那覇で史上最大規模のIVSが開幕、国内外から1,700人が集結——今訪れているのは時代の転換点か、起業家の世代交代か

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開会の辞を述べる、IVS 代表の島川敏明氏
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、7月6〜8日に開催された、IVS 2022 NAHA の一部。

7日、那覇市内で「IVS 2022 NAHA」が開幕した。会場となったのは、昨年、久茂地小学校跡にオープンした「那覇文化芸術劇場なはーと」と、国際通りを挟んで歩いて5分ほどの距離にある HOTEL COLLECTIVE だ。前者が従来からのカンファレンス IVS のメイン会場として、また、後者は Web3 スタートアップを中心としたカンファレンス「IVS Crypto 2022 NAHA」の会場となっている。今回初開催となる IVS Crypto 参加者がプラスされたこともあり、今回の総参加者数は合計約1,700人と史上最大規模に達した。

IVS 2022 NAHA および IVS Crypto 2022 NAHA では、言わば、国際通りをジャックするようなアフターアワーイベントが公式、および、非公式のサイドイベントして展開される。前夜祭の昨夜は、国際通りから入った「むつみ橋商店街」の awabar okinawa(アワバー沖縄)を訪れてみると、多くの投資家やイグジットを果たした起業家が後進に泡酒を振る舞う姿が見られた。連日、屋台村で VC が参加者に酒や肴を振る舞ったり、ホテルのプールサイドでサウナイベントが繰り広げられる予定だ。

オープニングを飾った「どうなる世界」と題されたパネルディスカッションには、昨年、ESG ファンド MPower Partners を立ち上げたキャシー松井氏、起業家コミュニティおよびファンド「千葉道場」を主宰する千葉功太郎氏、連続起業家で現在はスペースデータとレットという2つのスタートアップをリードする佐藤航陽氏が登壇した。モデレータは、Business Insider Japan 編集長の伊藤有氏が務めた。

左から:伊藤有氏、キャシー松井氏、千葉功太郎氏、佐藤航陽氏
Image credit: Masaru Ikeda

冒頭、2022年2月からの半年で、市場の空気が一変したとの観測から話は始まった。松井氏は、2008年から12年以上続いたブル(強気)市場は終焉を迎え、今後、以前のような状況には戻らないが、しかし、不景気な状況になるわけでもない。むしろ、速すぎるスピードで投資や経営判断が迫られた、これまでの市場がリアルなものではなかったと振り返る。優秀な人材の獲得や他社を M&A するには好機で、起業家は自分の事業が nice to have ではなく must have な存在になるよう努力すべきとアドバイスした。

千葉氏は、2021年の国内 IPO が125社とコロナ禍にも関わらず順調に数を伸ばしていることを指摘。今年は上半期で26社と、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあって勢い落としているものの、正社員の転職率や、採用側の転職者受け入れ希望社数、および転職を希望する求職者数は2020年のコロナ禍の凹みから上昇に転じ、不況に対する不安が議論する中でも、人材需要は堅調に推移していることを指摘した。

佐藤氏は、IT 産業はもはや急成長産業ではなく成熟産業となり、世界の中心ではなくなったと指摘した。IT 分野においては、コンシューマ向け分野のデジタル普及から始まり、次にエンタープライズ向け、行政系向け、の順番に進んでいくので、投資家からは、むしろ、これまでの IT には無かった分野に視線を向けるべきだという。この数十年で GAFA の勝利が明らかになった今、次にもーメンタムを迎えるのは、佐藤氏も事業を営む宇宙開発の分野や、エネルギー問題や食糧問題が今後狙うべきテーマだと語った。

左から:キャシー松井氏、千葉功太郎氏、佐藤航陽氏
Image credit: Masaru Ikeda

佐藤氏は、もはや次世代を率いる起業家は、今の起業家の延長線上にはいないと言う。彼らは一人で何かを作り始める10代後半のクリエイターたちで、今までと違うパラダイムを作り始めていて、起業家の世代交代が始まるだろうと予見した。ここで重要となるのは unlearn(過去にとらわれない)の精神で、若い起業家たちと仲良くなるには、たとえば Zoom で、カメラをオンにして顔を出し、本名や肩書で自己紹介する、というプロトコルは機能せず、尊敬の対象にもならないことに留意すべきだと忠告した。

投資環境の変化についても議論された。次世代の起業家はもはや IPO を目指さない存在になるかもしれないが、当面のトレンドでは、日本からも東証ではなくアメリカでの IPO を目指すスタートアップを増えてくるだろう(Warrantee が今月 NASDAQ 上場した)。千葉氏は SPAC(特別目的買収会社)を使った米上場を投資先で始めていて、今後、日本のスタートアップにもこのスキームで米上場を促すケースを作りたいと話した。また、円安・株安の今、割安感を持つ海外投資家からの資金調達も検討してみるべきだと語った。

3人の締めの言葉を、以下にまとめておく。

  • 松井氏 …… 今回はリセットではなく(以前の社会に戻るのではなく)、次の時代にサバイブできるかが重要。ゼロから考えるチャンスだ。
  • 千葉氏 …… 学ぶべきは過去からではない。未来志向を持っている人に話を聞くこと。それをやりきった人が生き残れると思っている。
  • 佐藤氏 …… 先輩の背中を追うな。むしろ、後輩とか、自分から一番遠いところにいる人たちから学んでほしい。
那覇文化芸術劇場なはーとで。会場1F のスタートアップ出展ブースエリアを眺める。
Image credit: Masaru Ikeda

つまるところ、これまでの常識は一旦捨て去るべき、ということのようだ。佐藤氏は、この会場に集まっていることこそが、起業家が持つ既成概念に囚われていると語り、会場の笑いを誘った。むしろ、我々が学ぶべきは、メインの IVS の開かれている那覇文化芸術劇場なはーとよりも、IVS Crypto の開かれている HOTEL COLLECTIVE の方ではないか、との提案に登壇者らは頷いていた。国際通りを挟んで、こちらとあちら側で起業家には新旧の隔たりがあるのだろうか。Diversity & Inclusion の精神で双方の融合が図れるのか。今日明日で探ってみたい。

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