上場企業4社に1社が利用するLegalOn Technologies、新機能追加で目指す「これからの契約書管理」とは

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左から:LegalOn Technologies 執行役員 CPO の谷口昌仁氏、代表取締役 CEO の角田望氏
Image credit: Masaru Ikeda

リーガルテックスタートアップの LegalOn Technologies は1日、都内で記者会見を開き、同社の AI 法務クラウドサービス「LegalOn Cloud」に新たな機能「コントラクトマネジメントサービス」を追加したと発表した。この新機能により、企業の法務部門は契約書の作成から審査、管理までの一連の業務をワンストップで行えるようになる。

成長と戦略

弁護士で LegalOn Technologies 代表取締役 CEO の角田望氏は、今回の発表を「非常に重要なマイルストーン」と位置づけ、同社の法務業務のデジタル化と効率化推進における大きな進展であると強調した。

角田氏によると、LegalOn Technologies は現在、日本国内の東京、福岡、大阪、名古屋に加え、アメリカ・サンフランシスコにも拠点を構え、グローバルな顧客サポート体制を整えている。従業員数は630名を超え、累積調達額が180億円弱に達している。世界のリーガルテック企業のトップ20に入る規模だという。

サービスの導入実績も順調に伸びており、2019年のサービス開始以来(当時の名前は LegalForce)、グローバルで約6,000社に導入されている。日本国内では上場企業の約4社に1社が同社のサービスを利用している状況だ。

弁護士で LegalOn Technologies 代表取締役 CEO の角田望氏
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今年4月にリリースされた LegalOn Cloud は、法務業務全体をカバーする拡張性の高いシステムとして設計されており、グローバルNo.1のリーガルテックカンパニーを目指す同社の戦略の中核を担っている。

LegalOn Cloud の開発には、グローバルで150名を超える開発チームが携わっており、法務契約業務のグローバルスタンダードとなることを目指しているという。具体的には、マターマネジメント(案件管理)とコントラクトマネジメント(契約管理)の2つの機能を中心に、法務業務全般をカバーするプラットフォームを提供する。企業は自社のニーズに合わせて必要な法務機能を構築できるようになる。

コントラクトマネジメントサービス

LegalOn Technologies 執行役員 CPO の谷口昌仁氏は、今回発表されたコントラクトマネジメントサービスの詳細について説明した。このサービスは主に二つの課題解決を目指している。一つは締結済み契約書の適切な保管、もう一つは契約内容の管理だ。

同社の調査によると、現在でも86%の企業が契約書を紙または PDF で交換しており、61%が紙で保管していることが分かった。その結果、20%以上の企業が契約書を紛失した経験があるという。コントラクトマネジメントサービスでは、紙で締結した契約書と電子締結した契約書を一元的に保管できるようになる。これにより、契約書の紛失リスクを大幅に低減できる。

LegalOn Technologies 執行役員 CPO の谷口昌仁氏
Image credit: Masaru Ikeda

また、谷口氏からは40%以上の企業が契約の更新や解約時期に気づかず、意図せず契約を更新してしまった経験があり、11%の企業が契約違反をしてしまった経験があるとの調査結果が示された。これらの課題に対し、コントラクトマネジメントサービスでは、契約書から重要な情報(契約期間など)を抽出し管理可能にする。契約条件を可視化し、締結後に発生しうるトラブルを未然に防ぐことができる。

谷口氏は、LegalOn Cloud の特徴として、法務業務全般をカバーする統合的なプラットフォームであることを強調した。これまで個別のツールで対応していた様々な法務業務を、一つのプラットフォーム上で行えるようになる。

Image credit: Masaru Ikeda

さらに、AI を活用したナレッジマネジメント機能も特徴の一つだ。ユーザの業務の中から自動的に情報を収集し、契約書や法務相談の回答などを中心に関連情報の関係性を体系的に整理する。必要な情報を必要なときに簡単に取り出すことができ、過去のナレッジを新たな案件に活用することも可能になる。

