宮崎・青島5,500坪に現れた「NOT A HOTEL」現地レポート、スマート化の理由とホテルとの切り替え(2)

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NOT A HOTELの敷地前にあるマンゴー専門店。地域に溶け込む形で建設されている

空港から15分のロケーション

前回からのつづき。今回、筆者は現地に東京都内から向かったのですが、違いを調べるために行きはJAL、帰りはLCCというルートを試してみました。まず往路ですが、羽田からの宮崎便で、宮崎空港からはタクシーで15分ほどの距離です。運賃はJALやLCCで幅がありますが、片道でタクシー含めて1.5万円から3万円といったところでした。かかった時間は羽田・成田共にタクシー含めて現地まで2時間ほどなので、都内の方であればドアツードアで3時間から4時間ほどでしょうか。

宮崎ブーゲンビリア空港からタクシーにゆられて15分。青島神社前と伝えればOK

空港からタクシーで15分、穏やかな風景を抜けると青島神社入り口、参道に到着します。NOT A HOTELはその参道の中ほど、マンゴー直売所の前方に広がる約5,460坪(ホテルは約750坪)の敷地内に建てられていました。ここはかつて「橘ホテル」が建っていた場所で、閉館してから約30年間ずっと空白地だったそうです。地域貢献の側面については濵渦伸次さんのインタビューの中で記述するとして、とにかく雰囲気はまさに南国リゾートといった面持ちです。中心にはこの場所を印象づけるレストラン棟「LDK」が建っていて、周辺を歩くと参道の並びには海の家やビーチ、そのさらに奥には青島神社の鳥居が待ち構えています。

敷地内にはビーチを一望できるラウンジ、バーベキューなどが楽しめる屋外コーナー、サウナやプールなどの設備が充実していて、リラックスはもちろんですが、オフサイトで集まってちょっとしたチームミーティングしたりするのに最適そうな環境でした。

完全にオープンな場所なので、どんな人でも自由に出入り出来ます。というのも、中心となるLDKがこの地域のレストランとしての運営を指定されており、地域貢献施設的な役割もあるからなんですね。取材中もレストランを訪れる人が店内を覗く様子があり、賑わい創出に一役買うことは間違いなさそうです。ただ、本当に自由に出入りできるため、セキュリティについてはかなりの台数のカメラが設置されているという説明でした。

敷地内のバーベキューコーナー。オフサイトミーティングにぴったり

濱渦さんはロケーションの設定として、空港や主要駅から概ね30分以内に到着できる場所という考えを持っています。実際に移動してみた印象でもストレスは感じなかったのですが、宮崎というローカル特有の事情として、タクシーでクレジットカードが使えないという場面に遭遇してしまいました。NOT A HOTELそのものはキャッシュレスですが、その過程では注意が必要になりそうです。

チェックインカウンターがないホテル

メインダイニングとなるLDK

ホテルに到着してまず、真っ先に気がつくのがチェックインカウンターの存在です。これがないんですね。

NOT A HOTELは「ホテル」としての利用が可能な分譲別荘です。利用するためにはオーナーがホテルとして貸し出す設定にするか、NOT A HOTELが持っているホテル分の空室を予約するしかありません。年内はオーナーのみ、相互利用の形で提供されることになっていて、一般の予約は12月から(利用は年明けから)を予定しているそうです。なお、予約は全てアプリかウェブで、現時点で他の宿泊サイトを利用した予約は予定していないというお話でした。

相互利用したいオーナーやホテル利用したい一般客はこのアプリから予約をして、鍵を受け取ります。もちろん、この鍵は物理的なキーではなく、アプリによるスマートロックになります。

NOT A HOTELのスマート化、狙いは「体験の共通化」

最上位客室のMasterPiece。一棟丸ごと買うと7億円

ではいよいよ客室のレポートです。

開業前、濱渦さんにこのホテルの話を聞くと必ず一回は「このホテル、スイッチないんですよね」という解説をもらっていました。それだけに本当にスイッチなくて困らないの?という意地悪な視点で内覧に臨んできたのですが、結果は納得感のあるものでした。

まず、実際の部屋に入ると人感センサーが働いて照明が自然に灯ります。その後、部屋に入ると大きめのiPadが備え付けてあり、そこで一通りの操作が可能になっています。シーリングファンやエアコン、照明、テレビ、音響、床暖房にサウナ、水風呂と住環境を支える操作はほぼ全てここに集約されています。全てシステムにおまかせというオートモードも設定されているので、あまり何も考えず快適な環境を用意してくれるようです。

スマートコントロールのiPad。埋め込まれているタイプとは別に客室に備え付けも

一方、全部のスイッチがないかというとそうではなく、例えばシャワーのボタンや洗浄器付きトイレ、キッチン周りは慣れ親しんだボタンが使えるようになっていました。備え付けてあるミニコンビニはまだ開発途中といった感じで、決済はここから実施するのですが、例えばICタグなどをつけて利用したら自動的に決済が完了する、といった仕組みはこれからというお話です。

さすがにシャワーやウォシュレットはボタンがありました

では答え合わせです。お部屋にスイッチがないことの利点はなんでしょうか?

正解はどこでも同じ体験で操作できる、という点です。NOT A HOTELはオーナーの部屋以外にも「ホテル」としての相互利用が可能です。今回の内覧でも最上位のMasterPieceというお部屋とSurfというお部屋の二つを見せてもらったのですが、いずれも操作類はiPadを探せばよいのですね。

ホテル宿泊のあるあるに「このスイッチどこが灯るんだろう?」というものがあります。こういった迷いをなくすにはスイッチそのものをなくしてしまえばいいわけです。スターバックスやWeWorkが世界どこでも同じ体験を提供しているのと同様に、NOT A HOTELもまた、様々な物件をシームレスに利用できる体験を構築しているのです。

部屋のコンビニ商品は将来的にICタグ管理も検討中

ただ、やはりiPadに全てが集約されているので、例えばシステムが落ちてしまったり、そこまでのことが起きなくともタブレットが壊れれば困ったことになります。この辺りのバックアップについてお聞きしたところ、システムの冗長化と、問題が発生した際にアプリからチャットで尋ねることのできるサポートセンターでの対応を用意しているとのことでした。実際にIoT関連の開発はフィジカルな確認が必要なため、開発チームのみなさんはここ1カ月、青島の建設に合わせて泊まり込みということで、本当にお疲れ様でした。

気になるホテルと別荘の切り替え

レポートの最後に一点、これは非常にマニアックなポイントだったのですが、ホテルと別荘を切り替えた時の「私物」についてどうなるか聞いておきました。前述の通り、年内はオーナー同士でお部屋をチェンジすることが可能になります(ホテル利用に切り替えた場合)。

その際、私物は「オーナーズクローゼット」という専用のスペースに入れることになります。ホテルとして提供する際、アプリでチェックインした人を判別し、所有者以外の場合はそこが開かないように設定される、という仕組みです。ロックだけでなく物理的な鍵も付けられていました。NOT A HOTELは12カ月分割で購入することもできるので、このクローゼットは12個に分割されており、所有数に応じて利用できるそうです。

ただ、本当にロッカーという感じで、そこまで大きく物を収納できるわけではありません。ホテルに切り替えた際、洗面所に私物が残っていたとしてそれをどうするのかという質問については「個別に対応」とのこと。では、最後は濱渦さんのインタビューです。彼の地元でもある宮崎にNOT A HOTELを建てたことで見えてきた地元への貢献、地方活性化の可能性についてもお伝えします。

次:僕らは別荘を民主化するーーNOT A HOTELの地域貢献インパクトと「NFT会員証」の手応え(3)

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