〈アジアHWスタートアップ・インタビュー〉タッチスクリーン式スマートプロジェクターを開発するTouchJet

ゲストライター by ゲストライター on 2016.1.22

cycircl-150x150本稿は、Choon Yan (CY) Tan 氏による寄稿である。

Choon Yan (CY) Tan 氏は、PayPal および Braintree のアジア太平洋におけるスタートアップ・アクセラレータ、インキュベータ活動を牽引している。銀行テクノロジーの経験を持つほか、Google では、Android および Chrome 製品のデータ分析の専門知識をもとに、カリフォルニアで Google のサプライチェーン・インテグレーション・チームを牽引していた。

日本の Open Network Lab、マレーシアの MaGIC、シンガポールの Startup Bootcamp などの主要アクセラレータで決済最適化のメンター、Echelon や TechCrunch などのアジアのスタートアップ・カンファレンスでスピーカーを務めている。(これまでの寄稿はこちら


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Image credit: TouchJet

VCは多額の資本投下を必要とするハードウェアスタートアップを敬遠するだろうか? この分野の企業は同意見だろうが、PayPal Bluprint が支援する TouchJet の場合はそうではない。

TouchJet は、世界初で唯一のタッチスクリーンスマートプロジェクターとタッチスクリーンスマートTVを開発した。TouchJet Pondは、対話式のAndorid PCを使ってどんなものの表面も巨大なタッチスクリーンに変えてしまう小型の手のひらサイズのプロジェクターだ。TouchJet Wave は、フラットスクリーンTVをタッチスクリーンスマートTVに変える。

私は、TouchJet の社長、Tom Li Jiang氏と会う機会を持つことができ、彼らのハードウェアベンチャーに関する話をした。

TouchJet について教えてください。

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TouchJet 社長 Tom Li Jiang氏

私は、技術の分かるもう一人の共同創業者、Zhen Liu 氏と共に2013年にTouchJetを創業しました。その後、Helen Thomas 氏がCEOとして入社しました。私は、約10年以上連絡を取っていなかった大学の元同期の Zhen に偶然、北京空港のスターバックスで会いました。

話を進めるうちに、タッチ技術を使ったより深い交流を提供することで、人々を引きつけることができるという同じ考えをもっていることに気付きました。私達の最初の製品は、Indiegogo でローンチされ、最も資金調達のできたクラウドファンディングの上位20位入りを果たし、およそ100万米ドルを調達できたことで、私達の確信は証明されました。

なぜテック起業家に転身したのですか?

私は、Nanyang Polytechnic や Singapore Institute of Management (シンガポール経営学院)の非常勤講師で、並行してコンサルタント業もやっていました。Zhen氏は、Huawei(華為)で優秀なハードウェアエンジニアとして働いた後、退職し、ニュージーランドに移住して来ていました。私達は、どちらも余暇がありました。

TouchJet を創業してから、私の年収は急落し(20万シンガポールドル=約1,600万ドルから0ドルに)、私の家族は新しい生活に適応する必要がでてきました。車を売って、アパートを借りなければなりませんでした。また、メーカーとコンタクトを取り易いように、家族で中国・深圳に移り住みました。睡眠はあまり取れず、アメリカとアジアの両方と24時間会社の運営をしなければなりませんでした。

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なぜ、その課題に打ち込もうと思ったのですか?

2007年当時、いくつかのコンサルティング会社が有望な技術トレンド、Interactive Digital Media (IDM) に焦点を当てたリポートを手に、技術専門学校を訪問していました。このトレンドは、今日の市場で成功しているIDM消費者向け製品に反映されています。

例えば、Wii、Microsoft Kinect、Leap Motionなどがこれに当たります。さらに、iOS や Android プラットフォーム上で小さなタッチスクリーンの開発に取り組んでいる人も多くなってきています。TouchJetにより、低価格のハードウェアで、テレビやプロジェクターのようなより大きな画面へのタッチ操作も可能になり、消費者の作業、学習、操作の効率を向上させています。

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販売やサービスの運営を多くの国で行っていますが、シンガポールのようなサービス志向の国にも拠点を置いていますね。どんな利点や課題に直面してきましたか。

シンガポール政府のプログラム「i-jam (IDM Jump Start and Mentor) 」は当初、TouchJet への財務支援として、20万シンガポールドル(約1,600万円)の補助金を出してくれていました。その後は、TNF Ventures が、NRF-TIS プログラムで弊社に投資してくれました。この投資で、Indiegogo キャンペーンが実現しました。より巨額のシリーズBや上記の投資ラウンドで資金調達するためには、アメリカや中国に頼らなければなりません。

シンガポールに拠点を持つと、税が安いことがもう一つの利点です。シンガポールは、第二次半導体バブルにあり、低コストで優秀なコンピュータービジョンエンジニアを雇えるというのも利点です。しかし、サプライチェーンやハードウェアサポートエンジニアは、費用効率や契約メーカーに近いという理由から深圳で働いています。知的財産権(IP)も心配の種です。というのは、弊社の製品は、アメリカ、中国、ドイツで特許を得ているからです。

どのように製品の価格構成を決定しましたか?

市場の大きさ全体の中で、アメリカや中国は、消費大国です。中国を除いて、業界標準に従い、少なくとも原材料費(BOM)の3倍の値段で価格設定を行い、高い利ざやを実現しています。中国では、急成長するために強力な販売網を持つパートナーと協力し、販売します。市場構造の理解は、適切な価格設定と密接に関わっているのです。

以前に比べ、クラウドファンディングはハードウェアスタートアップが成功する助けとなっているのでしょうか?

そうですね。クラウドファンディングプラットフォームを利用したマーケティングは、低価格で行うことができます。クラウドファンディングが成功したことで、VC投資をより多く受けることができ、チーム拡大をすることができました。また、その成功でメディアの注目を集めることができ、最終的に60件もの販売のチャンスを得ることができ、弊社はその中から18件の案件を選定することができました。

もう一つの利点は、深圳でプリント基板(PCB)の入手から包装に至るまでの、サプライチェーンで必要となる全てのものを見つけやすくなるという点です。10年前なら、一つの製品を作るだけでもいろいろな会社に協力してもらう必要があったでしょう。今では、一つのOEM先に生産開始のためのプランを提出するだけでよくなったのです。

ハードウェアスタートアップを始めるにあたって、もっと早くに知っておけたら良かったと思う落とし穴は何かありますか?

類似の製品をより安価な値段で提供している会社と差別化を図るには、ブランディングが重要です。GoProの模倣品は、本物の製品の10倍安いですが、それでは僅かな儲けを産む程度です。これは、GoProがヒーローになる夢を売っており、熱烈なコミュニティを作っているからです。

もう一つ注意したいのは、チームやパートナーの選択です。適切にチームやパートナーを割り振れていないと、TouchJetは、新製品の開発に乗り出したり、新しい市場に参入したりしないほうがよいでしょう。

今後のプランはどんな感じでしょうか?

まず、純粋なハードウェア会社を目指します。現在、Helen 氏がTouchJetは、IDM会社になるというビジョンを表明しています。具体的には、弊社のハードウェアデバイスを使って消費者にコンテンツを提供したり、安価なテレビ会議デバイスを提供するするのです。

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