#21 オンチェーンならではのソーシャルグラフ 〜Shugo & Kohei × ACV唐澤・村上〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

今回はサンフランシスコを拠点にWeb3スタートアップを創業された若手日本人起業家のお二人がゲストです。

永田公平さんは、Intex CoopというDeFiインデックスファンドのDAOで日本チームのリードを担当され、現在はDAO向けの報酬設計ツールを作りながら、Web3コミュニティ「和組」の運営や、「This Week In DAOs」というメディアを運営されています。辻周悟さんは、ブロックチェーン上の活動をベースに独自のメタバースを構築できるWeb3プロジェクト「Phi」を立ち上げられました。

前半ではまず、辻さんの立ち上げられた「Phi」について、詳しく聞いていきたいと思います。

ポッドキャストで語られたこと

  • 独自メタバースを構築できるプロジェクト「Phi」とは何か
  • あらゆる情報がつまびらかになるWeb3では、積極的に見せびらかす情報を選べるようにすることが重要
  • ビジュアル要素をオンチェーンアクティビティに適用すれば、ゲームをやっている感覚で、クリプトのアクティビティに詳しくなれる

辻:去年の8月からサンフランシスコにいます。当初は交換留学で来ていて、奨学金ももらったりしていたんですが、その頃から現地でクリプトがすごく流行っているのを知って、「これは大きな波なんだな」と痛感しました。

まだまだ未開拓な領域だったので、若手で取り込むならこの分野かなと思って、ミートアップへ行ったりとか、いろんなカンファレンス行ったり、少しずついろんなアイディア出して小さくプロジェクトをやったりして、最終的に今年の1月に会社を登記しました。

1月に開催されたETHGlobalのハッカソンでENS(Ethereum Name Service)から賞をもらいまして、その後、3月に開催された「BuildQuest」というメタバース系をテーマにしたハッカソンでも、IPFSとCovalentなど からスポンサー賞を受賞しました。

最初3人くらいのCo-Founderでスタートして、今はオンチェーンアクティビティ、つまりブロックチェーン上でのアクティビティをベースににしたメタバース空間みたいなものを作っています。

簡単に言うと、ENSという 自分の長ったらしいウォレットアドレスをshugo.ethのように、分かりやすく名前解決できるサービスがあるんですが、今だとオンチェーンアイデンティティのような、新しいアイデンティティの概念とすごく紐づきやすいんじゃないかと言われています。

僕らはそれをメタバースの住所と解釈して、shugo.ethみたいなENSドメインがメタバース上の住所として機能するのではと考えています。そして、メタバース空間上で自分のウォレットアクティビティ、つまりスワップでも何でも、オンチェーンアクティビティなら何でもトラックできて、それがいろんな形のオブジェクトに変わっていって、クレームして、自分の街を作っていくような世界観を作っています。

唐澤:ありがとうございます。辻さんの Phi は、僕の理解が正しければ、ウォレットアドレスを使ってメタバース上の経度緯度みたいな場所を決めて、そのウォレットに紐づけるというもの。何の NFTを 持っているかとか、何のトークンを持ってるかとか、そういうアクティビティに基づいて、例えば家が建てられるとか、森が立てられるといったサービスですよね?

辻:かなり近いですね。Decentraland、Sandbox、NFT Worldsみたいなものが多分メタバースランド系の主流だと思うんですが、今はBAYC(Bored Ape Yacht Club)もやったりしていますが、こういったサービスへの参加障壁を大きく減らしたいと思っていました。Web3 は、よりオープンでインクルーシブなカルチャーがあると思うんですが、そういったものを作れないかと考え、皆が持ってる既存アセットをベースに、最初は無料で始められるようなモデルを考案したんです。ソシャゲっぽいですね。そういうモデルを他社とは違うアプローチでやってみたかったんです。

唐澤:なるほど。土地を買わせてポンジっぽい形になってるものも世の中には結構多いと思うんですが、辻さんとして、どういうユーザーのモチベーションを想定されていますか?

