新型コロナ感染拡大、安全確保と自由のバランスをどう取るか?

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シンガポールで導入された接触追跡アプリ「TraceTogether」。
日本でも、このアプリをベースとした同種のアプリが開発されているとの報道がある。

世界中の国々が人類の最も身近な脅威に注目している。コロナウイルスは、雇用、世界的な経済活動、国際関係、愛する人の健康、私たち自身の生活を脅かしている。疫学者は感染拡大と闘うために、コロナウイルスがどこでどのように広がっているかをより深く理解するためのデータを必要としている。世界レベルから地方レベルまで、世界のリーダーは、資源の管理、避難所設置制限への対応、事業再開などについて、十分な情報に基づいた意思決定を行うために、ウイルスの広がりを追跡できる必要がある。

政治家がテストしているスマートフォンを使った接触者追跡、熱スキャン、顔認識などのテクノロジーは、すべて監視することを言い換えただけのもので、現在検討されているトレードオフは、今回の危機以降にも拡大する可能性がある。

コロナウイルス感染拡大が起きる前、倫理と社会正義における最も重要かつ人気のある運動の一つは、テクノロジーによる監視、特に顔認証のような AI 技術に反対する運動だった。それは、ビッグテックの最もよくない部分、行き過ぎた法執行、政府乱用の可能性に対して、日常生活者を対抗させる権力に特化した枚挙にいとまのない話題である。「監視資本主義」は、読んで字のごとく品の無いものだし、特定の種類の権力について真実を語ることは気分がいい。

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しかし今、何百万人もの人々が突然失業し、アメリカだけでもコロナウイルスによる死者が約8万人も出ている中で、問題はもはや企業の利益でも、プライバシーや安全性でも、権力に対する取り締まりの有効性でもない。世界的感染拡大においては、プライバシー、安全性、権力、生命そのものとのトレードオフが非常に重要になるかもしれない。

コロナウイルスの蔓延は、すぐに生死に関わる脅威となる。これほどの規模の感染拡大を経験した人は現代の世の中にはいないので、誰もが適応しようと必死になっている。このような悲惨な状況下では、データのプライバシーや顔認証による政府の過剰な監視についての理論的な懸念は、簡単に脇に追いやられてしまう。

コロナウイルス関連の医療記録が大規模なデータベースに蓄積され、最前線の医療従事者がこの病気と闘うのに役立つとしたら、それは本当に悪いことなのだろうか? あるいは、そのデータが、疫学者がウイルスを追跡し、それがどこでどのように広がっているかを理解するのに役立つならば? あるいは研究者が治療法を開発するのに役立っているとしたら? コロナウイルス患者と接触したかどうかを調べるために、スマートフォンのデータを共有しなければならないとしても、誰が気にするだろうか? もしそれがスーパースプレッダーが何百人も何千人もの人々に感染するのを防ぐことができるのであれば、顔認識監視システムを導入することは本当にそんなに手間のかかることなのだろうか?

これらの疑問は正当なものだが、全体としては危険なほど浅はかな視点である。

9.11後のアメリカでは、同じような時代の流れが浸透している。恐怖心——そして連帯への強い願望から、議会は超党派の幅広い支持を得て愛国者法を速やかに可決した。しかし、アメリカにはガードレールを要求・実装するだけの先見の明が無く、連邦政府はそれから約20年間、広範な監視権限を維持してきた。我々が9.11と愛国者法から学んだこと(少なくとも学ぶべきだったこと)は、脅威への積極的なアプローチが、将来を見据えた保護を排除すべきでないということだ。それ以下であれば、パニックに陥ることになる。

プライバシーやその他の自由を、急ぎ足で大々的に放棄することによってもたらされる危険性は、理論的なものではない。コロナウイルスがもたらす脅威のように、すぐにはっきりとしたものではないのだ。プライバシーを手放すことは自分の権力を手放すことであり、誰が全てのデータを保持しているのかを知ることは重要である。

データを保持するのは、Apple や Google のようなテック大手のこともあれば(彼らは、すでに広く信頼されていないが)、PalantirClearviewBanjo のような極右過激派とつながりを持つ AI 監視テック企業である可能性もある。他にも、あなたの権力が直接政府の手に流れるケースもある。時には、顔認証監視のようなタスクを実行するために、政府がテック企業と契約している場合、あなたのデータと権力が同時に奪われる可能性もある。

おそらくもっと悪いことに、一部の専門家や倫理学者は、感染拡大中に構築または配備されたシステムは解体されないと考えている。つまり、あなたが今スマートフォンのデータを携帯電話会社に提供することに同意した場合、彼らはそのデータを(感染収束後も)取り続ける可能性が高いということだ。あなたが街中に展開された顔認識システムなど検疫措置に同意した場合、それらのシステムは、検疫が終わった後も、法執行のスタンダードの一部になる可能性が高い、といったところだろうか。

感染拡大に、困難なトレードオフは必要無いと言いたいわけではない。困難ではあるが非常に重要なのは、どのような譲歩が受け入れられる必要があるのかを理解し、どのような法的・規制上の保護措置を講じる必要があるのかを理解することである。

手始めに、いくつかの一般的なベストプラクティスに目を向けることができる。世界中の何百もの組織が署名した「通信監視への人権の適用に関する国際原則」は、いかなる集団監視の取り組みも、必要かつ適切で、相応のものでなければならないと長年にわたって主張してきた。データ収集に関する意思決定は、法執行機関ではなく、保健当局が行う必要がある。プライバシーへの配慮は、連絡先追跡アプリのようなツールに組み込まれるべきだ。公衆衛生の名の下に行われた妥協は、プライバシーへのコストとのバランスをとる必要がある。また、監視システムが設置されている場合は、コロナウイルスの緊急性の高い脅威が収まった時点で解体する必要がある。感染拡大時に収集されたデータは、誰が、どのような目的で、どのくらいの期間、そのデータにアクセスできるかについての厳格な制限を含む法的保護を持たなければならない。

今回の VentureBeat 特集連載「AI と監視(AI and Surveillance)」では、議員が取り組んでいるプライバシーと監視のトレードオフを探り、コロナウイルスを追跡する方法を概説し、政治、テクノロジー、人々の生活が交差するところで政府が直面する課題のケーススタディとしてフランスを取り上げる

これは生死に関わる問題だ。しかし、それは現在の生と死であるとともに、この先何年にもわたっての生と死の問題なのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】