「Cansell」を閉じた山下氏、事業者向けキャンセル請求DX「Payn」で再起——ジェネシアVとGazelleから9,000万円を調達

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Cansell 創業者の山下恭平氏
Image credit: Payn

今年3月、約5年半にわたって事業を展開してきた宿泊権利売買「Cansell」のシャットダウンを赤裸々に語ってくれた山下恭平氏。倒産や清算の話が大々的に語られることが少ない日本のスタートアップシーンでこの記事は反響を呼び、既存投資家やスタートアップの経営者からは、山下氏に次のポストのオファーが数多く舞い込んだと言う。山下氏は、「一度失敗した起業家がどうなるか身をもってわかった。「結構安心して大丈夫だぞ」というメッセージを、起業を考える人たちに情報発信していく」と意気込む。

しかし、山下氏はそうしたオファーを結果的には全て断り、自分で事業を新たに立ち上げることを決めた。「このままでは終われないという気持ちが大きかった」と、Cansell シャットダウンからの約半年間を山下氏は振り返る。山下氏が再起に決めたのは、Cansell の際に手がけたキャンセル料に関わるものではあるが、今回は、消費者側ではなく、逆の立場である事業者のペインを解決しようとするものだ。その名も「Payn」。今日、そのサービスがβリリースを迎えることとなった。

Payn は、ホテルやレストランのキャンセル料請求の業務をデジタル化するサービスだ。ホテルなどでは予約した宿泊客がノーショー(来訪しない)だった場合、料金を現地支払にしている客からはキャンセル料を徴収するすべが存在しない。レストランでもまた同様だ。カード決済で予約を受け付けている場合は徴収できる場合もあるが、これはどちらかというと消費者よりも事業者側優位の立場に寄った設計であるし、クレジットカードの事前オーソリ(与信)の状態次第では、クレジットカード経由での請求ができない可能性もある。

ホテルや店は、別にキャンセル料で儲けるつもりはなく、ルールはルールという考え方。仮にキャンセルされても、別な日で再予約してくれたらキャンセル料は取らないとか、また来れる時に来てほしい、と考えている。ただ、これまでは業務が立て込んでいる中で、キャンセル料の徴収をスムーズに行える方法が無かった。それをスムーズにデジタルで対応可能な方法を提供したことで、すごく喜ばれている(山下氏)。

「Payn」
Image credit: Payn

Payn は、サービサー(債権回収代行事業者)ではない(日本でサービサー業務の営業には、法人の取締役に弁護士資格を持った人が必要)。あくまで、ホテルやレストランなどの事業者の業務を、デジタル的に処理することを支援するサービスだ。現在のところは、キャンセル料の徴収にあたり、ノーショー客に SMS やメールで連絡し、複数の決済手段でキャンセル料の支払を促すというものだが、請求一元管理や自動消込のほか、将来は再訪を促すクーポン発行したり、弁護士に業務を依頼したりする機能の追加も検討中だ。

山下氏が目指すのは、事業者の消費者のフェアな関係。しかし、事前予約決済は事業者にとって有利だが消費者にとって不利、一方、当日現地決済は消費者にとって事業者にとって不利だ。マーケットプレイスで言うところのエスクロー的な存在として、ホスピタリティ業界では何が正しいのかはまだ答えが出尽くしていない。Cansell もそのような課題から生まれた産物の一つだったわけだが、今回の山下氏の新事業はどうだろうか。

そうは言っても、キャンセル料を心から支払いたい人はいない。払う側も気持ちよく支払える可能性を追求していきたい。(山下氏)

なお、Payn は5日、シードラウンドで9,000万円を調達したことを明らかにした。このラウンドには、ジェネシア・ベンチャーズと Gazelle Capital が参加した。同社では、今回調達した資金をもとに、正式版リリースに向けたプロダクト開発や営業、サポート体制構築のための人材採用を進めていくとしている。明らかになった山下氏の新たな挑戦を BRIDGE では引き続き取り上げていきたい。

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