自宅を証券化して最大35万ドル出資、Noah が描く「住宅購入の新しいカタチ」

SHARE:
Noah-Exterior-2
Image Credit:Noah

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの転載

住宅市場にエクイティファイナンスの手法が導入され始めています。たとえば、住宅購入の頭金を一定額肩代わりする代わり、数年後の住宅価格に応じて投資額を返済するようなモデルです。緊急的に資金を必要とする個人に対し、柔軟な調達手法を提供するモデルとしてまさにパンデミックの今、注目を集めています。

直近の事例では、不動産向けオルタナティブファイナンス「Noah」が挙げられます。同社は4月22日に1.5億ドルの追加調達を実施しています。

住宅所有者に住所・クレジットスコア・債務残高情報を共有させることで出資の事前審査をし、審査が通り次第、最大35万ドルの資金を提供します。一方、Noahがもらうのは物件のエクイティ(Home Equity)で、このエクイティを10年後に所有者が買い戻す必要があります。出資額の計算は物件のエクイティ放出額によって算出されますが、一般的に5〜20%をNoah側に渡すとのことです。

ローンではなく「出資」というのがポイントです。

今回の追加調達はコロナが引き起こした経済逼迫により、物件購入を控えてしまっている、もしくは融資支払いに首が回らない顧客ニーズに対応するためのものです。同社によると、ウェブサイトを通じての問い合わせが600パーセント増加しており、7%の住宅所有者が景気刺激策の小切手やその他の金融救済を待っている間、住宅ローンの支払いを遅らせたり一時停止したりするなど、なかなかひっ迫した状況があるようです。

JPMorgan Chase、Wells Fargo、U.S. Bank.などの大手銀行が、住宅ローンの借入基準を引き上げている市場環境から、ローンではなくエクイティファイナンスとしての調達手法が選ばれているのです。

AI + 不動産証券化の流れ

欧米では住宅資金の柔軟な支払いに注目が集まっています。ここからはビジネスモデルの推測になりますが、「AI + 不動産証券化」のトレンドがきていると考えています。

Noahのエクイティは10年後の住宅価格によって決まります。不動産・地価価格によって決まり、利益が出ようと損をしようと売却されます。この点、損失を出さないためにもおそらくNoahは、数年後に確定する住宅売却益を周辺の地価上昇率データからAIを使って予測しているはずです。

すでに巨額の資金を自社調達していますが、トラクションを多く作るためにエクイティ元手資金を機関投資家から集めていたかもしれません。最大35万ドルの出資額を、機関投資家から調達、所有者からもらったエクイティは複数の機関投資家に証券として分配提供するモデルが考えられます。

Noahの手取りは減ってしまいますが、多額の初期投資を費やすリスクがなくなる構造にたどり着くはずです。言わば住宅所有者と、出資額の支払い能力のある機関投資家を結びつけるマッチングビジネスです。

従来は流動性のなかったアセットを証券化させ、利益の見込みをAIで担保するモデルが不動産市場で流行りつつあります。例えば都市部に住む教職員向け住宅資金サービスを提供する「Landed」。2019年4月にシリーズAで750万ドルの資金調達しています。

同社は勤務先学校近くの住宅購入をする教員に、頭金5〜10万ドルを提供するサービスを提供。Landedの頭金は返済義務のあるローンの形ではなく、住宅売却をする際などに最大25%の売却益をLanded側に分配する契約になっています。損失益が出たとしてもその損失分をLandedが共有するため、住宅価格変動の影響を全て所有者とLandedが共にするモデルです。

教職員の給与は依然として低く、かつ都市部となると生活コストが年々と上がっています。こうした都市部特有の課題を解決するサービスがLandedです。教職員から展開を始め、専門職向けにファイナンシャル・セーフティネットワーク構築を目指しているそうです。

リーマンショック時、失業者が路上生活者へと成り果てる現象が米国で社会問題となりました。そして今、新たにコロナショックが到来し、米国圏のみならず、世界的な経済衰退が見受けられます。来月の家賃が払えない、新居への引越しを考えていた検討段階に戻ってしまうとなると、不動産オーナー側も、ローンを貸し出す側の金融機関もお金が回らなくなり、最終的にはマクロ経済的な大きな打撃へと繋がってきます。

Noahは住宅ローンを組めないといった問題を、ある種のブリッジファイナンス的な思考で解決しています。そして、おそらく背景にはAIが使われているはずです。従来、試算が難しかった領域に事前予測技術が入り込むことで、一気に不動産市場の流動性が高まったと見て良いでしょう。こうした世界的な課題と、その解決に取り組む不動産スタートアップの組み合わせは必ず日本へやってくるはずです。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

----------[AD]----------