「Okinawa Startup Program」がデモデイ開催、コーヒー生産から在留外国人生活支援まで県内外9社が参加

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Image credit: Masaru Ikeda

琉球銀行(東証:8399)、沖縄タイムス、沖縄セルラー(東証:9436)、沖縄電力(東証:9511)、日本トランスオーシャン航空(JTA)、大同火災、JTB 沖縄、琉球放送(RBC)の8社は23日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で「Okinawa Startup Program」のデモデイを開催した。このプログラムは8年前に琉球銀行が単独で運営を開始、2回目からは主催者に沖縄タイムスが、その後、沖縄セルラー、沖縄電力、JTA、大同火災、JTB 沖縄、RBC が加わった。

このプログラムには例年、沖縄県内外はもとより、近接する台湾から日本市場進出を試みるスタートアップが参加してきた。参加スタートアップのソーシングにあたっては、STARTUP Lab LagoonFROGSアントレプレナーシップラボ沖縄の各起業家支援機関に加え、台湾政府の工業技術研究院(ITRI)傘下のスタートアップ支援組織「Taiwan Tech Arena(TTA)」が協力している。

Okinawa Startup Program の過去のプログラムに採択されたスタートアップ79社(前バッチまで)のうち、人材管理クラウド開発のサイダス、ソーシャル EC プラットフォーム「temite(テミテ)」を運営する EC-GAIN、貨物車両と荷主をつなぐマッチングプラットフォーム「PickGo(ピックゴー)」を運営する CBcloud、沖縄発の運転代行マッチングプラットフォーム「AIRCLE(エアクル)」を運営する Alpaca.Lab は、琉球銀行の「BOR ベンチャーファンド」から、それぞれ資金調達している。

講評する沖縄タイムス代表取締役社長の武富和彦氏
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また、これまでに採択されたスタートアップでは、マッシグラが沖縄タイムスと共同出資でマッシグラ沖縄タイムスを設立し、沖縄県下5ヶ所でシェアオフィス/コワーキングスペース「howlive」を展開している。幹細胞の大量培養技術を使った再生医療スタートアップのフルステム、前出の CBcloud は沖縄タイムスを含む複数の企業から資金調達に成功した。沖縄ツーリスト(OTS)からスピンオフした OTS MICE MANAGEMENT は、琉球放送と資本業務提携した。

なお、琉球銀行は2018年に2億円規模で「BOR ベンチャーファンド」の1号ファンド、その後、同じく2億円規模で2号ファンドを組成し、スタートアップ合計9社に出資している。2022年末には、沖縄県内外の45団体がコンソーシアムを立ち上げている

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今回の8回目のバッチには50チームのエントリから選ばれた合計9チームが参加した。以下に参加全チームの発表内容を紹介する。

oyadoo by SOCIALPORT(沖縄)

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アフターコロナのインバウンド需要は急増しているが、知名度の低いホテルは個人客に選ばれないという課題がある。一方で、日本に旅行する外国人は、情報源として日本に住む在留外国人による SNS 投稿を活用していることが多い。そこで、SOCIALPORT は、宿泊施設のマーケティング担当者が日本在住の外国人インフルエンサーを選定し、施設を紹介する投稿を依頼できるマッチングプラットフォーム「oyadoo」を開発した。

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応募者であるインフルエンサーは厳選されている。彼らはホテルやプラットフォームから金銭的報酬を受け取らないが、無料で宿泊施設に招待される特典を受けられるため、投稿内容における評価は公正でありながら、インフルエンサーがモチベーションを得られる仕組みを実現している。この取り組みにより、インバウンドによる宿泊施設の売上増大や地域経済への波及効果が期待されている。

科学実験教室のパッケージ化 by 琉球科学教育研究会(沖縄)

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科学技術の進歩によって夢のような世界が実現されつつあるが、沖縄では、科学実験を行う環境や教育機会に格差がある。子供達に科学を学んでおらう機会として、琉球大学の人材育成事業として、琉大ハカセ塾(小学生高学年〜中学生対象)や琉大カガク院(高校生対象)などがあるが、生徒に教える十分な体制は整っているとは言い切れない。保護者らからは、子供が科学を学ぶ場や機会が不足しているとの声が上がっている。

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この課題に対処するために、琉球科学教育研究会は「科学実験教室のパッケージ化」を提案している。教材や安全マニュアルを含めた一括提供を行い、科学教育の普及を図る。また、琉球大学内に科学クラブを設立し、教育効果を測定しながら、地方の学校に展開していく計画だ。この取り組みは、他の地域や海外の日本人学校への展開も視野に入れており、専門家や教員と連携しながら、次世代の科学者を育成する道を切り拓く。

ナイトコンシェルジュ by humorous(大阪)

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施設の中に暗い場所があったとすれば、その対処方法は大きく分けて2つだ。一つは暗いままの状態に甘んじるか、もしくは、照明を設置するか。何も無いところに照明灯を設置するのは工事が必要で、電気代、メンテナンスの費用も必要になる。しかし、この二者択一の解以外にも、煌々とした灯は必要ではないが、電源がなくても適度な明るさを提供することはできないか。そうして考えられたのが「ナイトコンシェルジュ」だ。

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ナイトコンシェルジュで使われるのは紫外線を吸収して発光する蓄光素材で、humorous(ユーモラス)ではこれを使った空間演出を提案している。最新の3Dモデルは、電気代0でメンテナンスフリー、配線不要で好感度向上する。例えば、国交省のモデル事業では、夜道を明るくし人々に安心感を提供した。認知度の向上に伴い、来年以降は全国への普及、2030年までに海外展開を目指す。

