Procreate の声明「生成 AI は窃盗で構築されたテクノロジー」に反響ーーテックトレンドまとめ読み【TechDaily】

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TechDaily は筆者が毎日実施しているテックニュースの斜め読みをまとめたもの。グローバルで気になる資金調達、テックトレンド、スタートアップニュースをまとめて共有する。しばらく不定期更新でお送りします。

スタートアップの資金調達環境は厳しさを増している。 Crunchbase の調査によると、初期段階のスタートアップが資金調達ラウンドをクローズするまでの時間がここ 10 年で最長となったらしい。2024 年の Series A から Series B までの中央値は 28 ヶ月で、2012 年以降で最長。グローバル(特に調査対象になっている北米)は日本国内と状況が違うとはいえ、傾向はウォッチしておきたい。

ちょっと興味をひかれた調査があった。ペアレンタルコントロールソフトウェアメーカーの Qustodio が発表した調査結果によると、7〜9歳の「iPad キッズ」の 30% 以上が X(旧 Twitter)のアカウントを持っているそうだ。この年齢層の 44% が自身のタブレットを所有しており、そこで示される Google 検索結果の X の投稿を通じて X を発見している可能性があると指摘している。また、多くの親が X を「古い」アプリと考えており、TikTok や Snapchat のような他のソーシャルメディアアプリにかけているような制限をしていない可能性があると分析している。

Twitter はかつてインターネット老人会のおしゃべり場だったが、今、私の周辺は誰もいなくなっている。発言するメリットがないのだろう。では、それ以外の調達など気になる話題をまとめる。

生成 AI への反発

Procreateのサイトに掲載された生成 AI に対するステートメント

デジタルイラストレーションアプリの Procreate が生成 AI に対する明確な反対姿勢を表明し、クリエイティブコミュニティから称賛を集めている。Procreate の CEO である James Cuda 氏は「生成 AI を本当に嫌っている」と X への動画ポストで述べ、同社の製品に生成 AI 機能を導入しない方針を明らかにした。Cuda 氏は「我々の製品は常に人間が何かを創造するという考えで設計・開発されている」と説明し、人間の創造性を支援することが正しい道であると信じていると強調した。

この姿勢は、Adobe などの競合他社が生成 AI 機能を積極的に導入していることへの対抗策とも受け取られている。Procreate は、生成 AI が「物事から人間性を奪っている」と批判し、この技術が「盗みの基礎の上に構築され、不毛な未来に向かっている」と主張している。同社は機械学習には価値があると認めつつも、現在の生成 AI の方向性は人間の創造性という最大の宝石に対する道徳的脅威であるとの見解を示した。

ElevenLabs

一方で、AI 音声合成ツールを開発する ElevenLabs は、テキスト読み上げアプリ「Reader」を全世界で提供開始した。このアプリは 32 言語に対応し、ユーザーがアップロードしたテキストコンテンツを様々な言語や声で聴くことができる。ElevenLabs は今年ユニコーン企業となり、Andreessen Horowitz などから 8,000 万ドルの資金調達を行った。Reader アプリは、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ヒンディー語、ドイツ語、日本語、アラビア語、韓国語、イタリア語、タミル語、スウェーデン語など多様な言語をサポートしている。

一方、 Apple は初めてウェブアプリ版の Podcasts を公開した。これにより、 iPhone ユーザーが Windows PC でも Apple Podcasts を利用できるようになった。ウェブアプリは podcasts.apple.com でアクセスでき、デスクトップウェブブラウザから Up Next キューやライブラリにアクセスし、新しいポッドキャストを探すことができる。

半導体業界の動向とロボット工学

Unitree Roboticsのサイトは本気なのかギャグなのか判断がつきかねる

中国の Unitree Robotics が、一般消費者向けヒューマノイドロボット「G1」の量産準備を整えたそうだ。価格は 1万6,000 ドル(!)で、23 の自由度を持つ関節を備え、最高速度は時速 7 km 以上、階段の上り下りも可能である。G1 は高さ約 130 cm で、折りたたんで収納や運搬ができる。重量は約 35 kg と小型軽量化されているが、バッテリー駆動時間は 2 時間程度と短い。

G1 の特徴は、3 本指のハンドを備えており、はんだ付けや調理などの細かい作業が可能なことだ。視覚システムには Livox 社の Mid-360 ライダーカメラと Intel 社の RealSense D435 深度カメラを採用し、3D での世界認識を実現している。しかし同社は G1 が購入後すぐに家事をこなせるわけではないと注意を促している。G1 は模倣学習を通じて新しいタスクを習得する設計になっており、当面はロボット工学研究のためのプラットフォームとしての需要が見込まれている。

AMD が AI インフラプレイヤーである ZT Systems を 49 億ドルで買収すると発表した。この買収により、 AMD は AI、クラウド、汎用コンピューティング向けのコンピュート設計とインフラストラクチャ提供能力を強化する。 ZT Systems のコンピューティングインフラ設計事業を取り込むことで、 AMD は AI システム設計においてソフトウェアやシステム全体に関する専門知識を深めることができる。

AI システムの複雑化に伴い、大手テクノロジー企業が AI モデルのトレーニングや推論など、最も計算負荷の高い側面でシステムの効率を向上させることを優先課題としていることを反映している。 AMD の CEO である Lisa Su 氏は、この買収を「クラウドおよびエンタープライズ顧客向けにスケールで迅速に展開できるリーダーシップトレーニングおよび推論ソリューションを提供するための長期的な AI 戦略における次の大きなステップ」と位置付けている。

アフリカのスタートアップエコシステム

Y Combinator 出身の Waza

アフリカのスタートアップシーンを見るとリープフロッグの状況がよくわかる。クロスボーダー決済と流動性管理プラットフォームの Waza が 800 万ドルのシード資金調達を発表した。 Waza は Y Combinator 出身で、アフリカの企業や貿易業者がグローバルなサプライヤーの管理と支払いを容易にすることを目指している。記事によると創業から 5 ヶ月で月間支払い額が 7,000 万ドルに達し、年間取引額は 7 億ドルに上るという。

Waza は多国籍企業、輸入業者、トレーダー、そして他の fintech や開発者向けに、6 大陸にわたるビジネス支払いと流動性管理を促進している。創業者の Maxwell Obi 氏は、クロスボーダー決済の文脈における貿易において、迅速な支払いと製品の到着が重要であると強調している。

気候変動対策技術の分野では、ドイツ・ベルリン拠点のRoot が農業サプライチェーンの脱炭素化を目指すプラットフォームとして 800 万ユーロのシード資金を調達した。 Root は食品・飲料会社が農業サプライチェーンの一次データを収集することを支援し、各製品の環境フットプリントをモデル化することで、サプライチェーン全体の「排出ホットスポット」を可視化する。

Root の共同創業者である Eric Oancea 氏は、食品業界が汎用ソフトウェアソリューションや市場ベンチマークを使用する気候コンサルタントから脱却し、サプライチェーンから実際の活動データを収集するシステムやプロセスへ移行する必要性を強調している。この取り組みは、企業が Scope 3 排出量、つまりサプライチェーン内に隠れた温室効果ガス排出量に取り組む重要性が高まっていることを反映している。

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