仮想通貨のスタートアップ TenX がイニシャル・コイン・オファリング(ICO)、つまり企業がバーチャルトークンを拠出者に発行し資金を集めるメカニズムを始めたとき、たった7分間で4,300万米ドルもの額を調達した。
同社はプレセール(先行販売)で3,700万米ドルを調達しており、合計で8,000万米ドルを ICO のみで集めたことになる。しかし、どのようにして彼らはこの驚くべき額を調達できたのか? どのようにしてこの熱狂を生み出せたのだろうか?
「価値の創出です」と TenX の共同設立者で社長である Julian Hosp 博士は述べた。同社の製品はユーザがオンラインおよびオフラインで仮想通貨を用いて売買できるようにする物理的なカードであるが、彼はこの製品についてのみ語っているわけではない。
企業はテクノロジーコミュニティだけではなく一般大衆に対しても手を伸ばし、仮想通貨エコシステムや現在進行中の発展について周知し、人々に知ってもらわねばならないという事実について Hosp 博士は語っている。関心を高める(仮想通貨の世界はまだ生まれたばかりなので、大切なことである)ということだ。
e27とのインタビューで Hosp 博士は ICO についての詳細な分析と、何が TenX の ICO を大成功に導いたのかを語ってくれた。
以下は抜粋および編集したものである。
まずは基本的なことから、ICO とは何ですか? IPO とはどう違うのでしょうか?
スタートアップが資金を調達するには様々な方法があると思います。投資会社、エンジェル投資家、補助金や借金、もしくは ICO というふうに。それぞれの資金調達方法にはそれぞれのメリットとデメリットがあります。
IPO と ICO の違いについてお話ししましょう。
IPO は最終段階での資金調達プロセスです。IPO を行うには会社が確立されていなければなりません。何らかのトラクションがどうしても必要なのです、普通は数百億、もしくは数千万や億単位で見積もられます。
現在のところ、ICO はアーリーステージにある会社が大きな額の資金を調達する方法の一つです。ですが困難も伴います。
非常に人目にさらされ吟味されることになるのです。数百人数千人のトークンの買い手が、何をしようとしているのか何に挑戦しようとしているのかを問いただし、あらゆる方法で急き立て、締め付けようとします。
当然これは価値が上がることを願ってトークンを買ったからです。
そのため多くのプレッシャーがありますし、(投資会社やエンジェル投資家のような)アドバイスやサポートをしてくれる中心的な存在もいません。
弊社 TenX は旧来のエンジェルラウンドと、同じく旧来のシードラウンドを前もって行っていました。
そうしておいて本当に良かったと思います。強力なアドバイザーと強力な人脈を会社の支えに得ることができ、特に ICO の間は大きな助けとなったからです。私は強くお勧めしますが必須というわけではありません。
ICO ではより簡単に資金を調達でき、手放す持ち分は少なくて済みます。ですが、エンジェルラウンドやシードラウンドなら得られたかもしれないノウハウや業界内部の人脈を欠くことになります。
ICO にはいくつのステージがあるのでしょうか?
5つといったところではないでしょうか。最初のステージは全体的な準備のステージです。私見ですが、ここに一番時間をかけるべきだと思います。たとえば、弊社の準備ステージはだいたい6ヶ月間でした。
法的な準備、技術面のスライドの準備、マーケティングの準備、財務の準備もするということです。ひたすら準備、準備、準備です。そしてもちろん製品や顧客へのスライドの準備も含まれます。
非常にきついステージです。なぜなら、一般的にこの段階では何も資金が得られず、ただ働いて働いて働いて、けれどまだ何も見えないという期間だからです。いくら働いても、そこから何か得られると希望を持つことしかできないからです。
次に第2ステージは先行販売ステージもしくはプレ ICO ステージです。うまくいけば大きな注目とトラクションを得ることができます。
ここでやろうとしていることは、熱心なフォロワーを早い段階で集めるということです。そうすれば代弁者として話題を広めてもらうことができます。先行販売ステージは実際の ICO の1ヶ月から2週間ほど前に実施することができます。
そして完全な ICO のステージです。
完全な ICO のステージはもっとも熱狂的で、そしてもっとも忙しいときです。
弊社は7分間でしたが、他の会社では数時間、数日間、あるいは数週間かもしれません。今までのすべてをこの期間にキャッシュに換えます。お金を得るのはここであり、結果が示されるのはここ、そうでしょう? ゴールテープを切るのはここなのです。
ICO をどう設定するかにもよりますが、24時間もしくは1週間の間実施するソフトキャップと、特定の額もしくは時間に達したら完了することを明言しておくハードキャップがあります。
ICO が終わったら次は中間段階です。
これは ICO とトークンの取引との間のステージで、流通市場や買い手などにアクセスできます。このフェーズは非常に短い場合もあり、会社によっては1日ということもあります。TenX は1ヶ月程度でした。
なぜ1ヶ月も時間を取ったかといいますと、その期間にもう一度落ち着いて仮想通貨取引に取り組み、その後のことがきちんとできているという確信を得られるようにするためでした。これは中間ステージで重要な点です。
そして次は ICO 後のステージです。これはその後も続いていくステージです。
会社としてのパフォーマンスが本当に見極められるステージです。言ったとおりのことを本当にできるのか。トークンの買い手による本当の投資ではなく、投資合意も投資契約もありません。なので信用がすべてです。
そこで重要なのが次の疑問です。トークンの価格と提供価値、どちらにどれくらい集中するつもりなのか。
これは非常に重要な分かれ道です。価値を提供したいのか、それともトークンの値段を上げたいだけなのか。
私は価格の高騰よりも価値の提供に専念することをお勧めします。価値の提供に専念していれば価格は自然と上がっていくものです。
それはとても困難なことでもあります。数千人もの人々がトークンを所有しプレッシャーをかけてきますから。ですので、落ち着きを保ってしっかりした製品を提供することに専念しなければならないのです。
準備段階では正確にはどのようなことをするのでしょうか。
ICO では3つのことをきちんとしておかねばなりません。
きちんとしなければいけない最初のことは、技術面です。最初のパートはスマートコントラクトですが、非常に標準化されいて、おそらく2日ほどかかります。これはとても平易です。
きちんとする必要がある2つ目のことは、トークンの全体的な構造であり、これは法的および財務的な作業のコンビネーションです。これも非常に標準化されていて、法律事務所に頼めば2週間か3週間、もしくは1ヶ月以内には終わるでしょう。
作業の大部分はマーケティングとコミュニティの管理です。
TenX にとってこの6ヶ月間はずっと注目度を上げ、盛り上がりを起こし、人々に ICO を知ってもらうための期間でした。
大事なのは価値の提供です。多くの会社はいつも「あなたが投資すべき ICO は弊社の ICO です」と言おうとしている点が間違いなのだと思います。
それは間違いです。外へ出て人々に知ってもらう必要があります。弊社は仮想通貨について知ってもらい、弊社が何をしているかを知ってもらい、他社とパートナーシップを結んできました。他社にフリートークンを提供している場で無料配布を行うこともできます。
ですから、動画を公開したり、ブログを書いたり、vlog を作ったりといったことが本当に大事です。トラクションを作り出し、いい意味で何かを起こすことが大事です。時間がかかります。
一夜で注目を集めることはできません。無理にそうしようとしても、それは長続きせず、とても高くつくことでしょう。たくさんのお金をつぎ込まなければなりませんから。
弊社は有機的な成長をしてきたため、マーケティングには1ドルも使っていません。
(後編に続く)
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