夢のスマートコンタクト「Mojo Vision」がピボットーーマイクロLED開発に集中して2,240万ドルを調達、従業員の約75%は解雇

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Image credit:Mojo Vision

Mojo Visionは非常に魅力的な夢から一歩後退し、広範な可能性を秘めた実用的な製品へと重心を移したようだ。この度、2,240万ドルを調達したことを公表した(訳註:原文公開日は4月5日)。

今回の資金調達は、Mojo Visionが新CEOのNikhil Balram氏を任命し、1月に従業員の約75%を解雇した後に行われた。同社は以前、コンタクトレンズに内蔵するAR(拡張現実)デバイスの製作に注力していた。マイクロLED技術を使った世界最小のディスプレイを搭載したそのレンズのプロトタイプを製作していたが、パンデミック(世界的大流行)の中で、ソフトウェアとハードウェアをセットにしたこの製品を市場に出すのに十分な資金を調達することは叶わなかった。

そこでカリフォルニア州サラトガに本社を置く同社は、ビジョンを絞り込んでいった。マイクロLEDディスプレイの技術を半導体チップとして、より広い市場に向けて商品化するための2,200万ドルの資金調達に成功したのだ。スマートコンタクトレンズの開発は「後退」したが、このプロジェクトが完全に終了したわけではない。Mojo Visionはまだすべての特許を保有しており、いつかこのプロジェクトを再開する可能性があると、Balram氏はVentureBeatのインタビューに語っている。

「スマートコンタクトレンズは非常に洗練されたシステムで、ハードウェアとソフトウェアのスタックを持つ全体的なシステムが必要でした。マイクロLEDはその重要な構成要素ですが、全体に比べればシンプルです。そしてこのコンタクトレンズが存在するために必要な重要な要素ではあったものの、このような製品を作る機会は(他の企業には)なかなかなかったと思います」(Balram氏)。

マイクロLEDディスプレイ技術は、コンタクトレンズのために開発されたものであるが、消費者、企業、政府の各分野で応用が可能だとBalram氏は述べている。ある意味、コンタクトレンズのためにシステム全体を構築するよりも、チップを作ることに集中したほうが、より狭く、より実用的なビジネスになるのである。誰かがマイクロLEDを使ってコンタクトレンズを作ることはできるが、そのマイクロLEDを他の目的に使うこともできるのだ。

既存の投資家であるNEAとKhosla Venturesが今回のラウンドを主導し、Dolby Family Ventures、Liberty Global Ventures、Fusion Fund、Drew Perkins、Open Field Capital、Edgeなどの投資家が追加で参加した。

Mojo Visionは、最先端の半導体技術を駆使して次世代のマイクロLEDを開発し、2026年には売上高が1,600億ドルを超えると予測される世界のディスプレイ業界を破壊することを期待している(ディスプレイ市場調査会社DSCCによる)。

同社はAR/VR(拡張現実)や自動車、ライトフィールドディスプレイ、大判ディスプレイなどの分野で高性能のマイクロLEDディスプレイがより幅広い市場機会を見出し、真の価値を提供すると考えているようだ。

Mojo Vision のスマート コンタクト レンズは開発を中止した。

2019年、Mojo Lensと名付けられたフルコンタクトレンズ・システムのハードウェアをまとめつつあったMojo Visionは、スマートコンタクトレンズの重要なコンポーネントである史上最小・最密度のダイナミックディスプレイを開発した。

このMojo Visionのオリジナルモノクロディスプレイ技術は、1万4,000ppiを超える世界記録的なピクセルピッチを実現し、ダイナミックコンテンツ用の最小、最密度のディスプレイとなった。Mojo Visionは、世界最高水準のマイクロLEDディスプレイ技術の開発と商業化にリソースを向けるため、スマートコンタクトレンズは後回しにしている。

Balram氏は「マイクロLEDは非常に魅力的な技術です。この業界で30年以上の経験を持つ者として、当社のマイクロLEDは一世代に一度の破壊的な発明だと思っています。私はこの分野に精通していますが、それでもMojo Visionがやっていることはユニークだと感じています」と述べる。

Mojo Visionのリーダーシップチーム

Mojo VisionのCEO、Nikhil Balram氏

Balram氏は約1年前にMojo Visionに入社し、ディスプレイグループのリーダーを務めていた。現在は、共同創業者のDrew Perkins氏に代わってCEOに就任している。彼は「会社をマイクロLED事業に集中させるため、CEOに就任した」と語る。

Balram氏は、30年以上にわたる半導体およびディスプレイ技術を経験した人物だ。直近では、ARシステム企業であるEyeWay Vision社でCEOを務めていた。また、それ以前は、Googleのディスプレイグループを率い、AR/VRを含むすべてのGoogleコンシューマー向けハードウェア製品のディスプレイシステムの開発を主導していた。

過去には、Ricoh Innovations Corporationの最高経営責任者、Marvell Semiconductorの副社長兼ゼネラルマネージャー、National Semiconductorのディスプレイグループの最高技術責任者などを歴任している。

ディスプレイ業界の専門学会であるSID(Society for Information Display)の会長であるAchin Bhowmik氏は声明の中で「Balram博士は技術的およびビジネス的成功により、ディスプレイ業界全体で広く認知され、尊敬されている。彼は、情報ディスプレイの画質向上への多大な貢献により、2016年に権威あるOtto Schade Prizeを受賞した」とコメントした。

Mojo Visionの共同設立者であるMike Wiemer氏はビジョンと専門知識によってMojoチームを世界最小・最密度のマイクロLEDディスプレイの構築に導き、同社の最高技術責任者として引き続き舵取りをする。また、ディスプレイ技術に深い経験を持つ他の主要なチームメンバーは以下の通りである:ディスプレイエンジニアリング担当上級副社長のPaul S. Martin氏、ディスプレイ製品管理担当副社長のGrace Lee氏。Mojo Visionの共同設立者であるPerkins氏は、引き続き取締役会会長に就任する。

