真のシリコンバレー・アウトサイダーが率いるa16z新ファンド「The Talent x Opportunity Fund」

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ピックアップ:Introducing the Talent x Opportunity Fund

ニュースサマリー:Andreessen Horowitz(a16z)は3日、新ファンド「The Talent x Opportunity Fund(TxO)」の設立を発表した。同ファンドはa16zパートナーであるNait Jones氏によって運営される。また、初期の規模は220万ドルからで、Donor Advised Fund(DAF:財産を寄付する形式のファンド)の形となる。そのため、ファンドへの寄付者は税制上のメリットを受けることができる。

話題のポイント:a16zの新ファンド「The Talent x Opportunity Fund(TxO)」には”不当”な扱いや環境に置かれているスタートアップを対象とするという、個性的なポジションを与えています。新ファンド担当者となるJones氏は、”シリコンバレー”的なファウンダーではなく「Hidden Founder」、つまり不平等を受け機会を失っている層に焦点を当てるそうです。

Jones氏は元々、a16zから出資を受けたスタートアップのファウンダーでした。

彼が運営していたスタートアップ「AgLocal」が上手くいかず、シャットダウンする決断を下した時、Ben Horowitz氏からa16zへジョインしないか?といった連絡を受け取ります。この時、Jones氏は、Benを含むa16zのメンバーが自分を「黒人で大卒でもないアウトサイダー」ではなく「Nait Jonesそのもの」として評価してくれたことを痛感した、と語っています。

Jones氏は2017年に執筆したブログ「“Inclusion” is not for outsiders」にて、本当の「Silicon Valley outsider」とは何かについて言及しています。組織にもダイバーシティ-が求められ、スタートアップは人種・性別を問わず採用活動をしているものの、彼らが着目しているのは本質的なバックグラウンドではないことを指摘しています。

People tend to think “Hey I’m competent and I worked at Google and came out of Stanford CS so this candidate must be at least marginally competent as well”.

もちろん彼もダイバーシティを実現するため「ハーバードでCSを学んだ”女性”」や「MITでエンジニアリングを学んだ”アフリカ系アメリカ人”」をシリコンバレーの経済圏に迎え入れることを100%否定しているわけではありません。

ただ、ダイバーシティーを追い求めるすぎるとすでに機会を与えられ、誰にでも分かりやすい才能を持った者だけが輪の中に入れる「空虚な理想郷」となってしまう恐れがあります。こうした視点は彼の経験が基になっており、そうした事実を振りかざし人種や性別に差別がない「Inclusion」をアピールするのは間違いであるというのが彼の考え方です。

今回のリリース冒頭には、現在世界的な問題に発展しているGeroge  Floyd 氏の死について触れられています。法の前では「平等」にもかかわらず、法の執行者の前では「不平等」が蔓延している事実を指摘し、そういった環境や思い込みは多くの社会的弊害を生み出し、スタートアップエコシステムにもある種の距離や幅の狭さを生み出す要因になっていると語っています。一方で、こうした社会的問題に影響された突発性のものではなく、6カ月ほど前から計画的に取り組んでいたプロジェクトであることも明らかにしています。

本質的なシリコンバレーにおけるアウトサイダー(本人はTHIS is the profile of a Silicon Valleyと表現)のNait Jones氏が率いる新ファンド「The Talent x Opportunity Fund」が、ただの表面的なアピールではなく、本気でアクションを起こそうとしていることが強く伝わる動きなのではないでしょうか。

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