成長し続けるディープラーニングを制するのは誰か

Amit Karp氏はBessemer Venture Partnersの副社長である。彼は同社イスラエル事務所で勤務しており、イスラエルとヨーロッパにおける投資に焦点をあてている。彼をTwitterでフォローしよう。@amitkarp

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via Flickr by “Jiuguang Wang“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

人工知能(AI)*は私たちの予想をはるかに超えて急速に発達している。先月、GoogleのDeepMind AIが伝説的囲碁棋士のLee Sedol氏に勝利したことは業界にとって決定的な瞬間だった。この勝利を手にしたのは、ディープラーニングと呼ばれる比較的新しい人工知能技術で、人工知能に変革をもたらしているものだ。

ディープラーニングができるまでは、最高級の人工知能システムは常に特定の問題への対処のために調整され、正常に動かすためには多くの制御を必要としていた。しかし、ディープラーニングがもたらす変化により、多数の研究者が昔ながらの人工知能アプローチを放棄せねばならなくなった。ディープラーニングは巨大な多層状のバーチャル神経細胞をシミュレーションし、コンピュータが抽象的なパターン(人間の脳の働きに似通ったもの)を認識し学習する。これはあらゆる一般的な目的のパターン認識問題の解決にも利用することができるので、大量データを使った活動には有益だ。

ディープラーニングには大いに投資の機会がある。そのテクノロジー自体だけでなく、激増するオンラインサービスによる大量データ、ストレージの向上、GPUと計算能力の進化、豊富なクラウドコンピューティング、安価なセンサーの開発、モノのインターネット(IoT)によって生み出された新たなデータといった、その他のテクノロジーも底上げできるからだ。結果として、ディープラーニングには全ての業界の問題を解決できる可能性がある。

大手ソフトウェア企業は皆ディープラーニング性能を構築し、自社製品に組み込むために巨額の投資をしている。これらの企業は社内利用のためだけではなく、ソフトウェアフレームワークとライブラリを開放して業界全体の進化を目指しているのだ。Googleが先日発表したところによると、同社最新の機械学習システムTensorFlowをオープンソース化するという。Facebookは人工知能ソフトウェアを動かす強力な新サーバーを無料開放している。IBMは自社の機械学習コードSystemMLをオープンソース化し、Elon Musk氏は協力者とともに非営利人工知能研究グループOpenAIを設立するなど、枚挙にいとまがない。スタートアップはすでにこれら大手ソフトウェア企業による大掛かりな社内研究の恩恵を受けている。

そうなればもちろん、スタートアップがもたらす新たな成果によって人工知能は数年前には解決できなかった複雑な問題も解決できるようになる。おそらくここで最も興味深いことは、これらのスタートアップはほとんど全ての業界をターゲットとしていることだ。最初の層は一般的な目的のために大量データを取り込み自動的に興味深いパターンを発見する人工知能プラットフォームで、シリコンバレーを拠点とするAyasdi、ドイツのBlue YonderやイスラエルのSparkBeyondなどが含まれる。

次に、人工知能をベースとした商品を販売する企業だ。人工知能をベースとしたRadiusDynamic Yieldといったパーソナライゼーションとマーケティングツール、販売と維持率予測ツールの6senseGainsight、人工知能をベースとしたカスタマーサポート会社Wise.ioなどがここに属する。しかし、人工知能スタートアップは企業にとどまらない。地上輸送(MobileyeCruise)、農業(ProsperaBlue River)、産業(Imubit)やヘルスケア(Zebra MedicalDeep GenomicsFlatiron Health)といった古くからある多くの業界を震撼させている。

ある意味、ディープラーニングは初期ビッグデータと似た道をたどっていると言えるだろう。当時、「ビッグデータ」企業であることは良い意味に捉えらえていた。しかし、時間とともに、ほとんど全ての企業が大量データを保存し、分析しているビッグデータ会社だということが明らかになったのだ。データの中から価値ある洞察を抽出できる能力を持ち、それに基づいて行動を起こすのが優良企業であり、他社との差別化である。

同様に、ディープラーニングが得意だと名乗りを上げる新しいスタートアップも多数存在する。しかしながら、時が経つにつれどの企業も何らかの形でディープラーニングを利用することになるのではなかろうか。そして、優良企業とそうでない企業の違いは、ドメイン知識、データセット品質や、解決すべき問題を正確に見分けられる能力といったことだ。

私の投資会社では、このような新しい人工知能スタートアップを評価する際、まずどのチームが最高の知識を有するか、独自技術において外部APIに依存していないか(イスラエルはこういった才能の宝庫のひとつだ)を理解しようと努める。現在、強力な人工知能チームがかなり不足しているので大企業が手早くスタートアップを買収し、独自の人工知能機能を向上させている(GMが最近Cruiseを買収したのがその一例)。

長期的に考えると、投資家として最も興味をそそられるのはディープラーニングを使ってデータネットワーク効果を生み出すことのできる会社だ。こんな風に。

vicious-cycle

このアプローチでは、企業は他とは違う独自のデータセットを作り、より効果的なディープラーニングアルゴリズム訓練で洞察力を向上することができる。これらの洞察によりデータの共有に協力的な顧客が増え、データセットの品質が向上しサイズが拡大するという好循環をもたらすはずだ。新しい競合相手は鶏が先か卵が先かという古典的な問題に対峙する。顧客データがなければ、ディープラーニングアルゴリズムに適合できないのに、より良いアルゴリズムがなければ顧客データが得られない。

先ほど述べたように、最高水準の人工知能知識を持ち、なおかつそれを有効なデータネットワークに落とし込めるスタートアップこそ、やがて究極の価値を持つのだろう。人工知能スタートアップの競争が過熱するとともに、この好循環は自然と独占され、やがて数年後には不気味なほど巨大で強力な人工知能企業が誕生するだろう。

*人工知能という言葉は一般的に機械学習(ML)のことを指す。この記事では、混乱を避けるために人工知能という言葉で表現したが、これらの機能の多くは人工知能ではなく機械学習と定義されるべきであることは認識している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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