大規模病院向けCRM開発のメダップ、プレシリーズAでMICとDNX Vから1億円を調達——新型コロナが病院経営デジタル化の追い風に

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メダップの皆さん。右から3人目が、創業者で代表取締役の柳内健氏。
Image credit: MedUp

大病院に特化した地域連携強化サービス「foro CRM」を提供するメダップは4日、プレシリーズ A ラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、モバイル・インターネットキャピタル(MIC)と DNX Ventures。これは、メダップにとって、昨年2月に実施したシードラウンドで、MIC と REAPRA Ventures らからの調達に続くものだ(MIC の Web サイト、および、INITIAL の公開データによる)。

メダップは MIC 出身の柳内健氏(現在、代表取締役)らにより、2017年8月に創業。2019年4月から、大病院に特化した CRM SaaS「foro CRM」を提供している。

日本の医療制度においては、政府が主導する医療機関の機能分化の観点から、初診は地域のクリニックや中小病院で受け、症状や治療内容の必要に応じて、大病院に紹介してもらうという体制が取られている。こういった大病院は DPC 病院(Diagnosis=診断、 Procedure=診療行為、Combination=組み合わせ)と呼ばれ、診療行為ごとではなく包括的に医療費が評価・計算される仕組みが取られる。

つまり、大病院にとっては、どうやって患者をクリニックや中小病院から紹介してもらうかが経営のカギになる。しかし、大病院は病院毎に専門分野(診療科目よりも、もう一歩踏み込んで治療を得意とする疾病など)の機能分化が進む一方、クリニックや中小病院は、馴染みのある医療機関と連携した患者紹介に終始しているケースが多い。つまり、大病院はどれだけ治療を得意とする疾病があったり、知見を深めている分野があったとしても、それをクリニックや中小病院に体系的にアピールする手段は無かったわけだ。

「foro CRM」
Image credit: MedUp

foro CRM は大病院に来訪した患者が、どのクリニックや中小病院からの紹介だったかや、疾病内容や治療内容などのデータを集積。これを分析することによって、患者を紹介してくれた、または、今後、患者を紹介してくれそうなクリニックや中小病院に対して、どのようなアプローチを取ればいいか、洞察を与えてくれる。大病院からクリニックや中小病院への情報発信の方法はまだアナログなアプローチが有効ではあるが、メダップでは今後、より広範にデジタルツールを導入することで、病院の経営全般の効率化を支援したいと考えている。

病院経営の雄が伴走、コロナ禍が後押し

foro CRM の開発・導入にあたっては、データドリブンな病院経営で評価が高い済生会熊本病院が PoC の展開で協力している。foro CRM の導入にあたっては病院の日々のオペレーションにも変化が求められることから、提供形態はカスタマーサクセスが重めの SaaS といった感じだ。

今年に入ってからの新型コロナウイルスの影響で病院の経営は急速に悪化しており、これがデジタル化の波に取り残されていた病院業界への foro CRM 導入には追い風となっている。柳内氏によれば、メダップにとっても当初想定していたロードマップより前倒しで事業を進めることになっていると言う。

メダップでは今後、特にサーバサイドエンジニアの採用を強化し、foro CRM への機能追加に注力するとしている。

<参考文献>

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