目指すは3年で起業50社、名古屋に新インキュベーション施設 『Midland Incubators House』がオープン【ゲスト寄稿】

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編集部注:本稿は本誌でも活躍してくれたインクワイア代表取締役、モリジュンヤ氏による寄稿。名古屋の地で新しいスタートアップムーブメントを起こそうというプロジェクトについてmisocaの奥村健太氏とIDENTITYの碇和生氏と共にその立ち上げ経緯を語っていただいた。

スタートアップがイグジットし、次の起業家を支援する。次第に支援する側も、される側も増え、コミュニティの成長に伴って起業を促進するエコシステムは成熟していく。

東京はこの数年で起業を促進するエコシステムが出来上がってきた。次は、東京以外の土地でもこのエコシステムが求められるようになってきている。

名古屋に新たなインキュベーション施設が生まれる

名古屋を拠点に活動するスタートアップコミュニティ「Midland Incubators(ミッドランド・インキュベーターズ)」が名古屋にインキュベーション施設 「Midland Incubators House」を開設した。

ミッドランド・インキュベーターズは、U29の名古屋の起業家エコシステムを形成させることを目的とし、Misocaの2名が立ち上げたスタートアップコミュニティだ。

Misocaは名古屋を拠点にクラウド請求書サービス「Misoca」を開発・運営し、2016年に弥生がバイアウトしたスタートアップ。

同スタートアップの経営陣がオーガナイズするコミュニティは、29歳以下の名古屋の起業家やスタートアップ界隈のプレーヤーを対象に、人材育成やイベント開催、人材マッチングの機会を提供している。

「Midland Incubators House」は、コミュニティの活動をより充実させるために新たに立ち上がるオフラインの空間だ。

同スペースの戦略パートナーとして、東海エリアを中心にスタートアップのグロース支援や事業開発支援を行うIDENTITYと連携し、「3年で50社起業。1,000人のベンチャー関係者」の創出を名古屋で目指す。

名古屋に「あの人がやるなら自分もやろう」という空気を作る

奥村「名古屋は製造業の街でありスタートアップよりもメーカーに就職することの方がはるかに身近な街です。「何かにチャレンジしたい」という学生・社会人も相対的に少ない印象があり、そうした人は東京など他の地域に行くしかありません」。

ミッドランド・インキュベーターズの奥村氏は、名古屋のスタートアップ事情をこう語る。エコシステムが成熟していないエリアでは、チャレンジしたい人同士がつながる機会がまだまだ足りていないという。

東京でスタートアップのコミュニティが産声を挙げ始めたのは、2011年頃。この時期の東京にはいくつものインキュベーション施設が立ち上がったことを覚えている人もいるだろう。スタートアップを考える人同士がつながって情報交換し、起業をポジティブに捉える空気感が渋谷や六本木を中心に作られていった。

奥村「僕らが場所を借りてコミュニティを立ち上げる理由は、チャレンジしたい人々同士が繋がり、身近に感じることで「あの人がやるなら自分もやろう」という空気感を作るため。今回のスペースも、隣にはスタメンという2.8億円の調達をしたスタートアップのオフィスもあり、そうした空気感を生むための集積地となることを意識しています」。

良くも悪くも、人は環境の影響を受けやすい。急成長しているスタートアップが間近にいる環境を作ることができれば、その影響は伝播する。

スタートアップの立ち上がり初期がどのような状態なのか、急成長するスタートアップのオフィスはどんな環境なのか。スタートアップ特有の、熱を帯びた空気に触れることで、「自分もやろう」と熱に当てられる人も増える。

どう地域のスタートアップの成長を支援するのか

では、ミッドランド・インキュベーターズはエコシステムを構築していくために、新たに立ち上げたスペースで、どんな価値を提供するのだろうか。

奥村「このスペースは、U29の起業家であれば無料で利用できます(※審査アリ)。定期的にイベントも開催していく予定なので、入居者は様々な機会に恵まれます。すでに、名古屋スタートアップニュースというメディアがU20のイベントを定期的に開催するなど、イベントが始まっています」。

若手起業家を優遇して空間の利用ハードルを下げ、イベントなどのコンテンツを充実させることで足を運ぶ機会も増やす。人が集まり、つながりが生まれていけば、一歩進んだ支援も可能になる。

奥村「元々、豊吉はモーニングミートアップを定期的に開催するなど、起業家向けのメンタリングを続けてきました。このスペースでも、メンタリングは実施したいと考えています。また、パートナーのIDENTITYと連携して、スタートアップのためのPR支援やミートアップやイベントを通じたスタートアップのためのナレッジ共有とコミュニティ形成を実施していきます」。

一方で東京以外での起業には難しさもある。例えば情報発信は最たるものだろう。

「東京以外の地域で起業する上でネックになるのが、広報だと思っています。特に地元だけでなく、他の地域から採用や資金、コネクションを獲得するには、いかに自社やサービスを地元以外に知ってもらうかが重要です。そうした対外的なPR活動を僕らが支援することで、チームがユーザーとプロダクトに集中できる環境を整えていきたいと思います」。

彼らが目指すのは、3年で50社の起業を増やし、1,000人のベンチャー関係者を名古屋に生み出すこと。起業家が増えれば、地域の熱量は上がる。ミッドランド・インキュベーターズによる、名古屋エリアを熱くするための挑戦が始まった。

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