリはユーザの利用深度にあわせて二極化が進むのかもしれない。ニッチかもしれないが、スタートアップにとっては、そこに新たな市場可能性が潜んでいると考えてよいだろう。

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