広島のKGモーターズ、小型モビリティロボット「mibot」の開発コンセプトと販売計画を発表

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広島県東広島市に本社を置く KG モーターズは 8 日、小型モビリティロボット「mibot」の開発コンセプトと販売計画を発表した。 mibot は1人乗りの電気自動車で、持続可能な移動の実現を目指して開発された。 2025年9月の量産開始を目標に、コスト、安全性、走行性能のバランスを追求している。

同社の創業は2022年7月。今年3月に発表したプレシリーズ A ラウンドで環境エネルギー投資 、広島ベンチャーキャピタル 、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ 、いよぎんキャピタル 、 NCB ベンチャーキャピタルのベンチャーキャピタルおよびキーレックス、神鋼商事から J-KISS による 3.8億円の資金調達を実施している。

mibot の開発背景とコンセプト

KG モーターズが開発中の小型モビリティロボット mibot は、持続可能な移動の実現を目指して誕生した。同社代表取締役 CEO の楠一成氏は、日本の地方都市における公共交通機関の衰退と、それに伴う移動の自由の制限に着目した。現状では多くの人が自家用車に依存せざるを得ず、経済的負担が増大している一方で、その利用実態の大半が1人での短距離移動に限られている。

mibot は、この1人での短距離移動ニーズに特化して設計された電気自動車である。原付ミニカー規格を採用し、全長2,490mm、全幅1,130mm、全高1,465mmのコンパクトなボディに、ドアとエアコンを搭載している。航続距離は100km、最高速度は60km/hで、日常の移動に十分な性能を備えている。

将来的には、自動運転技術を活用した MaaS (Mobility as a Service)の展開も視野に入れている。これにより、ドライバー不足や乗客減少などの課題を抱える現在の公共交通システムを補完し、より効率的で持続可能な移動手段を提供することを目標としている。

コスト削減への挑戦

mibot の開発において、コスト削減は重要な課題の一つになる。楠氏は、優れた性能や機能を持つモビリティであっても、販売価格が高すぎては普及が難しいと考えている。そのため、開発チームは様々な工夫を凝らしてコスト削減に取り組んでいる。

主な取り組みの一つが、金型代の抑制である。 mibot はモノコックボディを採用しているが、これは従来の自動車開発では珍しい選択である。通常、新しい車両の開発では、予想販売台数に応じて金型の数を決定する。しかし、 mibot の場合、販売台数の予測が難しいため、あえて共通の金型を使用する方針を採用した。

さらに、車体の前後左右対称デザインを採用することで、部品の共通化を図っている。例えば、右フロントフェンダーと左リアフェンダーを同一の部品で製作できるようにすることで、金型の数を削減し、同時に発注数量を増やすことでコストダウンを実現している。

開発には、約60名のプロフェッショナルなチームが携わっているそうだ。このチームは、 KG モーターズが運営する YouTube チャンネルを通じて集められた、同社の理念や思想に共感した人材で構成されている。開発チームのキーパーソンの一人である久保氏はヤマハ発動機での経験を持つエンジニアだそうだ。

また、開発チームは従来の自動車開発の常識にとらわれず、新しいアイデアを積極的に取り入れている。例えば、特定の部品や機能について、本当に必要かどうかを徹底的に検討し、不要と判断されたものは思い切って省略するなど、大胆な判断も行っている。

これらの取り組みにより、 mibot は原付ミニカー規格でありながら、ドアやエアコンを搭載し、一定の快適性を確保しつつ、コストを抑えることに成功している。さらに、車検不要や税金の安さなど、原付ミニカー規格のメリットを活かすことで、維持コストの低減も実現している。

走行性能の最適化

原付ミニカー規格では、定格出力が 0.6kW 以下と定められており、この小さな出力で人を乗せて坂を登り、十分な加速性能を確保しつつ、最高速度 60km/h を実現しなければならない。そこで開発チームは、この制約の中で最適なバランスを追求した。

例えば、登坂性能を向上させると最高速度が出なくなり、逆に最高速度を重視すると加速性能が犠牲になる。さらに、走行性能の最適化は安全性やコストとも密接に関連している。例えば、安全性を高めるために車体を強化すると重量が増加し、また、高性能なモーターや制御システムを採用すればコストが上昇してしまう。

このように各性能はトレードオフの関係にある

これらの課題に対して、開発チームは様々な工夫を凝らしている。例えば、車体の軽量化や空力性能の改善、効率的な動力伝達システムの採用などが検討されている。また、電子制御技術を活用して、限られた出力を最大限に活用する制御戦略の開発も進められている。

現時点で、開発チームは基本的な性能目標をほぼ達成したと考えているが、今後は、実際のユーザーの声を聞きながら、より細かな調整を行っていく予定だそうだ。例えば、異なる路面状況や気象条件下での性能検証、長期使用における信頼性の確認などが計画されている。

今後のスケジュール

mibot代表取締役CEOの楠一成氏

KG モーターズは、 mibot の量産開始を2025年9月に予定している。初年度の生産台数は300台を計画しており、これらは予約順に納車される予定。その後、2026年度には年間3000台、 2027年度以降は1万台、2万台と段階的に生産規模を拡大し、将来的には年間10万台の販売を目指している。

販売方式については、基本的に EC を通じた直接販売を採用する方針。ただし、メンテナンスやアフターサービスについては、外部パートナーとの協力を検討している。2025年度の初期出荷分については、広島と東京を優先エリアとして設定するが、予約自体は全国から受け付ける予定。

販売に先立ち、 KG モーターズはモニター募集を行っている。今年の4月頃から開始予定のこのモニタープログラムでは、選ばれたユーザーが1〜2カ月間 mibot を試用し、フィードバックを提供する。このフィードバックは、製品の最終調整に活用される予定である。
mibot の一般予約受付は2024年8月23日から開始される。予約金は3万円で返金不可。正式な売買契約は2024年12月頃に行われる予定。

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