賃貸不動産の内見業務などを〝民主化〟する「CANARY(カナリー)」運営、500 Startups Japanなどから約7,000万円を資金調達

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BluAge のチームと 500 Startups Japan(投資実行当時、 現在 Coral Capital)のメンバー。右から3人目が BluAge 代表の佐々木拓輝氏。
Image credit: BluAge

賃貸不動産の内見・契約サービスを提供する「CANARY(カナリー)」を運営する BluAge(ブルーエイジ)は26日、500 Startups Japan(当時)などから約7,000万円を調達していたことを発表した。シードラウンドとみられる。500 Startups Japan 以外の投資家名については明らかになっていない。

CANARY が提供するのは、賃貸不動産の内見業務・契約業務の一部を個人エージェントに開放するという試みだ。賃貸不動産のオンラインポータルなどには、不動産業者が多くの物件情報を掲載しているが、物件の写真撮影や必要情報の集約など、掲載に関わる一連の業務に担当者が1日あたり数時間以上要することもザラなのだとか。また、消費者サイドから見れば、おとり物件が含まれるという問題もある。

CANARY では Web 上に公開された物件情報をキュレーションし公開。CANARY を訪れたユーザが希望する物件について内見を求めると、最適な個人エージェントがマッチングされ内見をコーディネートしてくれる仕組みだ。賃貸不動産に住んだことのある人なら分かる通り、契約にあたっては客付の不動産屋(借主側)と元付の不動産屋(貸主)側が仲介してくれるわけだが、この際の客付の業務を個人エージェントが行うことになる。

CANARY
Image credit: BluAge

現在、CANARY では東京23区の物件をモバイルアプリで紹介しており、今夏には取扱対象を1都3県にまで拡大する予定。また、CANARY で活躍する個人エージェントは、BluAge の正社員、業務委託者を含め7名程度がいて、取扱量や対象地域拡大に伴い順次増やす方針だ。エージェントのうち業務委託者には、得られた仲介手数料のうちの30%〜40%程度が報酬として支払われる(正社員のエージェントは給料制、インセンティブ制など)。

このモデルのベンチマーク先は、評価額44億米ドルで昨秋ソフトバンク・ビジョン・ファンドから4億米ドルを調達した Compass だろう。BluAge を創業した佐々木拓輝氏は、メリルリンチの投資銀行部門、ボストンコンサルティンググループを経て2018年4月に BluAge を設立。佐々木氏はこれまでに数多く引越を重ねており、そのときの自身の経験からユーザ体験を変えるべく CANARY のローンチに至った。

賃貸不動産の契約においては、仲介してくれた不動産業者に世話になるのは契約時のみで、その後、継続的に取引関係が続くことは少ない。リピーター需要が発生しにくいことから、顧客にローヤルティ向上してもらおうというモチベーションが不動産業者に働きにくいのも事実。CANARY は、内見や契約業務の一部を個人エージェントに開放することで、この点を改善しようとしている。契約後のフォローアップや、次期引越時のリピーター需要で顧客との関係性を維持しようというわけだ。

6月4日、Coral Capital が東京・大手町で開催した不動産テックイベントで ピッチする BluAge 代表の佐々木拓輝氏
Image credit: Masaru Ikeda

個人エージェントは営業のスキルさえあれば、特に不動産取扱に関わる資格は求められない。これは通常の不動産業者において、営業マンは資格を持っていなくてもよく、業者に宅地建物取扱主任者が一名以上いれば良いのと同じスキームだ。CANARY の場合、社内に宅地建物取扱主任者が在籍しており、個人エージェントは「クラリス」という同社のネットワークに属することでこれを実現している。不動産営業の経験が無い人でも2〜3ヶ月で独り立ちできるそうで、BluAge では在宅勤務などフレキシブルな勤務体系でエージェントのプールを充実させたいとしている。

BluAge が CANARY のプレビュー版をローンチさせたのは2018年10月。以来これまでにアプリダウンロード1万件以上、内見依頼1,000件以上を取り扱っており、事業は単月ではすでに黒字転換を果たしている。今回調達した資金は主にシステム開発と UX 改善に使う計画で、今後は新鮮な賃貸不動産の物件情報を手に入れるため、不動産管理会社と提携し、彼らのシステムとのデータ連携を目指すとしている。

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