「カネくさいWeb3.0」は嫌いだ。

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本稿はWeb3対応のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を提供する Gaudiy 代表取締役、創業者兼代表取締役の石川裕也氏によるもの。クリプト界隈で話題になる投機的な動きからWeb3、クリプトスタートアップの本質がよく理解できる内容だったのでご本人の許諾を得て転載させていただいた。ご本人のTwitterアカウントは@yuya_gaudiy

2021年に突如はじまったNFTブーム。その市場規模は、2022年に約4兆円、2025年に約9兆1000億円以上と予測されるなど、世界で急拡大しています。

そのNFTを起爆剤として、2022年、本格的な「Web3.0時代」が到来しました。(Web3.0については昨年末に書いたnoteで触れているので、よければご覧ください。)

Web3.0と日本。世界で勝つためのクリエイターエコノミーの提唱

国内外のメディアやSNSでも、NFT、Web3.0、DAOといったワードを目にする機会が格段に増えました。実際に「STEPN」などのブロックチェーンアプリを利用したことがある人もいるかもしれません。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、シリコンバレーではGAFAを筆頭とする優秀なエンジニアが大量に離職し、「一生に一度のチャンス」としてブロックチェーン系スタートアップに流れ込む現象が起きているといいます。

The New Get-Rich-Faster Job in Silicon Valley: Crypto Start-UpsTech executives and engineers are quitting Google, Meta, Amazwww.nytimes.com

そんなWeb3.0時代は、まだほんの序章です。

下表は、インターネットのユーザー数とイーサリアムのアドレス保有者の変遷をグラフ化したものです。その傾きがかなり類似しており、着実にマスに向かっていることがわかります。インターネットの歴史に倣えば、あと10年で、世界のトークン保有者は10億人を超えるでしょう。

出典:https://a16zcrypto.com/state-of-crypto-report-a16z-2022/

しかしながら、Web3.0やNFTに対して「投機っぽい」「ただの流行りじゃないのか?」と懐疑的な目を向けている人も多いのではないでしょうか。僕自身、いまのWeb3.0、 NFTはお金の話が多く、正直好きではありません。このような現状では、Web3.0の “本質” が見えなくなってしまうのも当然だと思います。

だからこそ僕は、Web3.0の本質を伝えたい。また、Web3.0の現在の課題と解決策について、自分なりの考えをnoteに書きます。

起業したのは、クリプトの「冬の時代」だった。

僕は、Gaudiy(ガウディ)というブロックチェーン・スタートアップを、2018年5月に創業しました。当時は、ICO詐欺や数々の「仮想通貨」流出事件が勃発し、世界各国が仮想通貨への規制を強める「クリプトの冬」と呼ばれる時代でした。

引用元:https://twitter.com/ro_mi/status/1480894258655940608?s=20&t=I_3HSkgqoO5FNgUuW3FTDw

「Web3.0」という概念的なワードもなく、大家さんに怪しまれてオフィス用の賃貸すら借りることができずw、いまとは全く異なる市場環境でした。

そんな時代に、僕がブロックチェーン領域に足を踏み入れたきっかけとなるサービスがふたつあります。トークン報酬がもらえるブログサービス「Steemit」のトークンエコノミーと、最も初期のNFTサービスのひとつである「CryptoKitties」のNFT経済圏です。

そこで目の当たりにしたのは、トークンとコミュニティに集うユーザーが、プロダクトやその提供会社の魅力をあたかも創業者かのように熱く語り、問題を定義して、未来への共創をしている姿でした。そのような自律分散型のコミュニティを誰もが実現できるプロダクトをつくりたいと思い、2018年5月に、ブロックチェーン×コミュニティの領域で起業しました。

それ以来、理想的なファンエコノミーの実現をめざして、大学教授とともにファンを疲弊させない経済システムの設計を実証実験したり、Sony Musicとともに実用的なNFTの使い方を共同開発したりと、僕たちはブロックチェーンの”本質”をずっと追求してきました。

