ICOを成功に導くには?——シンガポールの仮想通貨デビットカード・スタートアップTenXの共同設立者Julian Hosp博士に聞く(後編)

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Image Credit: TenX

仮想通貨のスタートアップ TenX がイニシャル・コイン・オファリング(ICO)、つまり企業がバーチャルトークンを拠出者に発行し資金を集めるメカニズムを始めたとき、たった7分間で4,300万米ドルもの額を調達した。

e27とのインタビューで Hosp 博士は ICO についての詳細な分析と、何が TenX の ICO を大成功に導いたのかを語ってくれた。

以下は、前編に続く後編である。

Facebook が仮想通貨の広告を禁止したことについてどうお感じになりますか。

それが、弊社は Facebook を使ったことがないのです。前述のように、良い動画を作り、無料配布をし、パートナーシップを結ぶといったことをしてください。

たとえブロックチェーンであっても信用と透明度がすべてです。弊社の透明性と誠実なコミュニケーションは、トークン販売の成功において多大なインパクトがありました。「信用が存在しない」とされるブロックチェーン環境においても、人々は本当は誰かを信用したいのだということに弊社は気付きました。

しかし最終的には、たとえ優れた製品を持っていても、チームに近づくことが容易でなければ役には立たないでしょう。だからこそ弊社はトークン販売の前にマネジメントのトップの人材をカスタマーサービスに配し、人々が弊社のことを確実に知ることができるようにしたのです。弊社は定期的にニュースレター、YouTube の動画、Facebook の投稿、Slack チャンネルのコミュニティの管理、WeChat などを行っていました。

Facebook で「皆ちょっと聞いてくれよ、これは私の ICO なんだけど、君もぜひ投資すべきだよ」と大声で言って回っても役には立ちません。誰も気に留めません。バナー広告も同様です。誰もバナー広告をクリックしたりしません。皆さんがバナー広告を最後にクリックしたのがいつかは分かりませんが、私はついうっかりでもなければ絶対にクリックしません。あれは最悪です!

どういった種類のトークンがあるのでしょうか。どのようにしてトークンを生成し販売するのでしょうか。

イーサリアムが ICO で実際にやったように、自分でブロックチェーンを作ることもできます。ですが非常に手間も労力もかかるため、そうする会社はめったにありません。なので多くの会社はイーサリアムのようなプラットフォームで ERC20と呼ばれるトークンを使います。

ERC20はスマートコントラクトであり、ただのコンピュータプログラムです。ですのでイーサリアム上で動作し、自分のバーチャルコインを他の人がどれだけ所持しているかを追跡することができるプログラムを持つということです。

標準化された ERC20コントラクトを作成します。私は30分以内に ERC20コントラクトを作ることもできます。あらかじめ書かれたコントラクトのテンプレートもあります。検索してみてください。役に立つコントラクトをあらかじめ書いて監査している開発者が大勢います。

コントラクトが手元に来たら、いくつかの事項を記入します。ERC20で決めなければならないことは普通は6つです。

  1. ティッカーシンボル。TenX を例にすると、「PAY」です。
  2. 名前。Tenx では TenX PAY です。
  3. トークンの供給量。TenX の場合、2億トークン程度でした。
  4. コントラクトのオーナーがどれくらいのトークンを手に入れるのか。ほとんどの場合、100%です。そうすればオーナーがトークンを流通させることができるからです。
  5. トークンは小数点以下何桁までか。例えば18桁まで設定することができ、つまりトークンを非常に細かく分割することもできるのです。
  6. 後からさらに多くのトークンを作ることができるようにしておく(これがソフトキャップです)かどうか。

これらの6項目を決めたら、それをコードであるスマートコントラクトに変えます。その後イーサリアム上で作動させ、コントラクトを実行します。コードを実行するには少量のイーサが必要になるため100米ドルほどの支払いをします。するとコントラクトが有効になります。

誰かがあなたに特定の仮想通貨を送ると、トークンが送り返されます。TenX で言えば、1イーサを送るごとに350PAY のトークンが返ってくるのです。

会社は ICO の資金をすぐに法定通貨に変えなくてはならないのでしょうか。

すぐに変える必要はありません。後のステージで変えることもできます。弊社は半分をすぐに変えて、残りの半分はイーサのままにしています。

リスクをとって全部をイーサのままにしている会社もあります。もしイーサが1,000米ドルに値上がりすればその会社は得をしますし、もしイーサが5ドルに値下がりすれば損をします。これは関連リスクであり、多くの人が理解していない部分でもあります。

弊社 TenX は常にリスク回避的なアプローチをとります。

どのようにして貴社の ICO に良い拠出者を引きつけているのでしょうか。

コミュニケーションです。価値は何か、会社が何のためにあるのか、何を成そうとしているのか、そういったことを明確に共有することです。

もっとも危険なことはすべての人を捉えようとすることです。すべての人に好かれようとするべきではありません。しかし対象とする人々に対しては非常に明確であるべきです。

分かりやすい例を挙げます。弊社 TenX が求める買い手はデイトレードしようとせず長期にわたって保有するような人々であると明確にしています。5年、6年、7年といった期間でものを見る人々です。弊社が求めているのはそういった人々です。一晩で儲けたいと考える近視眼的な人々ではありません。

そういうクリアなコミュニケーションをとれば、もちろん対象外の人々、一晩で大儲けしたいような多くの人々を怒らせることにはなると思います。しかし TenX が素晴らしい姿勢を持つしっかりした会社であることを理解していただける人々を引きつけることができます。

すべてはコミュニケーションなのです。

最後に、ICO を行おうと考えている起業家にアドバイスをいただけますか。

私のアドバイスは忍耐が美徳であることを理解してほしいということです。安易な金儲けに走らないこと。少しだけ我慢してみること。もう1ヶ月もしくは2ヶ月待ってみること。MVP(minimum viable product)を試してみること。金儲けのためだけに、いきなり ICO をやらないこと。

一つ話をさせてください。弊社はもともと昨年の3月に ICO をしたいと思っていましたが、Ethereum の共同設立者である Vitalik Buterin 氏に言われたことがあります。もし ICO を3ヶ月後に行うのであれば、弊社への投資に興味があるとのことでした。

当初、弊社はこう言っていました。「おいおい、もう投資家から1,000万米ドル集めてるんだから、すぐに ICO をやればいいじゃないか」と。

しかし弊社は待ちました。そして急激により多くのものを得ました。さらに多くの顧客、信用性を得て、そして製品を得ました。6月に ICO を行い8倍の額を得ることができたのです。待って良かったと思っています。

同様のことを強くお勧めします。

【via e27】 @E27co

【原文】