米海軍が4週間で潜水艦コンセプトモデルの3Dプリントに成功、実験が示す移動効率化の意味とは

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2017.7.30

<ピックアップ> The US Navy 3D printed a concept submersible in four weeks

先日、とあるシンギュラリティ方面の起業家の方と会話した際に、イノベーションに必要な方法論としての「デジタル化」と「移動の短縮」についていろいろ知見を教わることがあったんですね。

デジタル化については音楽が一番わかりやすいと思います。アナログレコードがMP3化することで音質は確かに悪くなりましたが、iTunesをはじめとするデータベース化が進み、iPodのように数千曲を持ち歩けるという「新たな体験性」を実現し、最終的にYouTubeに代表されるようなクリエイティブ・コミュニティを創造したわけです。(SoundCloudの例をみても権利処理などでまだまだ道のりありそうですが)

デジタル化は進んでると言えども、周囲を見渡せばまだまだデータになってないものは多く、労働問題や食糧危機、健康や介護、教育など、フィジカルな現場の(例えば職人さんの手業のデータ化のような視点)デジタル化が進めばまた、AppleやGoogle、Facebook、Amazonが掴んでいるデータとは違った世界・ビジネスが可能になるという具合です。

そしてもう一つの「移動の短縮」も大変興味深い方法論です。

ただ音楽のデジタル化と異なり、まあ移動時間短縮できたら早く帰れてラッキー、ぐらいにしか思えないのも事実で、移動の効率化ってどういうイノベーションなのかイマイチぴんとこないですよね。

最近ではスーパーアントレプレナー、イーロン・マスク氏が取り組んでいるハイパーループ「地下トンネル」構想などが話題で、移動を効率化し、時間の確保や移動に関わるエネルギーロスを減らす、といった効果が期待できると言われています。

手法的には自動運転技術やWazeのようなナビゲーション、ドローンもそのひとつですが、もっと違ったアプローチに3Dプリントがあります。

The Vergeで紹介されていた3Dプリント潜水艦はコンセプト・モデルで実際に動く類のものではありません。記事によると「米国海軍はOak Ridge National Laboratoryと提携して、4週間以内に印刷可能なコンセプト・オブ・コンセプトの潜水艦を開発」したそうです。まだ実験段階ですね。

通常、同様の船体を生産するには80万ドル(100円換算で8000万円ぐらい)必要で、期間は5カ月かかるそうです。このコストを9割近くカットし、工期を数日に短縮する方法を実証するため、チームは昨年の8月、工業用の3Dプリンター(BAAM)を使って30フィートの船体を完成させたということです。実際に利用可能な船体の開発も進めているそう。

で、冒頭の起業家の方との話で、ちょっと前に話題になった3Dプリントによる家の建築や、今回取り上げる3Dプリントの潜水艦などは「そんなもの3Dプリントで作っちゃうんだ」という部分に気を取られがちですが、それ以上に考えなくてはならないのが「現地調達・オンデマンド生産」という考え方なんだそうです。

通常、大型の構造物を作るためにはその場所に資材を運ばなくてはなりません。家は当然建てる場所で、こういった軍事兵器は実戦の場所です。資材の運搬というのは相当のエネルギーで、例えば宇宙空間に基地を建てようとなった場合には地球から資材を持って行くよりその星で調達した方が効率がいいわけです。ほぼSFですが。

しかしそういった視点で3Dプリンターを眺めると、食品や医薬品、住居、武器、こういった軍事兵器、様々なものの「物流」に影響ある技術という側面がクローズアップされてきます。

ちょうど今、食糧品のロス(国内で年間600万トン以上を廃棄してる)の取材をやってることもあって、サプライチェーンの複雑さ、非効率を目の当たりにしていますが、こういったテクノロジーの積み重ねでもしかしたら劇的な解決方法が見つかるのかもしれません。


via The Verge

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