イスラエルで成長するIoTスタートアップマップ

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CC BY-SA 2.0: via Flickr by Ted Eytan

本稿は、Eitan Bek 氏と Roy Leiser 氏によるゲスト寄稿である。Eitan Bek 氏は、今年組成されたVCファンド、TLV Partners の共同設立者であり、過去にはPitangoのジェネラルパートナーとして10年間勤務した。Roy Leiser 氏は TLV Partners の投資顧問である。


2014年公開の映画「Transcendence(邦題:トランセンデンス)」では、ジョニー・デップは無限大の力をもった、超強力なバーチャル知能を演じた。あるシーンで、科学者たちが顕微鏡で雨水のサンプルを検査したところ、知能を持つナノロボットの大群がひしめいているのを発見するシーンがある。これらのナノロボットはデップが演じる登場人物に接続・コントロールされており、この世の全てを改変させる力を持っている。

現状では雨水はクラウドとは接続されていないのだろうが、それ以外のすべてのものは既に接続されているか、数年以内にも接続されるかのように思える。Gartner McKinsey 氏とその他研究グループは皆「モノのインターネット(IoT)」が非常に大きな市場になると予測している。

そして今日、私たちは新たな企業が革新的なセンサーから専用プラットフォーム、デバイスに至るまでありとあらゆるモノをIoT技術によって開発しているのを目にしている。このようなトレンドに乗っているのはイスラエルの企業だ。IoT 関連のイスラエル系スタートアップがいくつも設立されており、そして驚くほど多額の資金獲得に成功している。私たちの投資会社 TLV Partners ではローカルランドスケープをマッピングし、IoT という次世代のブーム内で生まれているビジネスチャンスを包括的に理解できるようにした。マップはまだ作成中ではあるが、フィードバックやコメントは品質向上のためにも大歓迎である。

イスラエルにはマップに掲載されている以上のIoT関連のスタートアップがあることを念頭に置いてほしい(300件以上のスタートアップをリストしているソースもある)。このマップで注目したのは特に興味深く、進んでいる企業であり、見やすいよう形に整理してみた。

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企業

この調査を行うにあたって私たちが直面した大きな問題に、どの企業がエコシステム内にあるかという点があった。モノのインターネットの定義は非常に広いため、まず「モノ」とは何かを決めるところから始めなければならなかった。そこで、私たちは「IoT はコンピュータやスマートフォン以外で、接続されている全てのモノを含む」という一般ルールを適用することにした。そしてその企業らがゴールドマンサックスの言う「S-E-N-S-Eフレームワーク」の使用に適しているかを確認した。ゴールドマンサックスによると、IoT を通常のインターネットから差別化する要素はセンサー機能、効率性、ネットワーク化、特化性そして普遍性の5つにある。この戦略は、私たちが良いと考えるリストを作成するのに役立った。

カテゴリー

私たちはマップをできるだけ直感的で読みやすいものに仕上げるべく努力した。そうしてできた結果が、全企業が並べられた2Dチャートである。マップ内のX軸は「モノ(センサー、アクチュエーター、スマートデバイスなど)」を使用用途に合わせ5つのカテゴリーに分類している。Y軸はそれぞれの企業が、接続されるモノそのものあるいはIoTプラットフォーム、データ分析、そしてセキュリティ・事業目的といった分野のどこに一番注力しているかを示している。

考察

セキュリティ・プライバシー問題はここ数ヶ月にわたってメディアから大いに関心を寄せられてきた。誰かがあなたの冷蔵庫からあなたのホームネットワークにハッキングして入り込み、接続されたドアを開錠して同じく接続された状態にある目覚まし時計を停止する、というケースを想像してみてほしい。今年これまでには2人のハッカーがワイヤレスで走行中のジープカーをコントロールし、ブレーキペダルを通じてドライバーコントロールを無効にしてみせるという事件があった。

IoT のセキュリティが大きな痛点であることは間違いなく、さらに多くの企業がIoTに参入してきていることもわかっている。見ての通り、IoT セキュリティ会社数社がマップにもすでに登場している。イスラエルにおけるサイバーセキュリティ現場にて実証されたスキルと経験を考慮すると、イスラエルのスタートアップがこの重要度の高い市場参加において主要な役割を持つと言っても間違いではない。

原因分析や保守予測(PDM)といったデータ関連の技術は、この先の数十年間にわたりIoT工業部門において劇的な変化をもたらすであろうと期待されている。昨年にはアメリカの製造業大手がその製造環境においてデータ関連のソリューションを活用することにより10億米ドルの利益を生み出すことが可能であると発表した。これは単なる始まりに過ぎない。イスラエルにはBIやビッグデータアナリティクスといったさまざまなデータ関連業界における高い能力を有した企業が多く存在しており、Industry 4.0や Deep Analytics ソリューションを解決する、新しくて面白味にあふれたスタートアップの誕生を待っているところだ。

IoT においてもう一つ興味深い垂直軸に、イスラエルは農業に強いという点がある。イスラエルは1950年代からアグリテック(農業技術)の主要輸出国としての地位を占めてきた。さまざまな有名研究機関、先進バイオテクノロジー産業、最新型の農園と穏やかな気候という条件がそろったイスラエルはアグリテック革命の生地としては最適である。点滴灌漑や生物的防除に至るまで、イスラエル現地のエコシステムは世界レベルでももっとも革新的な農業技術をいくつも生み出してきた。アグリテックにおける IoT は数十億、数百億ドルを生み出すビジネスチャンスであり、イスラエル系スタートアップもその恩恵を受けることができるだろう。

IoT はイスラエルのスタートアップにビッグチャンスを与えており、冴えたアイデアやソリューションを有し、スピードと鋭さを兼ね備えた起業家もみられる。この市場がどう成長していくか、時が経てばわかるだろう。一つ確かなのは、IoT市場は非常に巨大化し、最精鋭の起業家たちがIoT市場に大企業を作り上げるだろうということだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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