谷口氏は、4月のリリース以降に追加された主な機能についても紹介した。

  • 案件ラベル生成・参考情報検索機能 …… 法務相談案件の内容を自動で読み取り、関連する法令やキーワードを生成する。また、法令やガイドラインなど、信頼性の高い情報源から必要な情報を検索できる。
  • 印紙税法への対応 …… 契約書の内容を読み取り、印紙税の課税対象となるかどうか、また該当する場合の税額を自動で判定する。
  • 契約書管理台帳作成機能 …… 契約書から自動抽出した情報をもとに管理台帳を作成し、必要な契約書を簡単に検索・閲覧できるようにする。

これからの契約書管理

谷口氏は、従来の契約書管理の概念を超えた「これからの契約書管理」について言及した。それは、単に契約書を保管し内容を管理するだけでなく、締結済み契約書に関連する情報も管理し、それを将来の契約書作成や審査に活用することだ。

締結済みの契約書には、両者の合意内容、つまり様々な検討や交渉の結果が記載されています。契約締結に至るまでの様々な検討、交渉の経緯や情報は、締結済みの契約書を立体的に把握するために欠かすことができない重要な情報です。(谷口氏)

LegalOn Cloud では、契約書を中心に、社内外とのやり取り、修正履歴、関連する契約書、参考資料などを紐付けて保存する。これにより、断片的な情報ではなく、会社の一つのナレッジとして保存することができる。

谷口氏によると、80%以上の法務担当者が契約書審査の際に過去の契約書を参考にしたいと考えているが、その半数以上が必要な契約書を見つけられなかった経験があるという。

LegalOn Cloud では、AI が法務担当者の作業を読み取り、その内容に合わせて必要な情報や次に行うべきアクションをレコメンドする。これにより、法務担当者は自分で情報を探す必要なく、必要な情報を必要なときに取り出すことができる。

例えば、ある契約書の審査を行う際に、その契約書と関連する過去の契約書や、類似の論点を含む契約書を AI がレコメンドすることで、情報を探す手間と時間を大幅に削減できるようになる。

Image credit: Masaru Ikeda

また、谷口氏は、LegalOn Cloud の今後の開発予定についても言及した。

2024年内に契約書の電子締結サービスをリリース予定。これにより、案件の受付管理から契約書の作成、審査、締結、管理まで、契約法務業務全体を LegalOn Cloud 上で行うことが可能になる。

  • コンテンツの強化 …… 9月には森・濱田松本法律事務所が監修する契約書のひな形やその解説の提供を開始。有斐閣との連携により、年内をめどに法令に関する書籍を参照できるようにする予定。
  • 「LegalOn Assistant」の日本版提供 …… アメリカの子会社でリリースした大規模言語モデル(LLM)を利用したサービスの日本版を計画中。ユーザーの簡単な問いかけに対して契約書の要約や条文案の作成などを行う。ただし、日本の弁護士法に抵触しないよう、一部機能を調整する必要がある。
Image credit: Masaru Ikeda

最後に谷口氏は、LegalOn Cloud で実現したい未来像について語った。

LegalOn Cloud を使えば使うほど、契約書や案件の内容、各種タイトルといった情報がAIによって紐付けされ、ナレッジとして蓄積されていきます。そうすることで、ユーザーの作業内容や置かれた状況に対する理解が深まり、自分が今必要としている情報をレコメンドしてくれるようになります。つまり、LegalOn Cloud を使えば使うほど、自分だけのアシスタントとして育てることができるのです。

法務 × AI に関する他社の動き

契約書管理の分野では、先ごろ、トムソン・ロイターが「CoCounsel」を日本向けに初披露したのは記憶に新しい。カナダのリーガルテックユニコーン Clio は先週、シリーズ F ラウンドで9億米ドルを調達し、国際展開強化を発表したほか、日本でも BoostDraft のような新たなスタートアップの登場や、TOKIUM のように別分野からの新規参入のような事例も見られる。

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