Tokyo XR Startupsが第4期デモデイを開催——次期からはブロックチェーンも対象、Activ8とバーチャルタレント育成プログラムも始動

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ゲームデベロッパの gumi (東証:3903)らが運営する、バーチャルリアリティ(VR)などに特化したスタートアップ・インキュベータ「Tokyo XR Startups」は2日、東京都内でインキュベーションプログラム第4期のデモデイを開催した。会場では第4期に参加した5チームのほか、Tokyo XR Startups と姉妹関係にある Nordic XR Startups(デンマーク Nordic Film との共同運営)から1チームが参加、さらに、東京の Future Tech Hub の支援先1チームが参加する盛大なイベントとなった。

Tokyo XR Startups、Seoul XR Startups、Nordic XR Startups では、これまでに累計43社をインキュベート。Tokyo XR Startups 単体では、前回の第3期までに支援した16社の調達金額が合計で20億円超に達し、評価額の総和は120億円を超えているという。Seoul XR Startups からは第1期と第2期あわせ7社中5社が資金調達に成功、第1期輩出の Atticfab は2018年韓国のトレードショーイベント「IMPACT-ECH(韓国経済新聞、韓国情報通信振興協会による共催)」で大賞を獲得している。

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先週、サンノゼで開催された Oculus Connect 5 で、一体型 VR ゴーグル「Oculus Quest」(開発コード名:Santa Cruz)が399米ドルで発売されることが明らかになった。Tokyo VR Startups デモデイの冒頭に登壇した gumi 代表取締役 CEO の國光宏尚氏は、「誰もが500ドルを切るかどうかを気にしていた中で、400ドルを切ったのは衝撃だった。これで一気に、VR 普及へのハードルが下がることになる」と指摘。これにより、時を経て価格が下がるのを待たずに、Oculus Quest 発売の来春から一気にVRゴーグルが一般化する可能性が出てきた。

本稿では、Tokyo XR Startups 第4期から輩出されたスタートアップを取り上げる。5チームのうち2チームについては事実上のステルスであるため、本稿では取り上げない。

音羽らら by UNISONLIVE

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UNISONLIVE(ユニゾンライブ)は、いわゆる VTuber(Virtual YouTuber)ビジネスの中でも、ハイエンドの 3D 音楽系 VTuber によるライブに特化した事業を展望した。音楽とバーチャルキャラクタの親和性は高いため、歌唱に力を入れた VTuber を創出することで、楽曲配信、ライブイベント、グッズ販売などでの集客につながりやすいメリットがある。一方で、楽曲づくり、レコーディング、マスタリング、モーションキャプチャなど、スタッフ体制や高い技術が要求されるため、潜在的競合の市場参入障壁は高いものとなる。

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UNISONLIVE は、Tokyo XR Startups 第4期中に月間40曲の音源を製作、また1時間で1曲分の 3DCG が作れる映像製作体制をの構築に成功。チーム内に音楽プロデューサー、ライトノベル作家、キャラクターデザイナーらを擁し、現在は音羽ららというキャラクタを開発中だ。初回の Twitter 動画は13,000回にわたり再生、その後も1日あたり4,300回再生されているそうだ。今後は、VTuber による音楽バンドの結成を準備しており、すでにキャラクターのコンセプトデザインは完成しているという。

Owl by edoga

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VR スタートアップの edoga(エドガ)は、VR を使った業務トレーニングのサービスを提案。労働人口が減りゆく日本では圧倒的な生産性向上が求められるはずだが、労働集約産業は熾烈な人材獲得競争にのみ終始していて、「時間がない」「コストが合わない」などの理由から人材育成には十分な機会と時間が供されていないのが現状。

edoga では VR を使った「バーチャル研修センター」を開発することで、ユーザがどこにいても現場環境を再現し、効率よく低コストでトレーニングできる環境を提供。業務トレーニングにおける NetFlix 的存在を目指す。海外では、ウォルマートが STRIVR を、フォルクスワーゲンが Innoactive を採用するなどの実績が出始めている。edoga ではこの分野の事業拡大を狙い、先ごろ、独立系 IT 研修最大手のトレノケートと資本業務提携を締結した。

ToPolog by Geocreates

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Geocreates(ジオクリエイツ)は、建築デザイン VR 用 SaaS「ToPolog(トポログ)」を開発。建築物を作る場合、設計を依頼された設計事務所は経験則を元にアイデアを考案、提案を受ける側の顧客もまた経験則に基づいて案の採用如何を判断してきたのがこれまでの手法だ。結果的に、どことなく似たような建築物が増えてしまっているのも事実である。経験則や勘ではなく、建築設計を定量的なデータに基づいた方法に導こうというのが ToPolog のアプローチだ。

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顧客はヘッドマウントディスプレイを装着し、設計案を没入感のある VR として体感。視線脳波分析を行うことで、顧客がどの部分を満足したか、気に入ってないか、などの情報を部分毎に把握することができる。PDCA を回すことにより、最適化された設計案の確立を導くことができる。内装業、不動産、建設会社、小売業界などがターゲット市場。同社は、11月末までに1.5億円を目標に資金調達中だ。


今回の第4期デモデイ開催とあわせ、Tokyo XR Startups では第5期参加スタートアップの募集を開始した。応募締切は11月30日まで。第5期からは、インキュベーションプログラムに2つの変更点がある。

一つは、XR 領域(VR、AR、MR)に加え、ブロックチェーン分野のスタートアップが募集対象となること( XR + ブロックチェーンという意味ではなく、ブロックチェーン単独でもよいとのこと)。

もう一つは、プレプログラム(事前選考通過チーム対象)とメインプログラム(最終選考通過チーム対象)に分けられる点だ。プロプログラムでは、TXS インキュベーションセンター(コワーキングスペース)で最大2ヶ月間にわたり、チームビルディングや開発計画作成の時間的猶予が与えられる。メインプログラムでは、通過チームに500〜1,500万円の出資が実施され、最大4ヶ月間にわたりプロダクトやサービスのプロトタイプ開発を行う。

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本稿の冒頭でも述べた通り、VR の浸透に向けたハードウェア的要素が整ってきたこともあり、VR デバイスを普及させる上でのキラーコンテンツの開発にも注力する Tokyo XR Startups では、バーチャルタレント支援プラットフォーム「upd8(アップデイト)」と連携し、バーチャルタレントの創出にも乗り出す。応募者条件はバーチャルタレント企画を持ち、3ヶ月以内にバーチャルタレントをローンチさせること。upd8 から制作・活動資金を提供するほか、スタジオの無償提供、機材・技術面でのアドバイスのほか、Tokyo XR Startups からは法務・労務面などバックオフィスのサポートが提供される。

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プレプログラムには最大7チーム、メインプログラムには5チーム程度、バーチャルタレント育成プログラムには最大3チームが選出される予定だ。

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