辻:僕らの場合は、それぞれのアイデンティティに紐づけていて、かつチートできないんです。10,000Ethでクレームできるオブジェクトだとしたら10,000Eth無いといけないので、ある意味、自分の実績を見せびらかせるような場所になってくると思うんです。今だとDegenScoreという、「あなたは、どれだけDegenか」というのを測るプロダクトがあります。

リスクを取って、ヤバいトークンにどれだけお金を突っ込んだかを測るもので、「How Degen you are?」を勝手に計算して出すプロダクトで、すごくバズってるんです。クリプトの人たちは、こういうのが好きなんです。結局、NFT も同じだと思っていて、「俺、こんな NFT 持ってたんだぜ」とかアピールするんです。

それこそ、CryptoPunksのNFTのトークンIDで 6529 や 4156 は有名なTwitterのインフルエンサーですが、彼らはなぜあれをやっているかというと、「俺は昔からCryptoPunksを持ってたんだぞ」というのを示したいわけじゃないですか。「どれくらい僕らが昔から参入してたか」みたいなことを皆気にするんですよ。

唐澤:それ、村上もよく僕にマウントとってきますよ。「俺は2017年から始めたけど、お前は去年だろう」「新人だろう」とかって。

村上:本当に疲れますよね。イベントに行っても、皆それを言うのが自然になってる感じは確かだから。

辻:全部オープンな情報なので見られてしまうとは思うんですが、それでも見せびらかすものは選びたいと思うんです。僕らのなら、見せたいオブジェクトだけを置けるんです。

唐澤:自動的にオブジェクトが生成されるんじゃなくて、クレームするっていうところがキーなわけですね。

辻:それぞれにキュレーションさせるところが肝で、かつ、僕らのは最初は独立したランドとスペースから始まるんですが、それを自分でくっつけて、自分の街を作ったりできるんです。友達のランドを持ってきたりとか、好きなDAOのランドを持ってきたりとか。

ENSは個人だけじゃなくてコミュニティも所有してたりするので、自分のソーシャルグラフがランドとして表現されるようになってきます。それに、どのランドが何のオブジェクトを持っているかの情報はオンチェーンに刻まれているので、Phiのゲームデータは誰でも読みにいくことができます。

画像データは今のところ分散型のストレージを使っていますが、そこからメタデータを持ってくればフロントエンドで描写できます。そうすると、生きた世界として、クリプト、Ethereumの現状を可視化するような形で、いろいろな人の土地が繋がって表現されていきます。こうなっていくと、よりSNSっぽくなっていって、が出てきたりします。

唐澤:そのサービスのユーザー側のニーズや課題は、自己顕示欲や、友達と繋がっていたいというようなソーシャルネットワークに近いようなものなんでしょうか。友達間のリレーションを実現して潤滑油的に少し橋渡ししてあげるみたいな感じなのでしょうか。

辻:まさにそうですね。あと、NFTが流行った理由は、トークンとかと違って結構分かりやすいからかなと思っていて、そういうビジュアル要素を、いろいろなオンチェーンアクティビティに適用すれば、皆がちょっとゲームをやっている感覚で、いろいろなクリプトのアクティビティを触って詳しくなれると思っています。

唐澤:ちなみにこれユーザーからお金をもらうんですか?マネタイズはどうされているんですか?

辻:今考えていて、いろいろな方法はあると思うんですけど、純粋にオブジェクトを売るみたいなことはできるんです。ただ可愛いから売る、というのもできると思っているし、あとは後々カスタマイズの機能に関してはちょっとSaaSみたいな感じで、カスタマイズ機能に対して課金ポイントを作るというのもできると思います。

唐澤:エコシステム全体にベネフィットがあるし、「ここが入り口なんだ」と言えれば良いんですよね。

辻:そうなんです。個人のアイデンティティに寄与しているので、フラットなポジションでいろいろなプロトコルとポジティブサムな関係を作りやすいのは、お得なポジションかなと思っています。そういう風に各web3プロトコルへのオンボーディングチャネルとして機能していく方向性もあります。ゲーム路線を強めていくのか、マーケティングチャネルとしての方を強めていくのかは、ユーザー反応を見て決めようと思っています。

次回へ続く)

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