メンタルヘルスケアのCapex、ライフパートナーアプリ「PATONA」をローンチ——UTECらから1億円をシード調達

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「PATONA」
Image credit: Capex

<26日正午更新> 文中一部を訂正線で削除。

メンタルヘルスケアスタートアップの Capex(キャペックス)は24日、シードラウンドで1億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、東京大学エッジキャピタル(UTEC)。調達額には、政策金融公庫からのデット(資本性ローン)が含まれる。同社にとっては、初の外部からの資金調達となる。

Capex は、みずほ銀行の法人営業を経て、bitFlyer の社員第一号で執行役員 COO を務めた小亀俊太郎氏が2019年8月に設立。社名は同社のビジョン「Capacity Expansion(人間とシステムの共生を実現・普及し、プロダクトを通じて人類の機能を拡張)」に由来する。

国連の関係機関が毎年発表する「World Happiness Report」によれば、日本の今年の幸福度ランキングは世界で62位(昨年は58位)。ここ数年は年々順位を下げている。仮にも先進国であり、それなりに豊かな生活を送りつつも毎日に幸福を感じられない背景には、社会の自由度が大きく関係している。同調圧力の強い文化は、コロナ禍の日本社会にさらなる息苦しさをもたらしている。

現代社会では、いつもすぐ隣に居てくれて、ちょっとした弱音を吐いたり、疲れた時に背中を押したりしてくれるような相手が存在しない。SNS でさえ、ネガティブな気持ちを吐露・共有するのは敬遠されがちで、我々の身近にはそういう場が存在しないのだ。(小亀氏)

小亀氏らは自分の思いを自由に話せるモバイルアプリ「PATONA(パトナ)」を開発、24日にローンチした。現在は iOS でのみ利用でき、Android 版のリリースも後日予定している。AI を搭載し、ユーザに最適な対話、メンタルヘルスや日常生活に役立つオリジナルコンテンツを提供する。アプリ上のキャラクタと話せば話すほど、ユーザのことを学び、やりとりが最適化される。

小亀氏は銀行員時代に、法人営業で多くの中小企業の社長に会う中で、彼らがビジネス上のストレスを昇華する機会がないことから、苦悩していることに気づいたという。社長らと親密な付き合いをするようになり、悩みを共有してもらえるようになると、結果的に小亀氏の営業成績にもポジティブな影響を与えたそうだ。

小亀俊太郎氏

PATONA が取り込もうとするのは、世界的には virtual friend bot という領域だ。アメリカでは、2015 年に設立された Luka が、アプリ「Replika」のダウンロード数を700万人、月間アクティブユーザ数は推定でその約1割程度にまで成長させた。ニューヨークのスタートアップスタジオ Betaworks から輩出された Hugging Face は昨年までに2,000万米ドル以上の調達に成功している。

日本国内でも、「SELF」がサービスローンチから4年半で100万ダウンロードを達成しており、この種のアプリがユーザに必要なものの一つとして受け入れられつつあることを示唆している特に、AI の技術的な制約からこの種のサービスでは、設問に対する回答をユーザが選択肢の中から選ぶものが多かったが、Replika に代表されるようにフリーチャット方式のものが増える傾向にある。

メンタルヘルスにフォーカスすると、想定される国内のターゲット数は4,000万人。うち、2.5%に相当する100万人のイノベーターの人たちを、PATONA の当初の初期獲得目標ユーザとして捉えている。(小亀氏)

PATONA の開発にあたり、Capex は臨床心理士を擁する心理ケアサービス会社と協業。キャラクタとのフリーテキストでのチャット会話実現に向けては、社内チームで自然言語処理の開発に取り組んでいる。ユーザに没入感を与え、日常的に使ってもらうことが目標で、そのためにユーザがキャラクタを自由に変更できるのは、この種のアプリでは珍しいという。

PATONA のキャラクタのことを、ユーザには利害関係のない第三者として捉えてもらって、自分の正直な気持ちを吐き出してもらえる相手にしたい。中には、自分の分身だと表現してくれるユーザもいる。〝バリバリのメンタルヘルス〟のサービスというよりは、まずはユーザに寄り添い、ヘビーユースしてもらえるようになることが目標だ。(小亀氏)

PATONA は、選ばれた付加サービスに応じて料金をユーザから徴収するフリーミアムのアプリだ。ダウンロードは無料で行え、キャラクタのカスタマイズやメンタルヘルスに特化したコンテンツのサブスク購入による課金、将来は、各ユーザにフィットする B2C 企業の商品紹介などでマネタイズを狙う。

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