Web3.0時代の到来。あることへの違和感

そこにやってきたのが、Web3.0時代です。その到来は、ブロックチェーン領域にずっとフルベットしてきた僕らにとって願ってもないチャンスであり、追い風であることは間違いありません。

ただ同時に、いまのWeb3.0時代に対して違和感を覚えている自分もいます。それはブロックチェーン技術によって「ファン」が恩恵を受けるのではなく、「投資家」のマネーゲームになってしまっているという点です。

※投機目的ではなく、純粋にサービスを利用したり、そのコンテンツが好きなユーザーのことを、このnoteでは「ファン」と呼びます。

“ネクストディズニー” とも言われる人気NFTコレクション「Bored Ape」は、サル1体で数千万円という高値で売買されていますが、それを実際に買っているのは誰なのでしょうか? そのモチベーションは「好き」だからではなく、「儲かりそうだから」なのではないでしょうか。

「Bored Ape Yacht Club」の新たなメタバースはNFTの進化を示す2021年、NFT(非代替性トークン)に約3兆円が費やされた。良くも悪くも、NFTは次のフェーズへと入りつつあるようだ。japan.cnet.com

たとえ好きなアーティストがNFTを販売したとしても、投機価値を見込んだ人が高値で購入してしまうことで、本当にそのコンテンツがほしいと思っているファンが買えなくなってしまう。またファンがなんとかNFTを購入できたとしても、いまの投機性の強いマーケットでは価格のボラティリティが高く、ファンを疲弊させてしまいます。

エンタメは本来、子供から大人まで楽しめるものであるはずです。なのに、純粋にコンテンツを楽しんでいるコミュニティに資本主義を持ち込んでしまうことで、お金がある人しか楽しめない世界になっていく。もはやコンテンツ自体の価値ではなく、ステータスとしての価値が優位になってしまう。

このような「儲かるNFT」「投機的なWeb3.0」は本質的ではないと思うし、僕は嫌いです。

Web3.0の「本質」とはなにか

では、Web3.0の本質とはなんなのか。それは “カルト的な価値共創” と “なめらかな価値分配” の実現だと考えています。

いつの時代にも、カルト的な熱量をもって価値を創造する人がいます。それはエンタメに限らず、宇宙開発であったり都市開発であったり、多種多様です。エンタメはもっとも熱量が集まりやすい領域のひとつであり、好きな”推し”を応援する「推し活」は社会現象にもなっています。

しかし、Web2.0までの時代は、その熱量が創る価値貢献に対して正当に報いることができませんでした。それがWeb3.0では、「価値がある」「おもしろい」と思うものに人々が集まり、価値を共創し、その貢献に対して正当に還元する社会をつくることができる。これが僕の思う、Web3.0の本質です。

これは「資本主義」から「価値主義」への転換とも言えます。お金だけでは測ることのできなかった価値がきちんと評価・還元される世界。「Web3.0」を自分なりに定義するならば、“カルト的な価値共創” と “なめらかな価値分配” を実現する「プラグイン」です。

ここで強調したいのは、Web3.0は「手段」であって、それ自体に価値はありません。もっとも大事なのはミッション(目的)です。

たとえば「貧困をなくしたい」というミッションに対して、これまではNPOや株式会社が活動にあたってきましたが、Web3.0時代では「DAO(ダオ:Decentralized Autonomous Organization)」という新しい組織形態がもうひとつの手段として加わります。

「BTSファン経済圏」の先にあるもの──「NFT」から「DAO」へ

DAOでは、夢やミッションをもつ人と、応援する人々が価値を共創し、その恩恵をともに分かち合える。Web3.0は人類がより良い社会をつくっていくための強力なツールだと思っています。

Web3.0の課題とその解決策

とはいえ、まだまだWeb3.0には課題があります。ここからは、Web3.0の課題と解決策について、僕の考えを書いていきます。

1. Web3.0の投機性ーファンが報われる経済設計をー

ひとつめが、先に挙げたWeb3.0の投機性が強すぎるという点です。これを解決するには、ファンの経済圏に資本主義を持ち込まないことが重要だと考えています。いまのWeb3.0市場には「儲かるから投資しよう」という人々が多くいますが、このように金銭的なリターンを目的として市場に参入した人は、その魅力がなくなった途端に市場から離れていくリスクがあります。

