アマゾンがホールフーズを137億ドルで、IntelがMobileyeを153億ドルで買収するなど、今年も多くの買収があった。
米大手テック企業は、テクノロジーと人材を求めて欧州までやってきた。以下に、その17の買収ディールを挙げて振り返ってみたい。
アップル
1. Beddit (フィンランド)
5月、アップルはフィンランドの睡眠トラッキングハードウェア・ソフトウェアスタートアップのBedditを買収。買収以前から、アップルはBedditの睡眠モニターを自社ストア上で販売していた。
アップルがBedditのテクノロジーを用いて何をするのかはまだ定かではないが、その睡眠トラッキングテクノロジーをApple Watchに活用するか、もしくは完全に新しいハードウェアを開発する可能性がある。
2. SensoMotoric Instruments (ドイツ)
6月、アップルはドイツのアイトラッキングソフトウェア企業SensoMotoric Instrumentsを買収した。ディールの詳細は公表されていないが、その回答形式からして買収のディールが交わされたのはほぼ確実だ。
SensoMotoric Instrumentsは、拡張現実から自動車内テクノロジーに関する製品に至るまで、様々なアイトラッキング製品を開発してきたことで知られている。
3. Regaind (フランス)
9月、TechCrunchはアップルがRegainedをひっそりと買収したことを報道した。画像から「重要なインサイト」を抽出するコンピュータビジョンのAPIを開発するフランスのスタートアップで、開発者が写真を分析、自動でカテゴライズする際の支援をする。
4. Shazam (UK)
音楽認識テクノロジー分野では地位を確立しているロンドンのShazamは、今月はじめにアップルに買収された。Apple Music関連のサービスに関係していること以外には、アップルの買収後の意図はほとんど明かされていない。
また、アップルはShazamを4億ドルで買収したと報道されており、その額は数年前に予測されていたIPOの額を大きく下回るもので、Shazamのこれまでの苦戦がうかがえる。
フェイスブック
5. Fayteq (ドイツ)
8月、フェイスブックはドイツのコンピュータビジョンスタートアップのFayteqを買収した。Fayteqは動画内のオブジェクトをトラッキングする技術を開発する。
アルファベット・グーグル
6. Limes Audio (スウェーデン)
1月、創業から10年のスウェーデンのスタートアップLimes Audioを買収することを発表した。ボイスコミュニケーションシステム上での音声の改良に特化しているスタートアップだ。
非常に分かりやすい取り引きだった。グーグルはHangoutsと法人向けのChromebox for Meetingsの改良を望んでいたため、そのためにLimes Audioを買収したのだ。
7. AIMatter (ベラルーシ)
8月、グーグルはベラルーシまで赴き、AIMatterを買収した。ニューラルネットワークを使ってリアルタイムで画像と動画を改造するアプリFabbyを開発しているスタートアップだ。
今年の1月には、グーグルのSundar Pichai CEOは、今後の同社の成長においてAR、VR、クラウドが鍵となると同時に「AIファースト」の企業になると言及している。
マイクロソフト
マイクロソフトによる今年の欧州スタートアップの買収は1件のみであるが、イスラエルではHexaditeとCloudynを買収している。
8. Simplygon (スウェーデン)
マイクロソフトは、ゲームスタジオが3Dコンテンツを改良する際に使用するソフトウェアSimplygonを開発するスウェーデンのスタートアップ Donya Labsを買収した。
この買収のニュースの少し前には、同社はユーザーが3Dのデジタルプロパティの開発と編集の際に使うPaint 3Dをローンチしている。
アマゾン
9. GameSparks (アイルランド)
7月、アマゾンはアイルランドのGameSparksを買収。ゲーム開発者がゲームの背景をつくる際に利用できるクラウドベースのプラットフォームを開発しているスタートアップだ。
GameSparksはすでに、アマゾンのデータセンターを利用するゲーム開発者をターゲットにしており、今回の買収はアマゾンが今後1000億ドルマーケットといわれるデジタルゲーム市場を強化したい意図を表している。
10. Goo Technologies (スウェーデン)
純粋な買収とはいえないが、一応付け加えておきたい。アマゾンは破産したスウェーデンのスタートアップ Goo Technologiesの資産を買い、3D、AR、VRの経験をつくる際に使用するブラウザベースのツールSumerianのローンチの際に活用したとみられる。
Snap
11. Zenly (フランス)
Snapchatの親会社Snapはフランスに赴き、同社史上最大額2億1300万ドルでソーシャルマッピングアプリZenlyを買収した。この件は、多くの人が見るとZenlyのクローンと気づく Snap MapをSnapがローンチした際に明らかになった。
Snap Mapというのは、簡単にいうと友達が世界のどこにいるかが分かるアプリだ。地図をズームイン・アウトすると、友達がどこにいて何をしているのかが分かり、ユーザーは自分の位置を友達とシェアすることができる。
12. Strong.codes (スイス)
7月、SnapはStrong.codesというスイスのスタートアップを買収した。リバースエンジニアリングによるコードを防ぎ、ライバルがアプリやウェブサイトのコピーをしにくくするツールを開発する。
FacebookはSnapの機能を長らくコピーしてきたが、今回の買収がStrong.codesの人材を買収するための決断であるのかは明らかではない。
その他
13. Wercker (オランダ)
4月、データベース技術大手オラクルは、コードテストと実装を自動化する技術を開発するオランダのWerckerを買収した。
14. Vector Watch (U.K./ルーマニア)
フィットネスウェアラブルのFitbitは1月、UK・ルーマニアのスマートウォッチ企業Vector Watchを買収した。この買収の少し前には、クローズしたスマートウォッチ企業PebbleをFitbitは買収している。
15. Momondo (デンマーク/U.K.)
旅行検索大手のPricelineは、デンマークとUKの旅行検索プラットフォームMomondoを5億5000万ドルで買収した。この買収は基本的に、Pricelineが欧州でのプレゼンスを高める戦略の一つだ。
トレンド
今回はアメリカの大手テック企業による欧州のスタートアップ買収例を集めてみたが、このリストを見ると現時点でのホットなテックトレンド、そして需要の高いスキルが分かる。
コンピュータビジョンが大きなトレンドであることは明らかで、写真のカテゴリー分けから自律運転車まで、将来多くの適用事例が出てくるだろう。
数年後もこれらが重要な分野であり続けることは間違いない。2018年以降も、AI領域での人材と技術の買収がさらに起こることだろう。
(本記事は抄訳になります。)
【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】
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