ニュースサマリー:ステーブルコイン「Dai(ダイ)」の開発を担う「Maker Foundation」は12月19日、Dragonfly CapitalおよびParadigmから2,750万ドルの資金調達を公表した。厳密には、同組織が発行する暗号通貨MKRの総供給量のうち5.5%が上記2つのVCによって買い取られた形となる。
1Dai=1ドルに連動したステーブルコインであるDaiは、Ethereum上のスマートコントラクトによって、ETHを中心とした他数種の暗号通貨を担保に発行される。単一の法定通貨を担保に発行される一般的なステーブルコイン(USDCやTetherなど)よりも分散性が高く、Ethereum上の分散型金融(DeFi)エコシステムでは最も利用率の高い通貨となっている。
※DeFi = Decentralized Financeの略で、分散型金融と訳される。主にEthereumなどのパブリックチェーン上の金融アプリケーション及びプロトコルエコシステムの総称として用いられる言葉。
※上記動画は日本語字幕で見ることができます。
現時点でMaker Foundationは、ステーブルコインDaiを発行・管理するコミュニティ「MakerDAO」を実質的に運営をリードする財団である。ただしMakerDAOは、特定の管理主体を持たない自律分散型組織になることを志向しているため、同社はその組織の一部になるとされている。
本調達によってMaker Foundationは、MakerDAOコミュニティおよびDeFi(分散型金融)エコシステムのさらなる拡大をを目指し、分散型ガバナンス促進と、中国を中心としたアジアマーケットへの拡大に一層力を注ぐとしている。
先日、マルタに拠点を置く中国発の世界最大級の暗号通貨取引所「OKEx」は、Makerが開発する「DSR(Dai Saving Rate)」スマートコントラクトを同取引所アプリ内にインテグレートしたと発表。これによりOKEx利用者は、保有するDaiをDSRにロックし、簡単に金利収入を得ることができるようになった。

話題のポイント:本調達についてMaker Foundationの日本コミュニティマネージャー、Kathleen Chu氏に直接お聞きしたところ次のようなコメントをくれました。
今後、DaiとDeFiの利用を拡大するにはアジア市場がとても重要です。 この地域での利用率が増加することを楽しみにしています。
Daiという呼び名は、そもそも中国語の「貸(=貸し出す、借り入れる)」の読み方から取ったものであることからも、Maker Foundationは当初から中国を重要な市場として捉えていたことが分かります。
本調達による拡大先としてアジア・マーケットを明言しており、日本にコミュニティ・マネージャーを配置しているくらいですから、そこには当然、日本市場も含まれることになります。その点に関して、Kathleen氏は次のようにコメントしています。
日本でもDeFiコミュニティは着実に成長しており、日々人々がオープンファイナンスについて学んでいることを目の当たりにし、とても嬉しく思っています。今後コミュニティを成長させていく最適な方法として、一層ユーザーの学習を支援し、知識の共有を行なっていくことだと考えています。
実際、MakerDAOは日本語コンテンツを拡充していたり、ブロックチェーン教育スタートアップ「techtec」との協業により、DaiとMakerDAOに関する学習コンテンツを共同作成・提供していくとしており、着実に認知拡大・ユーザー教育を進めていることが分かります。
欧米圏と比較すると、日本では未だ認知度が低く、当然プロジェクトの数もごくわずかですが、分散型金融(DeFi)は今後国内にも訪れる次の金融×テクノロジートレンドとして、業界内の一部ではそのポテンシャルが期待されています。
事実、先日発表されたCB Insightの2019年3Qのフィンテック市場を概観するリサーチ・レポートにおいても「DeFi」という言葉が登場しています。既にサンフランシスコやニューヨークでは数多くのスタートアップが誕生しています。

<参考記事>
Daiは世界で初めて誕生した分散型ステーブルコインであり、MakerDAOは分散型金融(DeFi)エコシステムで圧倒的なシェアを誇るプロジェクトです。その意味で本調達は「2019年が分散型金融(DeFi)の年であったこと」を象徴しています。
同社が公開したデータによれば、現在1億Dai(1億ドル=約100億円以上)が市場に流通しており、1,600万DaiがDSRコントラクトにロックされ、また現在Daiシステムをインテグレートするアクティブ・パートナー(アプリケーション及びプロトコル)が世界中に400以上存在とのこと。
長期的にDaiは、各市場にてFacebookの「Libra」や中国の「DCEP(デジタル人民元)」などと競合する存在になります。最も分散性を持つステーブルコインとして、上記の国家・企業発行の通貨の脅威になり得ます。今後のステーブルコインや分散型金融市場の動向が非常に楽しみです。
<参考記事>
- 想像の遥か上をいくFacebook仮想通貨「Libra」のスゴさを解説するーーいきなり米国議員から開発停止要求も
- 中国人民銀行高官「我々が発行するデジタル通貨は、FacebookのLibraに似たものになる」と発表
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