OpenAI競合のCohereが富士通と提携、エンプラ向け日本語LLM「Takane」ローンチへ

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Cohere 共同創業者の3人。Ivan Zhang 氏、Aidan Gomez 氏、Nick Frosst 氏
Image Credit: Cohere

企業がAIの可能性に強気になるにつれ、基盤モデルを開発する企業は、その拠点を拡大し、地域を越えてサービスを提供しようと動き出している。数カ月前、OpenAI はアジア初となる東京ハブを開設し、日本に進出した。その前には、競合の Anthropic がシンガポール(編注:韓国の誤りと思われる)の通信大手 SKT と提携し、カスタム AI モデルの開発に取り組んだ。そして今回、カナダを拠点とするエンタープライズ AI スタートアップの Cohere は、日本の情報技術大手の富士通と戦略的提携を締結した。

この契約により、Cohere は富士通から多額の投資を受け、テクノロジー大手と緊密に連携して、日本語能力を備えた LLM やソリューションを構築することになる。この動きにより、同地域の企業や新興企業は、自社の製品で強力な日本語 LLM を使用できるようになり、顧客や従業員に改善されたエクスペリエンスを提供できるようになる。富士通は技術系ハードウェア企業として成功を収めたが、近年は IT サービスからの収益が大半を占めている

Cohere の共同設立者兼 CEO Aidan Gomez 氏は、報道声明で次のように述べている。

富士通との戦略的提携は、世界で最も重要なエンタープライズ市場の1つに世界クラスの LLM 能力を提供する上で、本当に重要なステップです。

AI技術がその可能性を最大限に発揮するためには、企業が今いる場所、つまり自社のクラウド環境であれ、ビジネスを行う言語であれ、その場所に対応できる必要があります。

この提携の一環として登場する LLM のひとつは、仮称「Takane」(英語で山頂を意味する)と呼ばれている。この大規模言語モデル(LLM)は「Command R+」をベースにしており、Cohere の最も先進的でスケーラブルな LLM であり、実際のビジネスアプリケーションのために特別に設計されている。

両社の提携について、わかっていること

明確な製品はまだ発表されていないが、1つだけはっきりしていることは、戦略的提携により、Cohere は自社の AI モデルを提供し、富士通は日本語トレーニングや微調整技術に関する専門知識を活かして、それらを基に開発を進めるということだ。

富士通は長年にわたり、データと AI の交差点で複数の技術を発表してきた。これには、大規模な企業データをLLM推論用の知識グラフに変換する知識グラフ拡張 RAG(検索拡張世代)システム、入力タスクに基づいて最適なモデルを選択したり、最適な結果を得るためにモデルを組み合わせたりする生成 AI 融合技術、法律や企業規制の遵守を保証する AI 監査技術などが含まれる。

今回の提携により、同社はこれらの技術を Cohere のフロンティアモデルと組み合わせることになる。まず、エンタープライズグレードの Command R+ は、不正確さを低減するための引用によるクラス最高の RAG、10種類の主要ビジネス言語による多言語対応、複雑なワークフローを自動化するための強力な「Tool Use API」を提供する。この組み合わせは、特定のビジネスニーズに対応するため、クラス最高の日本語 LLM を活用した適応性の高いAIソリューションを企業に提供する。

富士通は、Command R+ を使用して構築される日本版 LLM モデル Takane は、現地企業の生産性を向上させ、機能全体の効率性を高めると述べている。

同社はまた、Cohere の2つのモデル「Embed」と「Rerank」を活用して、先進的なエンタープライズ検索アプリケーションや RAG システムを構築する予定だ。

まもなく利用可能に

この提携の一環として、富士通は Cohere と開発した日本語モデルおよびサービスの独占プロバイダとなる。

同社によると、2024年9月には、クラウドベースの AI プラットフォーム「Kozuchi」を通じて、企業のプライベート環境向けに Takane を提供するという。その後、クラウド型オールインワン運用プラットフォーム「Data Intelligence PaaS」や、社会課題を解決するための異業種ビジネスモデル「FUJITSU Uvance」を活用し、共同ソリューションを顧客に提供していく。

Cohere と富士通の提携は、(OpenAI のような)AI 専門のハブを設立するほどの大きな動きではないと考える人も多いかもしれないが、このアプローチにより、スタートアップが日本からより幅広い顧客層にアクセスできるようになることは間違いない。同様の戦略は Perplexity も採用している。Perplexity は最近ソフトバンクと提携し、自社の AI 知識エンジンのリーチを拡大した。

この点について、Cohere は、協業する日本企業の名前を明らかにしていない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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