POWER RUN OKINAWA by ラポール(沖縄)

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POWER RUN OKINAWA」を運営する尾尻琢磨氏は、15年間続けてきた陸上競技を8年前にやめたという。走ることがきつくて苦しく、何の意味があるのかわからなくなったためだ。一般的に、社会では RUN は一般的に嫌われ者とされていて、その効果が正しく伝わっていない。その後、会社に行けなくなったのをきっかけに、 RUN を再開したところ、心と体を整う体験が得られたという。

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RUN の効果はさまざまであり、目的や特性に合わせた方法で行えば、能力やパフォーマンスの向上につながる。また、心身を整えるRUNは、日々の生活で心と体を同時に整えることができる。POWER RUN OKINAWA では、運動習慣のある人に対しても、ない人に対しても、目的に合った走り方をコーチングすることで、生活の質を高める効果を得られるよう支援する。

Funliday by Funliday(台湾)

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Funliday は旅行計画のためのソーシャルプラットフォームだ。ユーザは行きたい観光スポットを選び、ドラッグ&ドロップで並べ替えるだけで、Funliday が完全なルートを計画し、移動時間を計算し、より正確なスケジュール管理を提供する。旅行前に旅程を旅行参加者が共同で編集する機能を備えているほか、旅行記を自動的に作成したり、他のユーザの旅程をコピーして計画の時間を節約したりすることも可能だ。

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2014年に台湾でローンチした Funliday は、中華圏を中心に人気を集め、2022年2月現在の月間アクティブユーザ数は現在15万人程度。旅行代理店は Funliday のサービスを連携することで、〝タビナカ〟や〝タビアト〟のユーザリーターゲティングが可能になることから、日本では B2B2C の SaaS モデルで旅行会社にサービスを販売することを検討している。

LOCOLINK by OCARIM(京都)

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OCARIM の山田剛氏は、かつてマーケティングや映像制作を手がける会社で働いていたが、新たな事業としてこのサービスを立ち上げた。そのきっかけは、自身が沖縄を旅した際に地元の人々が通う場所を訪れ、人々のホスピタリティに感銘を受けた。賃金格差という根深い社会問題が残る沖縄で、人々のホスピタリティを観光業界の収益として地元に還元することで、地域社会全体の発展に貢献できないかと考えた。

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LOCOLINK」は、地元の人々が旅行者にオリジナルのおもてなしを提供し、その対価として報酬を得る仕組みだ。これにより、地元に観光マネーが流れ、地域コミュニティが活性化することを目指している。サービスは、CtoC と BtoC の両方を採用しており、β版を用いた実証実験では、地元の人々に収益をもたらしている成果が得られている。今後は、エリアの拡大や機能の強化、資金調達などを計画している。

百名(ひゃくな)珈琲プロジェクト by 琉球コーヒーエナジー(沖縄)

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現在、日本人が飲むコーヒーのほとんどは輸入で、日本は輸入国として世界4位、消費国として世界3位だ沖縄は観光地として多くの人々が訪れる一方で、一次産業の衰退が進んでいる。この課題に取り組むべく、コーヒー栽培を通じて新たな産業を育て、沖縄をコーヒーアイランドにしようとしているのが琉球コーヒーエナジーだ。現在年間2トンしか生産されない沖縄のコーヒーを1,000トンまで増やすことを目指す。

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琉球大学の農学部・工学部発のこのプロジェクトでは、コーヒー愛飲家や専門家らが集まり、沖縄の気候や土壌に適したコーヒー栽培法を研究している。また、徹底的な省人化や気象リスクに対する対策を施した、太陽光発電を利用した耐候型農業ハウスの開発も進められており、生産効率の向上に注力している。プロジェクトの進行は順調で、コナコーヒーやハワイやタイとの契約を結ぶなど国際的な展開も見据えられている。

全速力ミュージック by 全 Digital(沖縄)

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日本では原盤権はレコード制作者、著作権は JASRAC(日本音楽著作権協会)などが管理しているが、中国では1992年に中国音楽著作権協会(MCSC)が設立されるまでの間、原盤権と著作権の扱いに違いがなく、日本のアーティストの権利が適切に管理されていない状況があった。MCSC 設立後も、著作権の理解が不十分なまま海賊版や盗作が流出するなど管理が不完全な状態だ。TikTok と Universal Music の対立は記憶に新しい

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総合格闘家の中尾芳広氏が率いる全 Digital は「全速力ミュージック」の運営を計画している。中国の Douyin (抖音)などの短編動画配信プラットフォーマーに焦点を当て、中国に日本の音楽を配信する沖縄発の事業を展開していく。将来は、音楽出版社の設立や決済システムの構築なども視野に、沖縄の IP を活用し、世界市場への参入を目指す。

JOLS by Payke(沖縄)

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Payke と言えば沖縄を代表するスタートアップの一つで、BRIDGE でも何度か取り上げているように、日本語が読めない外国人のために、スマートフォンを商品に掲げるだけで商品説明を母国語で読めるモバイルアプリの開発で知られている。450万人もの Payke のユーザベースをテコに、新たな外国人向けサービスを狙ったのが「JOLS」だ。ターゲットは、日本に300万人以上いる在留外国人。観光客ではなく住民である。

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外国人が日本で生活する上では、さまざまなハードルが存在する。マンションの賃貸や行政手続、クレジットカードの審査などで言語や文化の壁に直面することがある。さらに、医療サービスにおいても課題が見られる。JOLS は、外国人が日常生活に必要な様々なサービスを一つの ID で利用できるようにするもので、言語や様式の違いによる手続きの煩雑さを解消し利便性を向上させる。

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