次なる一手は「薬局」ーーAmazonの会員戦略を紐解く(後編)

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<ピックアップ :  Amazon’s bookstores are generating almost no revenue — and there’s an obvious reason why >

次なる一手は「薬局」

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Image by  Mike Mozart

Amazonの会員戦略を紐解くコラム。前編からの続き。

10月に入ってAmazonが薬局・処方箋デリバリー事業を展開するためのラインセンスを最低でも12州で獲得したと 報じられた

同社はコメントを控えているので、ここからは私の推測に過ぎないが、今後プライム会員が薬の即日配送サービスを受けられる可能性は十分に考えられる。

ドラッグデリバリー分野では大型調達するスタートアップが目立つ。 Nimble (累計調達額 : 4,000万ドル)、 Alto (累計調達額 : 2,300万ドル)、 Capsule (累計調達額 : 2,000万ドル)と、処方箋の当日/翌日配達サービスを提供するスタートアップは2017年に2,000万ドル以上の調達を達成している。

北米では医者が処方箋を出す際に、患者が指定した薬局へ処方箋データを送付しピックアップする。つまり一度指定したらその薬局でしか処方箋を受け取れないし、一度店舗を訪れてから平気で30-60分は待たされることになる。

前述のスタートアップは自社で薬局店舗を所有しているので、医者からオーダーが来た瞬間に処方箋の準備を開始し、ピックアップ準備が完了すればモバイルで通知を飛ばす。その後、顧客は店舗ピックアップも選択できるし、有料であるが家までの当日配達も展開するシームレスなサービス受けられる。

大手薬局チェーンCVSも10月に大きく動いた。全米第3位の保険会社「Aetna」を660億ドルで買収したのだ。同社買収によって、Aetnaの保険会員でありCVS系列の薬局を使う顧客であれば、通常よりさらに安価に処方箋を手にすることができる 価格優位性を手にすると噂されている

さて、Amazonが薬局・処方箋デリバリービジネスへ進出するとなった場合、上記に挙げた大手からスタートアップと競合することになるが、冒頭で説明したWhole Foodsの買収が大きくビジネスをレバレッジさせてくれるかもしれない。

CVSの 全米店舗数9750 には遠く及ばないが、Whole Foodsは 456に及ぶ実店舗 を持ち、これらが薬局の機能を果たせる可能性が眠っている。また、Whole Foodsが大手買い物代行・配達サービス「Instacart」の最大の出資元であることから、処方箋の短距離輸送網までをも一挙に手にする可能性を秘めているのだ。

Whole Foodsが持つ実店舗と提携・出資先であるInstacartの輸送網が完備されれば、処方箋デリバリースタートアップは総崩れとなる。CVSのような大手薬局チェーンは保険会社買収を通じた薬の低価格販売と店舗数が競合優位性となるが、輸送網がないのでAmazonとの勝負でどちらが勝つかわからなくなる。

いずれにせよ、プライム会員に対してのベネフィットとして薬の配達が加わってくると睨んだ方がいいだろうし、Amazon Books同様にWhole Foodsという実店舗を通じた非会員との圧倒的なサービス差別化と会員の囲い込みが進む事は間違いないだろう。

Amazonによる実店舗を通じた会員獲得戦略は益々加速する。

via Business Insider

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