世界のTOP50タイトルから見えるブロックチェーンゲームの現在地と未来予測

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本稿はWeb3対応のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を提供する Gaudiy でCrypto関連のリサーチやカルチャー開発を担当している藤原良祐氏によるもの。ブロックチェーンゲームの全体像がわかる内容だったのでご本人の許諾を得て一部を転載させていただいた。原文はこちらから。ご本人のTwitterアカウントは@rfuj1wara234

こんにちは。Web3スタートアップのGaudiyという会社で、Crypto関連のリサーチやカルチャー開発を担当している藤原( @rfuj1wara234 )です。さまざまな分野で活用されているブロックチェーン技術ですが、なかでも特に盛り上がっているのが「ゲーム」です。

日本でも歩いで稼げるMove to Earnアプリ「STEPN」が話題になりましたが、ブロックチェーンゲーム市場は、CAGR(年平均成長率)100%、2025年までに$50Bの市場規模になると予想されています。

Image Credit : https://naavik.co/deep-dives/market-sizing

一方で、「ポンジスキームなのでは?」「おカネくさいからゲーム好きとしてはやりたくない」など、疑問の声も少なくないブロックチェーンゲーム。そこで本noteでは、国内外のブロックチェーンゲームのリサーチをもとに見えてきた、業界の全体像や課題、今後の方向性などをお伝えできればと思います。

はじめに私個人のスタンスを明示しておくと、詐欺性のあるブロックチェーンゲームに対しては否定的であり、ユーザが安心・安全で楽しいゲーム体験を得られることが何よりも大事だと考えています。

一方で、業界の一側面だけを見て、ブロックチェーンゲームのすべてを否定することもまた乱暴であり、将来的に巨大なポテンシャルを持つ市場を壊すことにも繋がりかねません。そのため、このnoteではできる限りファクトベースで、ブロックチェーンゲーム業界で何が起きているのかについて考察していきます。

また、私は投資や法律の専門家ではないため、例によって以下の2点に留意して読んでいただければと思います。

  • NFA:Not Financial Advice(投資助言ではありません)
  • DYOR:Do Your Own Research(投資の際は必ずご自身で調査ください)

1.ブロックチェーンゲームを分類してみる

まずは、ブロックチェーンゲームに関連する用語について整理したいと思います。

ブロックチェーンゲーム業界では類似の概念・名称が乱立しており、私がキャッチアップを進める中でも非常に混乱しました。実際には混同して使われていることも少なくないのですが、本noteでは下記のように定義したいと思います。

ブロックチェーンゲーム関連用語のベン図(筆者作成)

ブロックチェーンゲーム

今回紹介する用語の中で一番広い概念であり、その名の通りブロックチェーンの要素を組み込んだゲームのことです。実質的には以下で説明するNFTゲームやGameFiとほぼ同義で使われていると思います。あえてベン図で整理してみると、左側に「???」と書いた通り、NFTを使わないFT(ファンジブルトークン)のみのブロックチェーンゲームもありえる気がしてきます。こちらについては本noteの最後、4章で詳しく触れることにします🙏

NFTゲーム

ゲーム内アイテムをNFTとすることで、ゲーム内から資産として持ち出したり、二次流通させることができるゲームのことです。元祖NFTゲームとも言える「CryptoKitties」は、猫のような多数のキャラクターをNFTとして所持することができます。また、交配することでレアなキャラクターを手に入れたり、二次流通させることで利益を得ることができるようになり、そのメカニクスの新規性から、ゲーム界に衝撃を与えました。

元祖NFTゲーム CryptoKitties

国産NFTゲームである「My Crypto Heroes」のキャッチコピーである「ゲームにかけた時間もお金も情熱も、あなたの資産となる世界」は、ユーザ目線での価値をわかりやすく表現しており、とても素敵だなと思います。

NFTゲームの価値をわかりやく言語化した(旧)My Crypto Heroes

GameFi

その名の通り、GameとFinance(特にDeFi:分散型金融)を融合させた概念です。実際には次項のPlay to Earnとほぼ同義に使われることも多いのですが、Digital Entertainment Asset社の山田耕三さんの定義が非常に本質的だと感じたので引用させていただきます。

GameFiとは、ペイメントとガバナンスの機能を持つトークンを用いて「ゲーム経済圏」を柔軟にコントロールし、ステーキングによりDAO(自律分散型組織)に代表されるような「ユーザーが自発的に動く経済圏」を創ること

参考記事

上記定義はCryptoにあまり親しみのない人には伝わりづらい部分もあるかもしれませんが、既存のゲームとは異なる、柔軟でオープンなメカニクスが存在することが伺えます。これは本noteで伝えたいことに密接に関わるので、4章で噛み砕いて説明したいと思います。

Play to Earnゲーム

Free to Play(基本プレイが無料)やPay to Win(課金するほど有利になる)のゲームとの違いとして、ゲームプレイを通じて金銭的報酬を獲得することを売りにしたゲームです。「Axie Infinity」というポケモンライクなRPGが東南アジアを中心に大ブームとなったこともあり、このnoteを読んでいる皆さんなら聞いたことがあるのではないでしょうか?

