ケニアで深刻化する血液問題に取り組む、デジタルヘルスプラットフォーム「Damu-Sasa」

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重要なポイント:献血に対する理解不足から国内での協力者が少なく、以前から慢性的に医療用の血液不足が問題視されていたケニアでは、新型コロナウィルスの流行で事態はより深刻となった。そんな中、同国で献血バリューチェーン向けにプラットフォームを提供しているDamu-Sasaが、献血者の増加や効率的な血液管理に貢献している。

詳細な情報:ケニアのナイロビを拠点にするデジタルヘルス・スタートアップDamu-Sasaは、採血、在庫管理、輸血管理、など、エンドツーエンドの医療用血液バリューチェーンを統合的に管理するプラットフォームを同国内向けに提供している。

  • Damu-Sasaのプラットフォームはクラウドベースで、バリューチェーンに関与する全ての人々に関連するアクティビティを一括で情報提供することが可能なため、 データによる意思決定の強化や効率的な血液の管理を支援し、 関連するコストを削減する。
  • 病院が献血協力者や病院間で必要な血液を調達するのを支援し同時に、血液製剤のスクリーニング、準備、在庫管理、輸血管理もサポートするなど、バリューチェーン全体で同プラットフォームは機能する。また、必要に応じた登録者への献血協力の要請や血液のトラッキング、献血履歴の管理もプラットフォーム上で行える。
  • 同社は病院やその他関連する多くの機関やパートナーと協力し、安全な血液を十分に供給することを目的としてプラットフォームの改善を行いながら、国民からの自発的な献血量の増加を増やす取り組みをしている。
  • 現在までにケニア全体の132の病院で同社プラットフォームは利用されるようになり、9,000回を超える献血を促し、プラットフォーム上には7万2,000人を超える登録者がいる。同社は新たにリリースされたAndroidアプリを通じてこの数をさらに大幅に増やすことを目指す。今年の7月に同国内で献血用血液の不足が深刻になった際には、保健省とFacebookが提携して行った献血キャンペーンにも協力するなど、既に同国内では一定の知名度と信頼を得ている。
  • この取り組みを後押しし、また新型コロナウィルスの感染拡大防止への貢献を強化するために、ヘルスケアおよびライフサイエンスセクターのインパクト投資家でもあるVillgro Africaから2万ドルの助成金を確保した。またVillgro Africaは助成金に加え、Damu-Sasaプラットフォーム上の新型コロナウィルスに関連した血液管理機能の強化や、継続的な資金調達活動をサポートするための支援も実施する。

背景:ケニア国内では年間100万ユニット程度の輸血用血液が必要とされているが、献血の重要性に対する理解不足などから積極的に献血を行う人は少なく、国内の献血量は20万ユニットにも満たない状態にあり、医療用の血液は慢性的に不足状態にあった。これまで海外からの支援(輸入)に頼っている状況であったが、その最たるものであった米国からのエイズ救済のための血液提供プログラムが昨年後半の資金削減によって停止状態となり、今年初め頃からケニア国内の医療用血液不足は深刻化していた。新型コロナウィルスの影響により、ロックダウンや外出自粛といった行動の制限により献血センターなどに足を運び献血をする人が激減し、現在世界的に医療用の血液の安定的な確保が難しくなっている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

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