銀行はボット導入まで、あと2〜3年待つべきか?——Forrester Researchの報告書から

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CC BY 2.0: via Flicker by Jason Baker

「銀行は、あと数年は、顧客に対し口座にアクセスできるボットを提供すべきではないだろう」——市場調査会社 Forrester Research の新しいレポートで、そのような提言がなされた。

「ボットは、まだバンカーにはなれない(Bots Aren’t Ready To Be Bankers)」と題されたこの報告書では、銀行はバックエンドの準備に注力し、ボットを提供するまであと2〜3年程度は、ボットや人工知能が成熟するのを待つべきだと提言している。

8月31日に発表されたこのレポートには、Facebook、バンク・オブ・アメリカ、Kasisto、その他さまざまな金融機関の従業員のインタビューが掲載されている。

Forrester は Goldman Sachs の発言を引用し、ボットに対する最近の関心の高まりが、何十億人ものチャットプラットフォームのユーザや人工知能の進歩によってもたらされているものと定義した。

3月には、バンク・オブ・アメリカが銀行ボットのローンチ計画を発表した。Capital One では Alexa を使って支払いができ、中国人民銀行は中国で WeChat(微信)を使ったバンキングサービスを提供している。TrimPenny のような、人々の財務管理を助けてくれるボットも現れた。

この報告書の執筆者らは、Poncho や Kik 上の H&M ボットを引き合いに出し、現在のボットが提供するカスタマーエクスペリエンスが貧弱で一様ではないと指摘している。お金がからむところでは、人々はできのよくないボットを我慢して使うことはないため、ボットに関しては、銀行は他業界とはわけて考えるべきだ、と報告書は述べている。

もし、Taco Bell の TacoBot がお客の注文を間違えて、タコスを1個しか頼まれていないのに3個分の注文をしても、その結果は、さほど散々なものにはならないだろう。しかし、ボットとの対話により、誤って同じ人物に3回送金したり、間違った支払をしたりするようなことが起これば、その結果の代償は高くつものになる。

この報告書では、イノベーションやよりよいボットを作ることについて言えば、銀行はまだ門外漢であり、進歩が進むのを待つべきだと結論づけている。

それは悪いことではない。テック企業には、人工知能やボットを次のレベルにまで押し上げるだけの人と設備が揃っている。銀行はそのその進歩の恩恵に預かれるのだから。そのような状況を考えれば、中国以外の銀行の多くは、短期的には第三者のプラッフォーム上のボットへの投資からは、特に得られるものはないだろう。

この報告書では、銀行がボットを開発したり展開したりするのに時間を投資するのではなく、API を探したり、プラットフォームの改善や入替を検討すべき、と提言している。

6月28日、Kasisto は、個人バンキング向けの MyKAI や KAI Banking に加え、KAI 人工知能をデビューさせた。

KAI バンキングボットは現在、カナダロイヤル銀行や東南アジアの DBS 銀行で使われている。KAI のスポークスマンは VentureBeat に対し、自行顧客へのボット提供にあたり、アメリカの複数の銀行と交渉中であることを明らかにした。

Kasisto の共同創業者 Dror Oren 氏は、ボット導入への準備にあたり、一部の銀行は対応すべき事柄があるのは事実としながらも、それは手っ取り早く前向きなもので、拡大に向けて待つ必要は無いと述べている。まずは立ち止まり、チャットプラットフォームで、顧客にサービス提供を始めているスタートアップや銀行が気にしているビジネスリスクと向き合うべきだ。

ただ座って何もしないで2〜3年待つ? デジタルで先行する銀行は恩恵にあずかろうとしている。我々はそんな銀行を支援するつもりだ。

Poncho のようなボットと Kasisto のような人工知能ボットの間には大きな違いがあることについて、Forrester の報告書にはその認識が欠落していると、Oren 氏は述べた。Kaisto は、Siri を開発した SRI International からスピンオフした企業だ。

我々が最初から言ってきたように、すべてのボットは同じというわけではない。いい言葉は見つからないが、ボットには、ダメなボットとスマートなボットがある。本当の人工知能を用いてコンテキストが理解できるボットは、我々のボットのように会話ができ、より明確な体験を提供できる。他のボットよりも遥かによい性能でだ。

エンタープライズ向けボットメーカーの Kore は今日(9月8日)、リテールバンク向けのスマートボットをデビューさせた。Kore は、顧客向けのボットをローンチするにあたり、銀行側には準備が必要だとする Forrester の報告書の内容には賛同している。Kore は今週投稿した記事の中で、複数チャネルのボット戦略を実行するまでに数年待つというのは、若い顧客層にリーチしたい銀行にとっては、あり得ないことだと述べている。

ミレニアル世代、または、ジェネレーション Z の人々は、さらに4年待つということはしないだろう。デジタル時代に育った20代の人々にとって、それは永遠先のようなことを意味する。リテールバンキングに長年使うことで親しみを持つ顧客でないかぎり、彼らは次のいい銀行を見つけるだけだ。ボットはすべての銀行や信用組合に顧客を留まらせる作用を与え、同時にジェネレーション X やジェネレーション Y の人々を容易に引きつけてくれる。

バンク・オブ・アメリカは Forrester の報告書の中で自分たちの考えをシェアしており、Facebook Messenger ボットがいつ利用可能になるかを尋ねられているが(最初の発表は4月になされた)、同行のボット展開に詳しい職員はコメントを避けた。

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【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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