プレスリリース配信を手掛けるPR TIMESは3月28日、INCLUSIVEから受託開発を手掛けるグルコースの全株式を取得し、完全子会社化することを公表した。これに伴いPR TIMESグループは新規事業プロダクト開発や既存事業リニューアルに特化した受託開発事業を開始する。株式の取得にかかった費用は2億3,800万円。株式譲渡実行日は3月31日を予定している。株式取得によりグルコースが連結子会社となる。
グルコースの創業は2007年。Webやソーシャルメディア、モバイルアプリ領域のソリューション提供とプロトタイプ構築に特化したエンジニア集団で、PR TIMESグループの顧客基盤を活用し、顧客に対して新たなプロダクト開発からPRまで一気通貫での支援を可能にする。また、PR TIMESは外部委託していた開発をグループ内開発に切り替えることで、効率化も図る。PR TIMESとグルコースで双方向の開発出向を制度化し、エンジニアの採用力向上に繋げることも狙う。
PRTIMESの山口拓己氏はこの話が始まった4カ月前に受託開発事業に参入することは想定していなかったと経緯を語った。
「私達がシステムの受託開発をやるというのを考えたことはありませんでした。(買収の)ご提案をいただいて、私達の可能性を感じられたというのは本当に新たな発見でした。このM&Aを小規模に終わらせるのではなく私達の長期的な目標に近づけるひとつにしたいと思ってます」。

また、ここ数カ月で一気に話題となっているChatGPTを含めた大規模言語モデルなどのAI活用についてもグルコースの参画により開発・研究体制が強化されることになる。顧客へのサービス提供だけでなく自社サービスへの対応についても次のように言及した。
「AIの利用に関しては非常に多くの可能性があると思います。2017年には、AIでメディア向けにプレスリリースをレコメンドする機能がありましたが、当時の技術的な力不足から価値を発揮できていませんでした。しかし、今、技術的な状況が変わり、再度チャレンジすることができるかもしれません」(山口氏)。
具体的にはPRTIMESのプレスリリースを作成する際の編集機能や、提供している顧客サポートサービスのTayoriにおけるチャット返信、企業のFAQ作成などへの対話型AIの適応を挙げていた。また、新たに開始する開発支援事業の対象については、スタートアップや大企業の新規事業部門などを挙げつつ、次のように語った。
「(スタートアップや大企業の新規事業部門で)専属の広報担当者がいなくても、CEO(や担当)の方が直接ご利用いただくというケースは本当に多くあります。そういった接点を活用していきたいです。PRのタイミングだけではなく、企画段階から接点を持たせていただくことができると考えています」(山口氏)。

また、グルコース代表取締役の安達真氏からは全国に利用企業がいるPRTIMESのネットワークを使い、地方などの展開も視野に入れたいという。
「今までのグルコースの顧客は、おおよそ6、7割がベンチャー企業や上場前の会社で残りは大企業という割合でした。割合に大きな変化はないだろうと思いつつ、規模は増やしていく予定です。新規事業立ち上げの中でエンジニアが不足しているというケースが非常に多く、まずはそこをカバーする範囲と考えています。リモートワークが普及している現在、例えば(PRTIMESの地方拠点がある)九州などでの展開も視野に入れています」(安達氏)。
今回の買収により、定量的な目標としては、グルコースを通じて2025年度に30サービスの開発・成長に関わる会社への拡大を目指す。具体的には新規プロダクト開発15サービス、継続開発15サービス、「50人規模」の開発チームの組成を予定している。さらに、グルコースはAI活用研究を強化し、PR TIMESに蓄積されたデータを背景とした言語モデルの構築と、サービスへの適用を目標に検証も進める。
※筆者註:本誌BRIDGEはPR TIMESの子会社が運営するメディアです。情報開示させていただきます。
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