ウォータールー~カナダの小都市が世界的なスタートアップハブになりえた理由(2/3)

SHARE:

本レポートはCompass(元 Startup Genome)の最新レポートであり、エコシステム・ライフサイクルモデルを最初に紹介し、世界中のスタートアップとエコシステムのリーダーが活用できる 教訓を提供している。2015年グローバルレポートのために編纂された膨大なデータを用いてエコシステムを深く解析した本レポートは、中小のエコシステム がトップクラスのそれらと対等に戦うための指針を提供している。

前回からの続き>

620px-Uptown_Waterloo_Ontario
中心部の King Street を南側へ臨む。(Image Credit: Wikipedia

スタートアップパフォーマンス

ウォータールーおよびその他のカナダのエコシステムは、エコシステムの問題と、結果として得られる指針を検証するための良い事例である。

図2と3において、評価額の成長率でみたカナダのスタートアップのパフォーマンスが、トップクラスのエコシステムと比較して、はるかに~63%も低いことを明らかにしている。この評価額成長率の低さが、大きなイグジットやユニコーンの少なさ、または存在しないことの一因となっている。この問題は、パフォーマンスの低いエコシステムにおしなべて共通のものである。例えばオースチンは2015年のグローバルランキングで14位であるが、スタートアップ評価額成長率ではシリコンバレーより62%低くなっている。

medium_8_web_rev
図2 ファンディング評価額の推移(シリーズA以降)
medium_9_web_rev
図3 イグジット評価額の推移(シリーズA以降)

ウォータールーやその他のカナダのエコシステムで多額のイグジットやユニコーンが現れないことの原因となっている2つの重要な要素があり、それはパフォーマンスの上がらないエコシステムに共通の問題でもある。

グローバルマーケットへのリーチ

univesity-of-waterloo
ウォータールー大学(Image credit: University of Waterloo)

第一に、売り上げの成長率がより低いために、スタートアップ評価額の成長率は低くなる。その根本原因はグローバルマーケットへのリーチの差であり、(Steve Blank 氏が定義するところの)顧客開拓と増加に付随してくるものである。

スタートアップの最終目標は、急速に成長して市場で支配的ポジションを追及することであるというのは、多くが認めるところであり、投資家は特にそれを強調する。市場を独占していない場合、または製品やサービスが強いネットワーク外部性を有し、したがって「独り勝ち」となりやすい性質である場合はなおさらである。この目標を達成するためには、スタートアップは世界中から注目されるきっかけを作らねばならず、実際には、アメリカ市場を最重要視することでそれを達成できることが最も多い。Reid Hoffman氏が(Wiredに)記しているように、シリコンバレーでの成功の秘訣は、スタートアップでなく、スケールアップなのである。

アメリカ市場は100マイル以下の距離にあるのだから、ウォータールーのスタートアップはそのチャンスを最大限活用し、アメリカ市場に集中し、地理的に離れているその他のエコシステムより早く参入することを予想する人もいるだろう。しかし、ウォータールーのスタートアップの顧客は、平均すると海外顧客が半分しかいない。それに対して、アメリカ以外のエコシステムでありながらより高いパフォーマンスを発揮しているテルアビブは、74%である。テルアビブのスタートアップは、当初からグローバルを目指すのである。

図4はこの問題をより明確にあらわしており、グローバル展開に注力するスタートアップ(半数以上の顧客が海外顧客であることが定義である)の割合は、テルアビブがウォータールーを14%上回っており、カナダのトップ3エコシステム(モントリオール、トロント、バンクーバー)よりも10%高い数値である。

medium_3_2
図4 グローバル展開に注力するスタートアップ


グローバル展開への注力度合いは、スタートアップの売上の成長に大きな影響を及ぼす。図5は、グローバルに注力する全世界のB2Bスタートアップが、他より2.1倍の速さで成長していることを示している。

medium_Screen_Shot_2015-10-28_at_12.10.00_AM
図5 B2Bスタートアップ(アメリカ、カナダを除く)の、海外顧客割合で分類したときの売上成長

図6は、海外顧客比率と売上の関係が、カナダのスタートアップでも同様であることを示している。具体的に言えば、北米で最も経済的に反映している都市のひとつであるトロントを優先していると、スタートアップのパフォーマンスは低くなるということだ。

medium_Screen_Shot_2015-10-28_at_12.10.17_AM
図6 カナダのB2Bスタートアップの、海外顧客割合で分類したときの売上成長

しかし、興味深いことに、グローバル展開に注力する(アメリカとカナダを除く)世界中のスタートアップが、非グローバル展開のそれらより110%速く成長しているのに対して、カナダではその差が60%でしかない。言い換えれば、カナダのスタートアップは、地元よりグローバル顧客に注力することを選んだ見返りで得られる収穫が、他国のスタートアップより少ないわけだ。

なぜこのようなことが起きるのか?

世界中のスタートアップおよび専門家へのインタビューからわかったことは、カナダのスタートアップがアメリカ市場に攻め入るときに、他と異なる、効率の低い方法をとっているということである。アメリカと同じ言語で、アメリカの大都市に近いこともあり、また、かかるコストの低さも影響して、カナダのスタートアップはたいてい、カナダからアメリカ市場に参入しようとする。彼らはセールス、マーケティング、ビジネスの基盤をカナダの本社におき、アメリカ人やアメリカ在住のカナダ人を雇うことはあっても、チームはカナダ人のエグゼクティブによりマネージされている。

カナダのスタートアップは、テルアビブや他のパフォーマンスが高いエコシステムから、セールス、マーケティングチームを直接アメリカに設け、経験豊富なアメリカ人エグゼクティブとアメリカ人従業員を中心に据え、ビジネスカルチャーやプロセス知識、顧客やパートナーとの価値ある関係性を持ち込んでもらうやり方を学ぶべきだろう。アメリカでのビジネスのコストは高くなるが、得られる純利益は結果として、カナダのスタートアップが成しえなかった、より大きく迅速なイグジットを可能にし、エコシステムの成長を加速することができる。

(続編はこちら

【via Compass】 @startupcompass

【原文】

----------[AD]----------