誰もが3Dで情報発信・収集できるAR時代のインフラを目指す「Cynack」、NOWから数千万円の資金調達とARブラウザ「Sphere」を発表

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8月20日、AR専用ブラウザ・サービスと3D情報向けマークアップ言語を開発する「Cynack」が数千万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先となったのはNOWである。

Cynackは3D情報が当たり前にやり取りされるAR時代のインフラ企業を目指す。「スマホの次」と言われるグラス型端末が普及した未来に向けて、「3Dを、人類のあらたな言語に」というフレーズをビジョンに掲げるARスタートアップだ。

プロダクトは2つ。1つは「OML(Object Markup Language)」。ARコンテンツ作成に特化したプログラミング言語である。もう1つがAR専用ブラウザ「Sphere」。事前に設定しておいた特定情報を表示するための位置指定の標識「マーカー」を読み取り、ARコンテンツを表示させるアプリケーション。

今回の資金調達に伴い、ロゴを含めたコーポレートブランドデザインのフルリニューアルも実施。デザインに関わったのはスタートアップのブランディング・サポートを行うPARK社

Cynackが目指すのはAR時代のインフラ。エンドユーザーが利用するブラウザ側と、開発者が扱うプログラミング言語の両方を抑えることで、ARコンテンツ制作からリリースまでを手軽に行える次世代のプラットフォームの市場ポジションを目指している。

8月26日から市場投入されたOMLは可読性の高い言語というメリットを活かして、ARコンテンツ開発者のARコンテンツ開発ハードル及び制作プロセス短縮に重きを置いている。これまでのコンテンツ制作では「Unity」や「ARKit」を用いて0から表示情報を作り上げる必要があった。

しかしOMLを用いれば積み木を組み合わせる感覚で手軽に3D図形を簡単に描画できる。球や立方体などの基本的な6種類の立体とユーザーが用意した3Dモデルなどを用いて、大きさや位置座標、色指定をするだけ。FBXの読み込みにも対応しているため、3Dアニメーション再生も可能。

簡単な広告向け情報コンテンツであれば短期間で制作可能となった。「Sphere」との連携ができるため、スムーズにリリースまで漕ぎ着けるようになった。

新たにお披露目となったAR専用ブラウザ「Sphere」は主に企業の広告コンテンツを表示するARアプリケーション。まずは大型商材などを扱う企業の営業資料として 3D デモンストレーションなどの社内ツールとしても利用される2B向けユースケースを想定する。

両サービスとも2B向けではあるが、エンドユーザーと開発者の両者にメリットを提供できる座組を作ることでインフラビジョンへの一歩を踏み出した。そこで今後の展望について代表の吉村氏は次のように語る。

現状のARコンテンツ制作サービスは、料金が不透明であったり個人利用に向いていなかったりするものがほとんどです。

Cynackが目指すのは誰もが3Dで情報発信と収集ができるインフラをツール提供者という立場から支えること。今回リリースしたブラウザ「Sphere」はコンテンツを作るためのエディタからブラウジングに至るまで一貫して提供するサービス群のほんの一部です。

今後は企業の内部利用を想定したプロジェクトを行い、OMLの表現力向上を中心とした改良と、エディタ等の一般消費者向けのSaaSの開発を並行して取り組んで参ります

本日までに2種類のサービスを市場投入しているが、それもまだ長期戦略のたった一部とのこと。2B向けに既存サービスを提供をしつつ、AR時代のインフラを目指して2C向け新規サービス開発も想定しているようだ。未だAR市場のプラットフォームの座を握った企業は現れていない。日本のCynackがこの座を勝ち取るかに注目が集まる。

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