モバイルで洗濯が頼める「LaundryGo」が47億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(9月6日~9月10日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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9月6日~9月10日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは16件で、資金総額は1,731億5,000万ウォン(約162億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • 非対面モバイルランドリーサービス「LaundryGo(런드리고)」を運営する Lifegoeson(의식주컴퍼니=衣食住カンパニー)が500億ウォン(約47億円)を調達。韓国産業銀行が300億ウォン(約28億円)を投入。 2019年3月にサービスをオープンして以来、月平均15%以上の成長。アメリカ洗濯スマートファクトリ EPC 企業 A + Machinery を買収、世界初の顧客別自動出庫システムの開発に成功。最近、ソウル聖水洞(ソンスドン)に、2つ目となるスマートファクトリを開設した。
  • スマートホテルソリューションを提供する H2O Hospitality(H2O 호스피탈리티)が300億ウォン(約28億円)を調達。ホテル業界では非対面、無人化の需要が増え急成長している。H2O Hospitality により、ホテルは固定費50%削減と20%の売上向上を期待できる。今回の調達で、東南アジア進出を本格化。
  • オールインワンビジネスメッセンジャー「チャンネルトーク(채널톡)」運営の Channel Corporation(채널코퍼레이션)が280億ウォン(約26億円)を調達。オンラインコマース市場の拡大の中、非対面のチャットボット相談マーケティングプラットフォームの需要増で成長する。全世界22カ国に進出し総売上高の15%は韓国国外から。今回の調達で、サービスの高度化と普及したツールとしての位置付けを目指す。…… 関連記事
  • サービス型フルフィルメント「Poomgo(품고)」を運営する Dohands(두손컴퍼니)が216億ウォン(約20億円)を調達。中小企業をターゲットに、物流業界のデジタル化をリードし、今年6月にフルフィルメントセンターで月100億ウォン(約9.4億円)以上の取引を記録。FedEx の単独フルフィルメントプロバイダにも選ばれた。ESG の一環で従業員の30%に社会的弱者を採用。
  • グローバル決済サービス「Travel Wallet(트레블월렛)」が158億ウォン(約15億円)を調達。海外15カ国通貨のいずれかの外貨に両替の際、海外利用手数料と両替手数料無しで、全世界8,000万の Visa のオンラインおよびオフライン加盟店で便利に利用可能。調達した資金で、「総合支給決済事業者登録(韓国で、給与受取から振込、公共料金支払などに利用できる仕組み)」に挑戦の予定。
  • 医療人工知能(AI)の専門企業 Coreline Soft(코어라인소프트)が120億ウォン(約11億円)を調達。韓国の国家肺がん検診ソリューションプロバイダとして5年連続で選ばれ、最大で国内外100ヶ所の医療機関に製品を供給。技術特例上場制度で来年 KOSDAQ への上場を目指す。

トレンド分析

ユニコーン工場か、卒業証書発行工場か …… Y Combinator に対する2つの見方

Y Combinator(YC)は最近、2021年夏バッチのデモデイを開催した。 YC は Airbnb、Doordash、Instacart といったユニコーンに初期投資した、シリコンバレーの最高スタートアップスクールだ。毎年2回、世界中からスタートアップを募集し、今回のバッチには47カ国から377社を選抜した。昨年夏のバッチでは198社選抜したのと比較すると90%以上増加したわけで、史上最大の規模だ。

YC は毎年アメリカ国外スタートアップにも投資を増やしている。今回も選抜企業の半分以上がアメリカ国外からで、なかでもインドのスタートアップが最も多い数を占めており、アフリカスタートアップも新しい投資先として浮上している。アジアのスタートアップも関心を集めている。

東南アジアのスタートアップは19社となり、以前のバッチに比べて6社に増加した。韓国企業は、絵文字のプラットフォーム「Stipop(스티팝)」が選抜された。YC は選抜の際の多様性を追求しており、選抜企業の女性創業者の割合は12%で昨年の冬バッチより2%増、ラテン系創業者も14%から15%に増えたのに対し、黒人創業者は5%から4%に減少した。

YC は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年3月からのプログラムをオンラインに完全移行し、今回が3回目のオンラインバッチだ。このように運営方式を変えながら YC は「卒業証書だけを刷って配布する工場に変質した」という批判も受けている。プログラムに400件近いスタートアップを選抜したことだけ見ると、この表現は的を得ているかもしれない。

Mark Zuckerberg 氏などの有名起業家に直接会うことができる機会とスタートアップ同志の友情育成など、YC でのみ享受できる利点は姿を消したのに対し、選抜されるスタートアップは大幅が増え、投資条件も変わった。従来は持分7%に対し1万5,000米ドルを支援していたが、現在では同持分に対する投資額が1万2,500米ドルに減額された。実のところ YC に対する批判は今回が初めてではない。昨年 YC が大規模に選抜を行い、魂を失ったという話が YC 出身者の間で噴出したが、YC が選抜率が2%と低いことを理由に「卒業証書工場」と呼ばれることに異議を唱えた。

批判の中でも、まだ YC デモデイは注目されている。今回も1,500以上のグローバル投資会社がデモデイを見たそうだ。デモデイ前に、すでに資金調達を決めたスタートアップも増加傾向にある。より多くのスタートアップを選抜し、地理的条件でシリコンバレーに直接来られない企業や、VC とのネットワークを築くのが難しいアフリカ、アジアのスタートアップにはチャンスだ。

また、初期段階にある企業の信頼を高めることができるということも利点だ。YC に選ばれる韓国スタートアップも増えている。今年ユニコーンとなった Sendbird(센드버드)に始まり、Miso(미소)、Soomgo(숨고)、Mars Auto(마스오토)、Marqvision(마크비전)、Quotabook(쿼타북)、NFTBank (NFT 뱅크)そして今回バッチに選抜された Stipop まで、グローバル市場で認められる韓国スタートアップが増加していることはいいことだ。

YC は新型コロナウイルスの感染拡大前から選抜スタートアップをグループ化したプログラムを運営するなど、選抜企業が増えたことで生じる可能性がある問題を防ぐ措置を講じてきたが。コロナ収束後に完全にオフラインプログラムに戻るという計画は明らかにしておらず、おそらくオンラインとオフラインが融合した形でプログラムを進行することが予想される。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

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