理屈上はNFTゲームも獲得したNFTを売却することで金銭報酬を得られるのでこれに含まれる気がしますが、基本的にゲームプレイに対して報酬としてのファンジブルトークンを得られるゲームを指すようです。

また、初期参入時に高額なNFTを購入しなければいけないイメージが強いですが、ユーザベースの拡大を狙ってかFree to Playモードを開放しているタイトルも増えてきています。(ただし、その場合は報酬は得られない場合がほとんどです。)

元祖Play to Earnゲーム Axie Infinity

X to Earnゲーム

Play to Earnゲームの亜種として、日常生活のあらゆる活動にトークンインセンティブを与えるアプリケーションのことです。冒頭で触れたMove to Earnアプリの「STEPN」の他、Sleep to Earn、Learn to Earnなど、様々なコンセプトが検討されています。

一方で、歩くだけで稼げるなんてポンジスキーム(ねずみ講)なのではないか?との指摘が出るなど、物議も醸しています。このあたりの課題については3章で詳しく考察したいと思います。

日本でもヒットしたMove to Earnゲーム STEPN

Play & Earnゲーム

Play to Earnゲームが投機的なインセンティブでユーザを集めてしまった反省からか、最近ではPlay & Earnゲームと名乗り、ゲーム性と金融性の両立を目指すタイトルも増えてきました。Play & EarnゲームがPlay to Earnゲームより面白いという保証にはなりませんが、方向性としては歓迎すべきことなのではと考えています。

2.DappRaderトップ50タイトルから掴む最新トレンド

さて、ブロックチェーンゲームにかかわる基本概念を理解できたところで、最新動向を俯瞰してみましょう。私自身、リサーチ前はモンスターバトルやRPG系のゲームが多い印象を持っていたのですが、実際にはどのようなゲームが流行っているのでしょうか?

これを検証するため、 DappRaderのBlockchain Games の2022/07/01時点での上位50タイトル(30日間User数ベース)をリサーチしました。タイトル、チェーン、User数はDappRaderから、運営体、国籍、ゲームジャンルについては公式HPやWhite Paperから調べ、Notionデータベースを作成しました。

実際に流行っているブロックチェーンゲームを1件1件見ていくことで、調査前の印象とは異なる実態が浮かび上がってきました。

まず、ゲームジャンルとしてはモンスターバトルやRPGだけでなく、ストラテジーゲーム、メタバースゲーム、農業系ゲーム等々、実に様々なタイトルがプレイされていることがわかります。その中でAxie Infinityはトップに君臨しており、ブロックチェーンゲーム業界におけるブランド力の高さが伺えます。(1章で取り上げたSTEPNは、DappRaderではBlockchain Gameカテゴリに含まれていないようです。)

また、1章のブロックチェーンゲームの概念整理を当てはめると、ほぼすべてのタイトルがPlay to Earnゲームであり、純粋なNFTゲームは見られませんでした。ここからもPlay to Earnゲームがデファクトスタンダードになっていることと、それが非常に革新的なメカニクスであったことが伺えます。

(ただしこの傾向は、DappRaderのブロックチェーンゲームカテゴリの選定基準に影響を受けている可能性はあります。実際、PFP NFT(SNSアイコン用のNFT)プロジェクトの中にもゲーム的な要素を持つものがあり、垣根は非常に曖昧です。このあたりもこの業界を理解することの難しさにつながっています。)

次に開発主体の所在地ですが、こちらは欧米、とくにシリコンバレーの一強とはなっておらず、ベトナムやフィリピンといった東南アジア勢が善戦しているのもWeb2とは異なり印象的です。

最後に対応チェーンについては、WAXやHiveといったゲーム特化型チェーンや、ガス代の安いPolygonやBNB Chainが多くランクインしており、コレクティブルNFTでブランド力の高いEthereumやSolanaがあまり見られない点が特徴的です。

このように多種多様な特徴が見られましたが、トレンドとしては3つに集約できるのではと思いました。それぞれ具体的なタイトルも合わせて見ていきたいと思います。

トレンド1-1:ゲームの金融化(ハイクオリティGameFi)

まず、ブロックチェーンゲームの大半のタイトルは、ゲームをコアに据えてそこに金融要素を付け足していく「ゲームの金融化」タイプのGameFiであると言えます。その中で、ブロックチェーンゲーム業界ではゲーム性の向上に対する課題意識が叫ばれており、ハイクオリティ化していくタイトルが複数見られました。例えば、ポケモンライクなハイクオリティRPGであるIlluviumは、このトレンドの代表格として注目を集めています。

ポケモンライクなハイクオリティRPGであるIlluvium

トレンド1-2:ゲームの金融化(中毒性カジュアルGameFi)

続いては、「ゲームの金融化」タイプの中でもIlluviumとは逆に、思い切りカジュアルゲームに振り切ったタイトルです。リサーチ前は私もあまり意識できていなかったのですが、今回リサーチした中でかなり多く見られました。

例えば、Roblox風のかわいらしいビジュアルで、中毒性のあるMMORPGを楽しめるTitan Huntersなども一定のユーザベースを抱えています。

中毒性のあるMMRPGを楽しめるTitan Hunters

また、単一のゲームタイトルではなく、スーパーカジュアルゲームを多数取り揃えたGametaのようなゲーミングプラットフォーム、オンラインアーケードゲームも複数見られました。このことも、GameFiとカジュアルゲームの相性の良さを物語っていると思います。

複数のカジュアルゲームが集まるゲーミングプラットフォーム Gameta

トレンド2:金融のゲーム化(ゲームライクなDeFi)

最後に、ゲームの金融化と真逆の方向性で、金融をいかにゲーム化するか?という取り組みも複数見られました。

例えば、DeFi KingdomやDeFi Landは、タイトルからもDeFiを強く意識していることがわかりますし、NFTをロック、ステーキングすることで稼ぐなど、ゲームの根幹に金融性を据えています。このトレンドは、DeFiユーザの裾野を広げ、非投資ユーザの資金を投資マネーとして取り込むことにも一定貢献していくと思われます。

BRIDGE編集部註:この後の『3.ブロックチェーンゲームのマスアダプションに向けた課題』はこちらから

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