落し物追跡タグを開発するMAMORIO、認知症患者の外出支援ツール「Me-MAMORIO」の開発でエーザイと提携

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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日本の製薬大手エーザイ(東証:4523)と、増木大己氏率いる東京拠点のスタートアップ MAMORIO は、認知症患者の外出を支援する追跡ツール「Me-MAMORIO」を共同で開発することで合意したと発表した。Me-MAMORIO の開発と実運用を目指したデモ実験は、政府、ヘルスケア関係者、介護士などの協力を得て実施される見込みだ。両社は、認知症に悩む人々を見守るコミュニティ環境の実現を目指すとしている。

Me-MAMORIO は、短距離無線通信技術 Bluetooth を使った小さなタグだ。認知症患者が Me-MAMORIO のタグを身につけていると、同じコミュニティにいる、Me-MAMORIO 対応アプリをスマートフォンにインストールした人々が位置情報を提供し、認知症患者の居場所の特定を支援する(GPS が軍事目的で主に使われているのと対照的だ)。このデータは自動的に介護士や家族など、予め指定された人々に伝えられる。

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Me-MAMORIO を身につけた認知症患者が近くにいても、付近のコミュニティの人々にはそのことは知らされない。しかし、Bluetooth がオンの状態になったスマートフォンを持っているだけでコミュニティ全体での支援が可能になり、認知症患者は安心して外出できることになる。Me-MAMORIO の強みは、持ち運びが容易であるのに加え、GPS デバイスに比べ、非常に小さく軽量であることだ。Me-MAMORIO の狙いは、認知症患者の尊厳を保ちつつ、彼らが以前そうしていたように比較的安全な状態で、自由に外出できるようにすることだ。

認知症患者が家から外出する理由は、強くそうしてみたいと思ったり、不安を感じたりなど数多くある。警視庁によれば、2015年に警察に報告された行方不明者のうち、12,208人が認知症患者だった。記録が取り始められた2012年以降、この数字は毎年増加の一途をたどっている。そのうち150人は2015年末の時点でも、依然として行方不明の状態だ。厚生労働省によれば、日本の認知症患者の人口は2012年現在462万人で、2025年までに700万人にまで増えるだろうと予測されている。

エーザイでは、アルツハイマー病やレビー小体型認知症の治療に向けた開発やマーケティングを通じて得られた経験を活用し、日本全国65カ所の医療団体や地方自治体と協定を交わしており、ヘルスケア関係者や介護士らの間の相互連携を実現している。このようにして蓄積された認知症に関連する知識や力が、Me-MAMORIO のデモ実験や開発にも応用されることになる。

「Forget about forgetting(日本語原文:なくすを、なくす)」のスローガンのもと、MAMORIO は、日本最大の落し物検索ポータルサイト「落し物ドットコム」など、多くのプロダクトやサービスを開発・運営してきた。さらに同社は、世界最小の IoT で、Bluetooth を使った貴重品につけられるタグ「MAMORIO」を提供している。「MAMORIO」を使えば、貴重品を紛失した際に、ユーザ群を活用したクラウドトラキング・プラットフォームから取得した情報をもとに、警報とスマートフォン上のマップで貴重品の現在地を知ることができる。MAMORIO は Me-MAMORIO の開発だけでなく、デモ実験においても、これらのプラットフォームから得られた資産を活用するとしている。

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