出典:https://breadcrumb.vc/bootstrapping-web3-networks-the-limitations-of-token-incentives-4b57fa54486c

すると当然ながら価格のボラティリティが高くなり、本当にそのコンテンツを欲しているファンが手を出しづらくなってしまいます。

これに対する解決策は、以下の力学を経済圏に働かせることです。

「儲かるから投資しよう」<「好きだから投資しよう」

そのためには、ファンだけが楽しめる経済設計が重要です。

たとえばGaudiyは、2019年にファンの信用スコアをもとにトークンの売買価格が変動する設計Trust Economy Bonding Curvesを開発しました。これは、コンテンツの課金額やファンの熱量を変数にすることで投機筋の参入を防ぎ、ファンであるほど得をする設計になっています。

他にも、あくまでアイデアですが、ステーキング(トークンの保有)に対する報酬還元をトークンに限定せず、ファンにとって高い価値があるもので還元するような設計なども考えられます。

たとえば、ガンダム経済圏の「ガンダムトークン」があったとしたら、それをステーキングすることで、ガンダムトークンではなく「限定ガンプラ」がもらえるようなイメージです。

スマートコントラクトを活用すれば、外部の経済圏と繋がりながら、このようなファンが楽しめる理想的な経済設計をプログラミングすることができます。

余談ですが、イーサリアムの生みの親であるヴィタリックも、このWeb3.0の超金融社会化について懐疑的であり、2022年5月にそれらの課題と解決に関する論文を発表しています。これらは、オードリー・タンからも多くの支持を集めています。

出典:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4105763

2. Web2.5の思想ー中央集権と非中央集権のバランスー

次に、Web3.0の思想である完全な自律分散組織(DAO)では、スピード感をもってイノベーションを起こしていくことが難しいという課題です。

これに対する解決策は「Web2.5」を採用することだと考えています。

Web2.5とは、Web2.0からWeb3.0へと移行する “過程” にある概念ではなく、Web2.0とWeb3.0の強さと弱さを補った最適な概念です。

というのもWeb2.0では、中央集権的でイノベーションが生まれやすい反面、価値の分配も一部に偏ってしまう構造でした。一方、Web3.0では、参加者の納得感がある形で正当な価値分配がされやすい反面、イノベーションを起こしづらいという課題があります。

なぜなら、イノベーションは「多数決」からでは生まれないからです。多数決制を採用すると凡庸なアイデアになるとよく言われるように、DAO的な意思決定の弊害には、イノベーションを生むことの難しさがあります。

過去に仮想通貨のNEMとSymbolがハードフォークを実施した件も、DAOにおける意思決定の難しさを示しています。これは、短期的な収益のためにコミットする参加者が増えてしまった結果、最終的にハードフォークして方向転換せざるを得なかったことが背景にあります。

またブロックチェーンの始まりであるビットコインも、初期はそれに共感した少数の人々が組織化して、イノベーションを起こしました。

僕はこの「中央集権と地方分権のバランス」がとても重要だと思っていて、一部の中央集権性を残した「Web2.5」であるべきだと考えています。もっとも熱量のある人が意思決定をしてリーダーシップを取り、そこに共感する人々が貢献し、その人たちも還元されるようなやり方です。これ自体は、今後も人類にとって変わるべきでないと思っています。

たとえば、ワンピース本作のストーリー展開をユーザー投票で決定するという仕組みにしたら、おそらく尖ったアイデアにはなりづらく、つまらないものになってしまう。一方で、応援広告や二次創作、オフ会といった作品に貢献するファンの自律的な活動にはとても価値があります。作品づくりは作者に任せ、ファンの貢献にきちんと還元するのがWeb2.5のスタイルです。

