AIが動画を理解して編集支援する「Capsule」/GB Tech Trend

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475万ドルの調達発表した「Capsule」(Image Credit: Capsule)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

2月14日に企業向け動画編集サービス「Capsule」が475万ドルの資金調達を発表しました。同社はAI技術を活用した動画編集機能「AI Studio」を中心にサービスを展開しているスタートアップで、自動字幕作成、テンプレート適用、アニメーション効果機能を手軽に利用できます。

Capsuleは、マーケティングやPR担当者などで、動画編集の経験のない人向けのツールとなっています。最も特徴的なのがAI編集機能「AI Studio」で、動画内容を自動で要約した上で、視聴者を飽きさせないように適切なアニメーションを挿入してくれます。AdobeのAfter EffectsやPremiereのようなツールで動画素材を切り出して繋いだりするような簡単な編集作業は数クリックで完了し、AI Studioが自動的に要約を行うため、短時間で動画内容を視聴者へ理解させられることに繋がります。最近のReelトレンドの乗っかる形で、手軽に短尺動画へ落とし込むことができる、というわけです。

同社が前回のラウンドで200万ドルの調達をした際は、ブランド向けビデオQ&Aプラットフォームとして提供価値を定めていましたが、現在はAI編集機能まで拡張させています。ただし、Q&Aプラットフォームの機能は顧客や従業員が動画を投稿しやすいような録画インターフェースとして十分に活かされており、どのチャネルからでも動画素材が素早く投稿できる設計になっています。

さて、やはり注目はChatGPTで脚光を浴びているAIによる生産性文脈です。

なかでも初心者向け動画編集領域でAdobeに買収された、クラウド動画編集サービス「Frame.io」が競合として挙げられます。Frame.ioは、動画制作のワークフローを最適化するためのプラットフォームであり、チームがクラウド上でコラボレーションすることを可能にしました。ビデオのアップロード、リアルタイムのコメント、フィードバックの共有、バージョン管理、承認、配信などを一元的に管理できます。Frame.io登場までは、Adobe After EffectsやPremiereは単独のアプリ利用に閉じていました。この課題をクラウドプラットフォームによってサクサクと編集したり、コメントできるようにしたのがFrame.ioです。同じくAdobeに買収されたFigmaはまさに同じ市場価値を2次元のデザイン・ホワイトボード文脈でこれを再現しています。

この動画制作コラボレーションに加え、AIによる高速編集のサービス価値を加えたのがCapsule、ということになります。AIを活用した競合は他にもいます。

累計調達額が1億ドルに及ぶPodcast編集ツール「Descript」は、音声領域で編集ツールの確固たる地位を築いています。オーディオをテキストに変換するために、音声認識による機械学習アルゴリズムを使用していて、ユーザーは音声ファイルのあらゆる部分をテキストで表示し、編集することができます。

また、音声認識エンジンを使用して、特定のワードが発言された場所を自動的に検出する「Overdub」という機能が人気です。同機能を使用すると、テキストで入力した内容を、発話者が発言しているかのように音声へ変換し、テキストのみで音声追加・編集が可能になります。

さらに音声アバターのライブラリーから素材を引っ張ってきて、該当アバターにテキスト内容をおしゃべりさせることもできます。こうしたAIを活用したPodcast編集で急速な成長を遂げてきたのがDescriptで、同社は動画編集の領域にもサービス拡大させています。Capsuleはブランド企業向けの動画編集ツールとしてサービス成長を目指しますが、企業にいる初心者動画編集者が、どの程度動画に触れる機会があるのかによって今後の成長速度が左右されそうです。

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