Mojoのチームには、Google、Apple、HP、Marvell、National Semiconductor、IBM、AU Optronics、Lumileds、Philipsなどの企業で経験を積んだ、マイクロLED、ディスプレイ、半導体の専門家が含まれている。Mojo Visionのイノベーションは、これまでに220件以上の特許ポートフォリオで保護されている。

「ディスプレイ業界の市場機会は大きく1,000億ドル以上あります。ただ、大きなことをするためには、小さなことから始めなければならないこともあります。Mojoではまさにそれを実践している最中です。私たちは、世界最小・最密度のダイナミックマイクロLEDディスプレイの開発からスタートし、現在、そのイノベーションを次世代のディスプレイに応用しようとしています。

現在Mojoは、画期的な技術、ディスプレイや半導体の専門知識、そして高度な製造工程を組み合わせて、最も要求の厳しいハードウェア アプリケーション向けのマイクロ LEDを商品化しています。今回の資金調達により、画期的なモノリシックマイクロLED技術を顧客に提供し、高性能マイクロLEDの市場投入を進めることができるでしょう」(Balram氏)。

Mojo Visionの技術

Mojo Vision は、非常に小さく高密度のディスプレイを作成。

Balram氏は、同社はファブレス半導体企業として、自社でチップを設計するが、製造は契約メーカーを利用する予定であると述べた。

Mojo Visionのディスプレイと半導体の専門家たちは高度な半導体製造プロセスによるマイクロLED技術を開発し、超高輝度で高効率、さらにスリムなフォームファクターの小さなピクセルを提供している。Mojo Visionは非常に小さく、非常に明るく、非常に効率的なRGBピクセルを作るため、独自の高性能量子ドット(HPQD)技術を開発した。

「ディスプレイ技術を見ると、市場に破壊を起こす方法は既存の技術ではうまくできない新しいアプリケーションが必要なのですが、同時にその技術が主流になる理由も必要なのです」とBalram氏は言う。

CRTに代わってノートパソコン市場に登場した液晶ディスプレイ(LCD)には、そのような理由があった。技術が成熟するにつれ、スクリーンの薄型化がセールスポイントになったからだ。そして今、(ピボットによって)同社はコンタクトレンズだけでなく、眼鏡などにも使えるような、少し大きめのマイクロLEDを作ることができるようになった。

「ARメガネのビジョンを現実のものにし、人々がさまざまなものを身につけて歩き回り、情報にアクセスできるようにするには、超高輝度、超高効率、超高密度ピクセル、超小型のディスプレイ技術が必要だと考えています。ARグラスはまだこの技術にとっては前哨戦のようなものであり、これが私たちの価値と投資の原動力となっている。残りの市場がこのマイクロLEDに関心を持つ理由は、私のノートパソコンやリビングルームにある液晶画面の5倍から10倍の効率をもたらすからなのです」(Balram氏)。

これらの市場は期待している人がたくさんいるので、コンタクトレンズよりもずっと早く発展する可能性があるとBalram氏は言う。それに対して、コンタクトレンズは視力に問題がある人向けの医療機器のようなもので、政府の規制当局を満足させるために多くの作業が必要だった。

さらに同社の技術には、次のような進歩があるそうだ。

  • 最大2万8,000画素/インチのダイナミックディスプレイ
  • サブミクロンスケールの高効率青色マイクロLEDデバイス
  • 赤・緑用高効率量子ドットインク
  • 100万nitを超える高輝度
  • 最適化されたCMOSバックプレーン、ウェーハtoウェーハボンディング、カスタムマイクロレンズ光学系を組み込んだディスプレイシステム
  • 300ミリメートルの窒化ガリウム(GaN)上に、大量に製造することで
  • シリコン、そしてエンドツーエンドの300ミリメートルフロー

同社は、マイクロLEDは新興のAR/VR市場のすべてのディスプレイ要件を満たすことができる唯一のディスプレイ技術であると説明している。企業がより没入感のある体験型製品に取り組む中で、マイクロLEDはこれらのシステム内のディスプレイにとって重要なコンポーネントとなり、より高解像度でリアルな画像を実現する。

コンタクトレンズを作ろうとするチームについて、Balram氏は「彼らは世界を変えたいという想いで入社してきました。その熱意は失われていません。スマートコンタクトレンズは世界を変えただろうし、今も世界を変える可能性は残っています。しかし今、ARグラスのような別の新しいアプリケーション、あるいはノートパソコンやテレビにこれらが使われるかもしれないと考えると、そこにかける労力を現時点で10%に減らしてもいいのではないでしょうか?持続可能かどうかという視点は大切です」と語る。

確かにスマートコンタクトレンズの場合、顧客に技術を押し売りする必要があったかもしれない。しかしマイクロLEDの場合、もっと多くの人を引きつけることができるとBalram氏は説明する。例えば、最新の電気自動車に搭載されているディスプレイの電力を節約できるかもしれないのだ。

いつかコンタクトレンズを復活させるということについては「素晴らしいコンセプトだと今でも思っています。しかし、市場はムーンショットのようなものに資金を提供し続ける状況にはありません。私たちは、このコンセプトが機能することを実証し、大きな一歩を踏み出したのです」と語った。

ということで、同社はこの技術開発を停止したわけではなく、さらに小規模なチームで継続できる程度の政府と交わした契約もあるそうだ。インタビュー終わり、Balram氏は「市場環境が許せば、ある時点でこの分野に再投資する選択肢は常に持っておきます」と説明した。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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