
インキュベイトファンドは10月23日、若手起業家のスタートアップに特化したファンド「IF Angel1号投資事業有限責任組合」への戦略的LP投資を発表した。出資額は1億5000万円で、代表パートナー(無限責任組合員)には笠井レオ氏が就任する。ファンドの設立は2015年10月となる。
代表パートナーに就任した笠井氏は22歳の元学生起業家。2012年にProsbeeを創業し、インキュベイトファンドが主催する事業創生イベント「インキュベイトキャンプ」で事業採択される。その後、MOVIDA JAPANのアクセラレーションプログラムや、Voyageグループからの支援を受けて推進するものの今後の成長が見込めず事業を断念。
2014年7月からはインキュベイトファンドのアソシエイトとして新規事業に関するリサーチやデューデリジェンスなどに携わってきた人物。
笠井氏によれば、IF Angelには個人としてもファンドに出資した上で参画しており、500万円から1000万円程度のポーションで15社から30社への投資を実施するとしている。なお、ファンドのフォーカス分野はVR/AR、不動産、観光、ヘルスケア等の成長分野となっており、今後7年間に渡り運用するとしている。
若手によるファンド設立の理由
さて、20代の独立系ファンドといえば数年前は佐俣アンリ氏のANRIや木下慶彦氏のSkyland Ventures、最近では木暮圭佑氏が24歳という若さで立ち上げたTLMというファンドも話題になった。インキュベイトファンドからの独立組では佐々木浩史氏が今年1月に立ち上げたプライマルキャピタルも記憶に新しい。

しかし年齢という点だけでいえば、(少なくともテクノロジー系スタートアップ界隈では)間違いなく笠井氏のIF Angelは最年少記録と言えるだろう。
ちなみに今回、笠井氏のIF Angelには「お目付役」として親ファンドとなるインキュベイトファンドの赤浦徹氏と和田圭祐氏が彼をサポートすることになるのだが、その和田氏も実は25歳で最初のファンド「セレネベンチャーパートナーズ」を立ち上げている。若手ベンチャーキャピタリストの先輩、というと変な言葉だが、それなりに経験を伝えられるのではないだろうか。
ところで読者のみなさんには「そんな若手でなぜ投資を?」と思われる方もいるかもしれない。
通常「投資家」というと事業経験豊富なベテランおじさんがやるもの、というイメージが強いと思う。もちろんある側面でそれは正しく、投資現場には様々な経験やテクニックが必要になり、その知識量はやはり年齢に比例していると思えるところも多い。
一方で年齢でなければ解決できない課題もある。それが同年代特有の共有感とでもいえるものだ。もっと平たくいえば、若手へのリーチということにも言い換えられる。
「ターゲットは若手起業家です。私のような年齢層で20代前半。やはり役割として若手へのソーシングは期待されています。また、大学にも近いことから、そこに眠る技術や研究課題を探るということもあるかもしれません」(笠井氏)。
投資環境における先進国である米国では例えばやはりテクノロジー系のスタートアップ投資で著名なファーストラウンドキャピタルが同様に大学生を代表パートナーに据えた「ドームルームファンド」を運営していたり、やはり同じく投資ファンド、ジェネラルカタリストパートナーズが「ラフ・ドラフト」をボストンで展開していたりしている。これらは全て、若手起業家へのリーチを確保するためだ。
実はこれ、スタートアップ系のブログメディアの世界でも同じで、過去、TechCrunchでは学生インターンブロガー(一番若かったのは16歳ぐらい)が同世代の起業家をインタビューして記事を書くということがあった。
年代が同じだと話しやすいし、課題も共有しやすい。逆に言えば、スタートアップの投資や取材というのは極めて感覚的な部分が大きい、という証左かもしれない。
「インキュベイトファンドのアソシエイトとしての席も残しながら代表パートナーを努めます。LPもインキュベイトファンド一社ですので、今後、IF Angelの投資先はインキュベイトファンドの投資先にアクセスするなどのメリットも出てくると思います。投資先は基本的に友人や起業家時代の仲間を通じて探していきます」(笠井氏)。
笠井氏は前述の通り一度起業を失敗している。この痛みの経験というのは今後、投資する同世代の起業家にとって多いに参考になるだろう。
「(起業の失敗で)学んだことは信じ切るということでしょうか。私たちは事業の細かいところまではわかりませんし、起業家の決断を信じて背中を押せる存在になりたいです。大切なことは会社を立ち上げてからどのような時間を過ごし、何をしたか、という点で、その後の成長に重要なDNAを作り上げることなんじゃないでしょうか」(笠井氏)。
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