ポケモンGoは「ARゲーム」じゃない、IPの力で成功した位置情報ゲームだ

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著者のSunny Dhillon氏はSignia Venture Partnersのプリシパル・共同創業者で、ゲーム、デジタルメディア、コマースの分野でシードとシリーズAラウンドの投資をするベンチャーキャピタリストである。

Image Credit: Jeff Grubb/GamesBeat
Image Credit: Jeff Grubb/GamesBeat

(本記事はこちらの記事の抄訳です。)

現在、街を歩けばすぐにポケモンGoに夢中になっているスマホ中毒のゾンビに遭遇するだろう。ポケモンGoは、Googleから生まれたNiantic Labsと株式会社ポケモンからリリースされたヒット中のモバイルゲームだ。私もそんなゾンビの一人である。

小さい頃からのゲーム好きとして、全ポケモンをゲットするという10代の頃の懐かしさを感じるこのゲームが大好きだ。だが、ARとVR分野の投資家として、私はARがどこに向かっているか長期的な視野をもっており、現在のフォーマットのポケモンGoはそこには含まれない。

拡張現実というのはコンピュータビジョンとユーザーの周囲の現実世界をダイナミックにマッピングすることが必要とされる。それはまさに、Magic LeapやMicrosoft HoloLens、Google Tangoが取り組んでいるもので、ポケモンGoとは異なる。

現在のスマートフォンは、コンピュータビジョンやディープセンシングを通してユーザーの周囲の世界をダイナミックに理解することはできない。ポケモンGoは、Googleマップの固定された緯度と経度に結びついている。拡張現実が関わるのであれば、独自のリアルタイム深度マッピングや物体認識を使うため、こうした記事で紹介されているように野球場の中心に巨大なトサキントを見つけたり、ペットの猫の上にコラッタを見つけることはないだろう。

ポケモンGoをARと呼ぶのは、まるで360度ビデオをVRと呼ぶようなものだ。どちらも非常にローエンドで、本来の技術が今後5年間でできるようになることを簡単に示しているに過ぎない。

面白いことに、Magic LeapやMicrosoft HoloLensはポケモンGoのテレビコマーシャルで描かれたようなことによりずっと近いゲーム体験を提供するようになる。このゲームの予告映像は今は実際のゲームの映像を使用しておらず、今のポケモンGoのゲーム体験の質を適切に描いていない。

だがMagic Leapはポケモンを、コンピュータビジョンが認識した環境に3Dのモンスターを配置することで、ずっと「リアリスティックな」形でポケモンをユーザーに見せることができるだろう。どんなものが見れるかの一例として、このMagic Leapの動画を見てみてほしい。

ポケモンGoは位置情報ゲームであり、ARゲームじゃない

なので、私はいまこそ用語の使い方について明確にしておくべきだと思う。つまり、ポケモンGoは位置情報ゲームであってARゲームではないということだ。

ポケモンは普段は腰の重いゲーマーたちを実際に外に行かせて、周りの世界の探索をさせたという点ではすばらしい結果を残した。これは、ポケモンのIPの強さの証明でもある。これまでポケモンのゲームで過去にこれほどまでに成功した例もなかったと思う。

今回の例では、IPによってゲーマーの行動が根本的に変化し、ゲームをプレイするように行動させることができた。10年前に任天堂がWiiによってもたらしたゲーマーの変化と似ている。

ポケモンGoは、現在のゲーム業界におけるARとVRの注目度の高さにつけこんで儲けた。ポケモンGoにARというラベルを貼るのは、一般消費者のARへの最初の紹介の敷居を低くしすぎるという意味で害が大きいと思う。ARが本当に意義のある形で広がるにはあと5年はかかるだろう。

真にイマーシブでインタラクティブなAR・VRはまだ開発途中であり、私自身は発展途上ででてきた中途半端なもので満足するよりも、良質なものを待ちたいと思う。

勘違いしないでほしいのは、ポケモンGoはめちゃくちゃ楽しいし、360度カメラも価格が下がり、広く利用可能になるにつれて人気が上昇していくだろう。ただ、ポケモンGoも360度カメラもAR・VRではないという点をはっきりとさせておきたいだけなのだ。

ポケモンGoは、展開がうまくいった位置情報ゲームのすばらしい例である。だが、拡張現実のゲームではない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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