AI開発の温室効果ガスを防げーー光でAIを加速させる「Luminous Computing」がビル・ゲイツ氏らから900万ドル獲得

by SasakiShun SasakiShun on 2019.6.27

selective focus photography of computer motherboard
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ピックアップ:Bill Gates just backed a chip startup that uses light to turbocharge AI

ニュースサマリー:AIシステムの処理速度を飛躍的に高める光チップを開発する「Luminous Computing」が6月4日、シードラウンドで900万ドルの資金調達を発表した。このラウンドにはビル・ゲイツ氏やUberのCEOであるDara Khosrowshahi氏を含む個人投資家が参加した。

同社は従来の半導体素材が高速処理、低消費電力に適していないことから、データ伝送を光で行うチップの開発に取り組んでいる。

異なる色の光を使用して複数のデータを同時に移動させることで、従来のチップのデータ伝送能力を凌駕できる。更に現在の試作品は従来型の最先端のAIチップより3桁もエネルギー効率が高い結果が出ている。今回調達した資金は、3000個分のディープラーニング用プロセッサTPUに匹敵する処理能力を持ったシングルチップを実現するための開発に充てられる。

話題のポイント:今回筆者が注目したのは「AIによる環境破壊の防止」です。2012年のGoogleによるディープラーニングを用いた猫の認識、トロント大学のニューラルネットワークを用いたAlexNetを皮切りにAIのアプリケーション、プラットフォームライブラリ、ハードウェアが発達してきました。

特に最下層のハードウェアは情報量の増加に伴ってCPUでは対応しきれなくなり、GPU、ASIC、FPGAといった高速処理向けのチップが進化しています。

今回の記事でも光チップの発展が、IoTの普及とともに発生する大量のデータ処理に耐えるコンピューティングパワーを生み出す可能性に目が惹かれると思います。しかし、Luminous Computingがもたらす社会的インパクトは、エネルギー効率の改善にあるのではないでしょうか。

これまで一般人だけでなく研究者でさえもAIの有益な側面ばかりに注目をして、副作用を正確に把握できずにいました。そんな中、6月5日に提出されたマサチューセッツ州立大学の研究者、Emma Strubellらの論文はその負の部分を浮き彫りにしました。

結論から言うと、AI開発はとてつもない温室効果ガスを排出します。NASを行う大型AIモデルを訓練させるためにライフルサイクルアセスメントを実施した際のカーボンフットプリントはおよそ284 t-CO2eであることが分かりました。これはアメリカの平均的な自動車が製造から寿命を迎えて廃棄されるまでに排出するカーボンフットプリントおよそ57 t-CO2eの約5倍に値します。実際には、AI開発では新しいモデルを作製したり、既存モデルに新しいデータセットで調整する必要があるため、更に多くの温室効果ガスを排出する可能性があるのです。

Luminous Computingはプロトタイプの段階で、従来チップよりエネルギー効率の3桁改善を達成しています。つまり、光チップを用いた場合カーボンフットプリントは大幅に減少することが予想できます。これはブレイクスルーと言えるでしょう。

実際、従来チップの最新の報告ではエネルギー効率を50%改善しているので、光チップの可能性の大きさが分かります。

世界では、高エネルギー効率AIシステムの実現に向けて動き始まり、注目が高まっています。ドイツの連邦教育研究省はイノベーション・コンペティション「高エネルギーAIシステム」の開催を3月18日に発表しました。コンペティション勝者は産業と利用者と共同開発できる後続プロジェクトで支援されます。今後こうした産学連携の取り組みが増えてくる可能性があります。

AIの有用性は周知です。そのため処理速度にばかり目が向きます。今回の記事で実現には処理速度だけでなくエネルギー効率も注意深く見る必要があることに気付かされました。(執筆:佐々木峻

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