コードレビューに金融市場データ分析、拡大するバーティカルAIーーテックトレンドまとめ読み【TechDaily】

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TechDaily は筆者が毎日実施しているテックニュースの斜め読みをまとめたもの。グローバルで気になる資金調達、テックトレンド、スタートアップニュースをまとめて共有する。しばらく不定期更新でお送りします。

拡大するバーティカル AI

AI 技術は様々な分野で急速に進化を遂げている。CodeRabbit は 1,600 万ドルを調達し、 AI を用いたコードレビューの自動化に取り組んでいる。この技術は開発プロセスを効率化する可能性がある一方で、人間のレビューの重要性も指摘されている。 CodeRabbit の CEO である Harjot Gill 氏は、従来の静的解析ツールやリンターがルールベースで誤検出率が高く、ピアレビューは時間がかかり主観的であるのに対し、 CodeRabbit は「高度な AI 推論」を用いて「コードの意図を理解」し、「実用的な」「人間のようなフィードバック」を開発者に提供すると主張している。しかし、 AI によるコードレビューの品質については疑問の声もあることを TechCrunch の記事では指摘している。

CodeRabbit

Goodfire は 700 万ドルを調達し、生成 AI モデルの内部動作を可視化する「メカニズム解釈可能性」技術の開発を進めている。この技術は AI の「ブラックボックス」問題に対処し、より安全で信頼性の高い AI システムの構築を目指している。 Goodfire の CEO である Eric Ho 氏は、この技術を「 AI モデルに対する脳外科手術」にたとえ、 AI モデルの意思決定プロセスを人間が理解可能なインターフェースで説明し、モデルの内部メカニズムに直接アクセスして意思決定プロセスを変更できるようにすると説明している。

TipRanks は 2 億ドルで Prytek に買収された。 TipRanks は AI と自然言語処理を用いて、金融市場データを分析し、投資家向けの洞察を提供している。この動きは、 AI 技術が金融分野でも重要性を増していることを示している。記事によると TipRanks は月間アクティブユーザー数が 5,000 万人を超え、個人投資家だけでなく、 Nasdaq 、 Robinhood 、 CIBC 、 Morgan Stanley 、 TD 、楽天などの企業顧客も獲得している。

長文生成 AI の分野でも進展が見られた。清華大学の研究チームは、 1 万語以上の一貫性のあるテキストを生成できる AI システムを開発した。これは、 AI による長文執筆の可能性を広げるものだが、著作権や情報の信頼性など、新たな課題も提起している。研究チームは、 AI モデルの出力の長さが学習時に遭遇するテキストの長さと直接関係していることを発見し、これを基に 2,000 語から 3万2,000 語の範囲の執筆サンプル 6,000 個からなる「 LongWriter-6k 」データセットを作成した。このデータを用いて学習させた 90 億パラメータのモデルは、長文テキスト生成タスクにおいて、より大規模な独自モデルをも凌駕する性能を示した。

FinTech 業界の躍進と新たな動き

Revolut

金融テクノロジー(FinTech)分野では、英国のネオバンク Revolut が新たな評価額 450 億ドルを達成し、欧州で最も価値の高い非公開テクノロジー企業の一つとなった。この評価額は、 Revolut が英国とメキシコで銀行ライセンスを取得したことや、記録的な利益、ユーザー数の増加などを背景に実現した。 Revolut は 2015 年にロンドンで設立され、マルチカレンシー口座、決済・送金サービス、暗号資産商品、保険など幅広いサービスを提供している。 Revolut の CEO である Nik Storonsky 氏は記事の中で、「従業員の努力、革新、献身が、我々をヨーロッパで最も価値のある非公開テクノロジー企業に押し上げた」と述べている。今後の IPO の動向が注目されており、米国上場を検討しているとの報道もあるが、英国政府は国内での上場を促そうとしている。

一方、アフリカの e コマース大手 Jumia は、 9,960 万ドルのセカンダリーにおける株式売却を完了した。この資金調達により、 Jumia は成長を加速させ、収益性の向上を目指している。 Jumia の CEO である Francis Dufay 氏は、この資金が「バランスシートをさらに強化し、収益性への道を進みながら成長軌道を加速するのに役立つ」と述べている。 Jumia の第 2 四半期の顧客数は 200 万人で、前四半期比 6.0% 増、前年同期比では横ばいとなっている。 Dufay 氏は「我々の顧客基盤はまだ比較的小さく、四半期あたり約 200 万人のアクティブな消費者がいますが、我々は 6 億人以上の人々がいる市場で働いています。顧客基盤についてはもっと多くのことができる」と述べ、アフリカの e コマース市場の潜在性を強調している。

Gamee

ゲーミング業界では、Web3 ゲーミング企業 Gamee が TON Ventures から投資を受け、 Telegram ミニアプリの開発を進めている。 Gamee は TON ブロックチェーンを活用し、デジタル資産やトークンを Telegram プラットフォーム上のゲームに統合することを計画している。これは、メッセージングアプリとブロックチェーンゲームの融合という新たな潮流を示している。

記事によると Gamee は現在、 WatBird ミニアプリに接続された TON ウォレットを使用するプレイヤーが 400 万人を超えており、 TON ゲーミングエコシステムでの活動をさらに拡大し、追加のゲーミングおよび Web3 コミュニティ、 GameFi 投資家、 Telegram ユーザーを TON ブロックチェーンと TON ウォレットに取り込む計画を立てている。

大物投資家が喧嘩?

また、ベンチャーキャピタル業界では、Jeff Bezos 氏の弟 Mark Bezos 氏が運営する HighPost Capital が、 1 億ドルのデビュー VC ファンド「 HIPstr 」を立ち上げたと伝えられている。このファンドは過去数年間のスタートアップ評価額が大幅に下落したことを受けて設立され、コンシューマー向けサービス企業をターゲットにする。

一方で、業界内で大物同士が喧嘩する珍しい風景もみられた。ベンチャーキャピタリストの Ben Horowitz 氏(a16z 創業者)と Michael Moritz 氏(Sequoia Capital 創業者)の間で、ジャーナリズムの独立性をめぐる論争が起きたのだ。論争の発端は、 Moritz 氏が支援するニュースメディア SF Standard の記者が、 Horowitz 氏とその妻 Felicia 氏に関する記事の取材を開始したことだった。 Horowitz 氏は X プラットフォーム上で、この「今後公開される記事」を「安っぽい中傷記事」と呼び、 Moritz 氏は「偽のニュース紙を使って、ビジネスライバルである私に関する中傷記事を捏造させている」と応酬している。

話は変わってその X のお株を奪おうと着実に成長しているのが Threads だ。Threads は新機能のテストを開始し、スケジューリングや分析ツールなど、ブランドやクリエイター向けの機能を強化している。これは、 X(旧 Twitter )との競争を意識した動きと見られる。

Threads は 2023 年 7 月 5 日の正式リリースから 1 年が経過し、現在は月間アクティブユーザー数が 2 億人を超えている。新機能には、最大 100 件の下書きを保存できる機能や、ホームページの固定列の並べ替え、フォロワーの人口統計やインタラクション、「ビュー」などのデータを提供する Insights ページなどが含まれる。これらの機能は、主にブランドアカウントを運営するマーケターにとって有用なものとなっている。 Meta は 2025 年頃に Threads に広告を導入する計画があるとされており、これらのブランド向けツールの導入は、その準備の一環と見られている。

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