3. “ファン国家”ーインフラと実用価値を拡充するー

さいごに、Web3.0の価値共創・価値分配をいかに運用しやすくするかが、今後のWeb3.0の発展において重要です。

Web3.0におけるコミュニティ、DAOを効率的に運用していくためには、そのエコシステムを支える「インフラ」の拡充が必要になります。たとえば貢献管理や報酬分配など、あらゆるサービスは今後、DAOのモジュールと化していきます。

出典:https://nobumei.substack.com/p/dao-b9f?s=r

その中でも、実用的な価値につながる「ユーティリティ」が重要です。価値には、社会的価値・感情的価値・実用的価値の3つがあると言われていますが、いくら社会的価値や感情的価値があっても、実用性がないとただの偶像になってしまうからです。

そのため、たとえばNFTを所有していることでローンが組めたり、不動産を借りれたりするNFT-Fiのような仕組みを導入して、NFTが所有のステータスだけでなく、実用的な「価値」を持つことがエコシステムには必要です。またこれは、先述したNFTの投機性を下げることにもつながります。

繰り返しになりますが、Web3.0はあくまで手段であり、そのツールを各所で拡充していくことで未来をつくっていくことができる。ノード的にDAOのモジュールをつくり、みんなで発展させていくべきものだと考えています。

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

いまのWeb3.0に対する世間的な認知は、「カネくさい」「よくわからない」というイメージが強いと思いますし、実際に多くの課題も存在します。ですが、Web3.0は使い方さえ間違わなければ、ものすごく社会的価値のある領域だと僕は信じています。

そのために必要なことをまとめると、以下の3点だと考えています。

1. ファンだけが楽しめる経済設計をつくる
2. 一部の中央集権性を残した「Web2.5」を採用する
3. 国家のインフラと実用価値を拡充する

Web3.0の本質は、やはり“カルト的な価値共創” と “なめらかな価値分配” を実現することにあります。 なので、Web3.0を投機や流行りものとして見るのではなく、社会をよくするような本質的な価値を探求し、Web3.0の発展を共創していきたいです。

補足:Gaudiyのこれから

Gaudiyは、今回のnoteで述べたようなWeb3.0のメインストリームで大きな挑戦をしています。本日、シリーズBの資金調達も発表しました。

Gaudiy(ガウディ)、シリーズBで25億円を調達。採用・組織拡大に注力。株式会社Gaudiyのプレスリリース(2022年6月1日 09時00分)Gaudiy(ガウディ)、シリーズBで25億円を調prtimes.jp

特設サイト:https://special.gaudiy.com/

今回調達した25億円は、スーパー大切に、ウルトラすぐ使いきります。それくらいのスピード感でないと、Web3.0時代に、世界で勝ちきれないと思っています。

Gaudiyが開発・提供しているのは、Web3.0と世界に誇れる日本のエンタメ領域を掛け合わせ、理想的なファンエコノミーを実現できる「Web3.0時代のファンプラットフォーム」です。

Web3.0の特徴である “拡張経済” は、カラオケや同人誌、コスプレなどの二次創作文化とも相性がよく、日本の文化的な強みも生かせます。Axie Infinityは元々無名のIPでしたが、トークン上場により時価総額8,000億円になりました。であれば、世界的に人気のある日本のIPは、単体で5兆円くらいを狙える可能性があると本気で思っています。

提供サービスの「Gaudiy Fanlink」は、集英社やアニプレックス社、Sony Music社、バンダイナムコエンターテインメント社をはじめとする多くのエンタメ企業様に導入いただき、好評をいただいています。しかし、壮大なビジョンに対して一歩ずつ、着実に近づいていることは実感していますが、、、まだまだ自分が描く世界観のたった1%くらいしか実現できていません

そんなGaudiyを共創してくれる仲間をめちゃくちゃ募集しています。これから誰もが知るようなビッグなエンタメIPとともに、世界で大きな挑戦をどんどん仕掛けていきます。ワクワクと挑戦が好きな人にはこれ以上にない環境だと思うので、もし少しでも興味があれば、ぜひカジュアル面談でお話ししましょう!

【原文はこちらから】

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