ジェネレーティブAIでムダな出費を発見、電気代を年間2万円以上節約する英Nous

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物価上昇の時代、インフレ下でいかに出費を抑えるかは、現代人にとって難しい問題になっている。これは台湾だけでなく、世界の他の地域でも同様だ。

中華経済研究院が発表した報告書によると、今年(2023年)上半期の消費者物価指数(CPI)は、昨年(2022年)同期に比べて2.32ポイント上昇しており、食費、交通費、家賃など日常的な出費がいずれも大きく上昇している。イギリスも同じ問題に直面しており、国家統計局が発表した CPI に関する報告書によると、Brexit やエネルギー料金の高騰により、今年上半期の昨年上半期の差は台湾よりもさらに大きくなっている。

Nous はこの問題に着目し、あらゆる出費を詳細に記録し、大規模言語モデル(LLM)によって、将来の出費を予測するだけでなく、水道、電気、インターネットの請求書に不当な偽装値上げがないか自動的にチェックすることで、あらゆる生活費を管理するプラットフォームを構築した。

最も費用対効果の高い解決策を特定するため、請求情報を一元化

Greg Marsh 氏
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2020年、Nous の創業者 Greg Marsh 氏は、診断を受けて自宅療養を余儀なくされていた時、ちょうど自宅のエネルギー料金契約の更新時期が重なった。

体調不良と複雑な契約の両方に直面した彼は、プロバイダが提供する複数のオプションの中から、最も費用を節約できるオプションを見つけようとしたが、大手企業との戦いに時間とエネルギーを費やしすぎていることに気づいた。

その過程で彼は、請求書やソリューションを素早く整理できるプラットフォームを作ったらどうかと考えた。1年後、イギリスのスタートアップ Nous が誕生した。

Nous は請求書を一元管理するシステムを提供しており、公共料金や管理費などの契約書の定期的な再交付のリマインダーを設定できるだけでなく、ユーザが承認した請求記録や銀行や企業からの第三者データを収集し、それらを分析することで、インフレが来年の生活費にどのような影響を与えるかを予測し、該当する支出を削減するためのアドバイスを与えてくれる。

AI を導入、請求や契約管理でユーザを支援

イギリスの Nous は、あらゆる生活費をひとつのプラットフォームで管理することに重点を置き、シンプルなページを通じてあらゆる支出記録を整理・管理できる。
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お金を節約する最良の方法を見つけ出すことが頭痛の種だとすれば、おそらくそれ以上に蔓延しているもう1つの問題がある。新しい契約の内容が以前の契約とどう違うのかを見つけ出すことだ。

Nous によると、イギリス人の約3分の2が電気代や水道代の請求書を読まないと答えており、契約書の細かい字を読むのはわずか15%だという。Marsh 氏によると、企業は人々が契約書を読まないことを知っているため、契約の複雑さの中に利用者にメリットのない詳細を隠すことが多いという。

1年以上にわたる社内での研究開発の末、Nous は独自のシステムとジェネレーティブ AI 技術を組み合わせ、契約書の相違点や不合理な点をユーザが直接特定できるようにした。メディアの報道によると、Nous は OpenAI の LLM を使用しているが、それが GPT-3.5 なのか GPT-4 API なのかは明らかにしていない。

2023年7月、Nous は契約書のファイルをアップロードしたり、e メールで閲覧したりできる機能を開放する。AI を使って請求書を分類・整理し、内容をスキャンし、契約書の確認作業を簡素化し、契約書の疑わしい部分を見つけることで、ユーザは短時間で契約書を読むことができる。

Nous のチームは、この機能により1世帯あたり141ユーロ(約22,000円)を実質的に節約できると主張している。この新機能は現在、光熱費などのエネルギー料金請求書でのみ利用可能だが、将来的には通信料金請求書や保険などの書類でも利用できるようになる見込みで、WhatsApp などのメッセージングアプリを通じたフォローアップ通知も計画されている。

Nous のシステムは、AI で請求書を分類・整理するほか、内容をスキャンして契約書を簡略化し、疑わしい箇所を発見するため、ユーザは短時間で契約書を読むことができる。
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ミッションは、ユーザのメリットを追求すること

似たような記帳・管理アプリは市場に数多く存在するが、Marsh 氏によると、広告をビジネスモデルとしている他のプラットフォームとは異なり、Nous はサブスクリプションベースの価格設定を採用しているという。

私たちはユーザのことを考えるビジネスでありたいと思っており、それが最終的にサブスクで提供することに決めた理由だ。

Mars 氏は、広告ベースの企業はその利益のために、個々のユーザは適していないソリューションを推奨すると話している。だからこそ、Nous はユーザ中心の設計で独自のレコメンデーションの仕組みを確立し、ユーザからサブス料金を徴収しているのだ。

無料版サービスに加え、Nous チームは月額10ユーロ(約1,560円)のサブスクも提供しており、このサブスクを利用すると、会員限定の割引や生活費の年間キャッシュバックが受けられるほか、Nous のファイナンシャルプランニングチームによる、個々のユーザの支出履歴に合わせた独自の財務管理アドバイスが受けられる。

サブスク会員は、個々のユーザの支出履歴に基づいて、Nous のファイナンシャルプランニングチームからオーダーメイドの財務管理アドバイスを受けることができる。
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データのライセンスと収集が国際展開の課題に

2021年の起業以来、Nous のチームはイギリスの家庭を中心に活動してきたが、Mars 氏によれば、サービスを世界に拡大することを検討する可能性もあるという。

しかし、Nous はユーザ自身が提供する生の消費データを分析するだけではない、2016年に開始されたイギリスのオープンバンキングを利用し、プロバイダの取引記録への第三者アクセスを提供することで、関連するライフスタイルビジネスからの第三者データを連携し、AI 分析することで、ユーザの家計支出のコスト把握と管理を支援している。

オープンバンキングの導入により、Nous のチームは承認さえ得られば、ユーザの支出記録にアクセスできる手段を手に入れたが、今後国際市場に進出する場合、同様のデータにアクセスするための承認チャネルをどう見つけるか、各国のデータ収集規制をどう遵守するかも注目すべき課題だ。Nous チームが妥協点を見出すことができれば、今後の事業規模拡大が期待できるだろう。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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