Amazon Primeのような「お急ぎ便」を自社ECに付加するShopRunner、物流市場の不都合に商機見出す

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ピックアップ : ShopRunner Raises $40M in Growth Funding via finsmes

ニュースサマリー : EC利用者向け2日以内配達サービス「ShopRunner」が4000万ドルの資金調達に成功。同社は100以上のEC事業者と提携しており、年会費79ドルを支払った顧客は提携ECサイトを利用する際に無料で2日以内のお急ぎ配達サービスを利用できるようになる。無料返品サービスも提供されている。

ShopRunnerの利用企業はAmazon Primeと同等の配達サービスを自社EC事業に付け加えることができる。今回の調達に合わせて1,500以上のブランド商品を無料配達・返品サービス付きで販売するECプラットフォーム「Spring」の買収も発表した。

話題のポイント : ShopRunnerのビジネスモデルの特徴は2点ほど挙げられます。1つは顧客の時間を「先買い」する戦略。以前指摘したように会費ビジネスの巧みな点は、サービス提供の元資金を先に会費として徴収しておくことで、持続可能性の高いサービス設計を可能にするところにあります。

加えて顧客は料金を年間費として先払いしているため、最低でも1年ほどはサービスを継続利用してもらえる可能性が生まれます。サービス資金獲得と顧客の継続利用率確保の両方をサービス提供前に満たすことができるのです。

もう1点目は最短配達サービスに対しての市場啓蒙です。現在Amazon Primeサービスの普及と同時にお急ぎ便は当たり前になりました。一方、Amazonが抱える「規模の経済」を無視できないため、物流会社が配送料の大幅値下げを負担することで市場のしわ寄せをくらっている形です。日本では2017年の「不在時の再配達問題」に端を発したヤマト運輸の配送料の値上げニュースも記憶に新しいです。

米国では不在時には庭先やマンションの入口に荷物を放置するのが慣習のため、日本より深刻な問題にはなっていませんが、Amazonの優位性だけが一人歩きして物流市場が負担を肩代わりする構図に変わりはありません。

そこで最短配達サービスを享受できている現状がバブルのような状態であると市場に認識させ、こうしたサービスは元々リッチなサービスであると私たちへ提案したのがShopRunnderであると考えます。

もちろん市場教育コストは大きくかかりますが、利用者である私たちが物流市場の構図を理解してあげることで、EC事業者ばかりでなく経済全体に良い循環、お金の巡りが生まれるかもしれません。こうした物流市場の不都合を会員制という形で巧みに解決し、消費者に配達サービスに対しての有料意識植え付けに成功したのが彼らなのです。

ShopRunnerと同様に物流市場の不都合を解決するスタートアップに「Happy Returns」が挙げられます。提携ECブランド商品であれば、最寄りのショッピングモールに開設してあるHappy Returnsのブースで返品作業を行えます。顧客は箱詰めして送り返す手間暇を省け、返品対象品を手渡しするだけで即金でお金を得られるメリットがあります。

Happy Returnsは各ブランドへの返品数が一定数以上集まってから返送・配達を行います。返品物流を小分けではなくまとめ配達の物流手法へと変えたのです。1品ずつ返品するのでは、EC事業側の管理コストがかかり過ぎますし、物流業者の仕事が増えてしまいます。この課題を解決したのがHappy Returnsなわけです。

仲介手数料を収益軸としていますが、EC事業者にとって1品ずつ返品された商品管理コストと比較すれば安上がりです。ちなみにHappy Returnsの場合はEC事業者に返送するまでの間、在庫管理コストが発生しますが、このボトルネックを会員制にしてしまえばShopRunner同様に費用対効果を最大化させられる可能性は十分に考えられるでしょう。

日本では世界と比べてEC化率が低めですが、ShopRunnerおよびHappy Returnsのどちらも業態もうまく働くと感じます。あまり小売系ベンチャーを見ることはありませんが、世界有数の市場規模を持つ日本では大きな商機が隠れているはずです。

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