米国で日本酒テイスティングキットのD2Cサブスク「Tippsy Sake Club」運営、2億円をプレシリーズA調達——W venturesらから

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300mLミニボトル入りテイスティングキット
Image credit: Tippsy

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

ロサンゼルスを拠点に、テイスティングキットのサブスクリプションを中心とした日本酒 D2C サービス「Tippsy Sake Club」を運営する Tippsy は14日、プレシリーズ A ラウンドで約2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは W ventures がリードし、DEEPCORE、KSK Angel Fund、Zynga の共同創業者でエンジェル投資家の Justin Waldron 氏、名前非開示の個人投資家複数が参加した。

これは同社にとって、50万米ドルのシード調達に続くものだ。昨年実施したシードラウンドには、同社が Open Network Lab の Seed Accelerator Program 第20期に採択されたことから同プログラム運営元の DG Ventures から資金を調達しているほか、シリコンバレーのディープテック VC である TSVC、サンフランシスコの VC である StratMinds らが参加していた。今回のプレシリーズ A ラウンドを経て、Tippsy の累積調達額は2億6,000万円に達した。

伊藤元気氏
Image credit: Tippsy

Tippsy は2018年、アメリカの日系食品インポーターで日本酒のマーケティングなどを10年間にわたり経験した伊藤元気氏により創業。日本酒400種類の中からミニボトルに入れた日本酒のテイスティングキットを定期的に届けるサブスクサービスを、3ヶ月99米ドルで提供している。アメリカではミレニアルを中心に日本酒が人気を集めており、そのメンバーの99%はアメリカ人だという。

ブームの日本酒だが、その営業活動やマーケティングには課題がある。まず、レストランで美味しい日本酒に出会えたとしても、アメリカではそれを買いに行くところがない。酒瓶の詳細説明、蔵元の Web サイトなども日本語で書かれているので、平均的なアメリカ人には読めない。さらに、禁酒法時代にできた法律の影響で、全米にダイレクトにデリバリできる D2C 形式の日本酒販売にも制約がある。また、酒販のサプライチェーンが縦割りであるため、蔵元やメーカーが市中の酒販店にブランド啓蒙する文化も無いそうだ。

テイストデータを使った商品ページ
Image credit: Tippsy

Tipssy では、蔵元毎のストーリーテリングなどブランドコミュニケーションに注力し、日本酒に不案内なアメリカ人にも味の違いをわかりやすく紹介している。400種類以上の日本酒ブランドへのアクセスを提供し、メンバーなどによる日本酒へのレビューも5,000件以上に達した。サブスクで毎回異なる銘柄のミニボトルが送られてくることでメンバーには新たな日本酒への出会いを提供し、蔵元やメーカーにとっては、日本酒フリークの消費者にダイレクトにリーチできるマーケティングチャネルを提供するわけだ。

Tippsy では、全米の消費者に酒を直販できる免許を持つ物流パートナーと提携しており、そうして酒を届けた先の消費者と直接対話ができる関係性を構築している。これまでは蔵元が持つデータを収集しメンバーに提供してきたが、今後はユーザの嗜好を蔵元にフィードバックするなどして、日本酒のマーケティングや商品開発に活用してもらう仕組みを整えるという。Tippsy の運営メンバーには、アメリカ最大の唎酒師の学校 Sake School of America 出身者も居て、消費者への啓蒙活動を強化していく計画だ。

Tippsy に近い分野では、日本酒の海外需要開拓支援を念頭に、アメリカでワインのサブスク D2C や卸売を展開する Winc にクールジャパン機構がかつて1,000万米ドルを出資している。Winc は昨年、延期していたニューヨーク証券取引所への上場を達成し、現在の時価総額は4,300万米ドル弱に達している。

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