デジタル先進国エストニアーー政府がスタートアップのように運営される国

by Chris O'Brien Chris O'Brien on 2016.4.21

Image Credit: E-Estonia
Image Credit: E-Estonia

ヨーロッパの北東角に位置するエストニアは、インターネットを使ってデジタル時代の国のあり方を再考する世界でも類を見ない政府モデルとして浮上している。

人口わずか130万人、旧ソ連からの独立後30年も経っていないエストニアでこれは驚きだ。しかし、エストニア政府は全体的主導権のもと、デジタル市民権、セキュリティ、バーチャルビジネスや教育といった先駆的アイデアを育ててきた。

エストニアにおけるデジタル改革の鍵を握る人物の一人であるKaspar Korjus氏によれば、小さな国であること、短い近代史と孤立していることのおかげで国家の概念を再考することが可能であったという。

首相が36歳の国では、過去や古い慣習にしがみつくことはあまりない。

「新世代がエストニア政府を運営しています」Korjus氏は電話インタビューでこう答えた。「だからこそ、政府は迅速で機敏です。人々はデジタルの世界を理解しています。説明の必要はありません」。

弱冠27歳のKorjus氏は、エストニア革命の基盤である最新プログラムe-Residencyを監督している。

数年前に持ち上がったこのアイデアは、政府がエストニアの未来と経済の活性化について考えたことから生まれた。そこである疑問が浮かんだ。2025年までに新しい住民を1000万人増やすには国は何をすべきか?

もちろん、エストニアに移住する人が増えるとは思えない。しかし、移住する必要がないとなればどうだろう?これを機に、次々とe-Residencyプログラムのアイデアが出てきたのだ。スウェーデンのスタートアップTeliaSoneraで働いていたKorjus氏はe-Residencyプログラム開発に抜擢された。

Korjus氏が関わるようになった頃、エストニアはすでにプログラムの土台作りに20年近くを費やしていた。独立から数年後、同国にとって全国を網羅するITインフラを一から作り上げることは不可欠だった。

最初の取り組みが結実したのは、政府がすべての市民に対する2048-bit公開鍵暗号チップ入り身分証明カードの発行を決定した2002年であった。カードはエストニアの政府機関すべてにおいて身分証明として利用できる。

それで何ができるのだろう?国民健康保険証、銀行口座のログイン、書類のデジタル署名、自宅からのオンライン投票、自分の医療記録へのアクセスなどに利用できる。それに、数分でオンラインビジネスを始めたり、5分以内に納税したり、プライベートビジネスをプラットフォームに接続して取引確認を行うことも可能だ。

e-Residencyのアイデアは国のサービスを世界中で利用できるようにすることであった。当初、Korjus氏と数人のデベロッパーはエストニア国外で誰がなぜそれを利用しようと思うのかわからなかった。とにかく何かを作って何が起こるか見てみることにしたのだ。

「これを誰のために作っているのか、エストニアにとってどのような価値をもたらすのか、わかっていませんでした」と彼は言う。「人の移動が多いのはなんとなくわかっていましたし、各国でIDを作り直したり、国境を超えて取引することの大変さも知っていました」。

登録手続きは驚くほど簡単で、数分で済んでしまう。ローンチから数ヶ月でe-Residency登録者数は2000人に達した。現在では1万人となっている

「ニーズがあるということです」とKorjus氏。

Korjus氏によると、インターネット会社を始めたい人々はシステムを使ってエストニアで会社を設立し、世界のどこからでも管理ができるようになっている。また、欧州で事業をローンチしようとする企業にとって各国での子会社設立や口座開設手続きが煩雑なため、このシステムを利用しているという。

これまでに、約500社がe-Residencyを使ってエストニアで会社を設立した。エストニアで納税するだけでなく、ビジネスを通して銀行、法律事務所やその他支援サービスも利用してくれるのだ。経済効果はまだ数値化されていないが、PayPalのBraintreeがこのシステムを利用して決済を行うなど、企業にとってこのサービスは魅力的なものとなっている。

制限されることもある。e-Residency登録者はエストニア国内での投票はできず、渡航書類としてカードを使うこともできない。Korjus氏はまた、プログラムを通じて設立された企業は税金控除を受けられないと明らかにしている。タックスヘイブンを作りたいのではなく、利便性と効率の良さに魅力を感じてほしいのだ。

それこそまさに、サンフランシスコを拠点とするStamperyが同社ブロックチェーンベースの証明書と認証サービスでe-Residencyプログラムを使用すると今月発表した際にアピールしたことである。

「私たちの使命は、ユーザにとって正確で信頼のおける、確固たる存在証明を作り、すべてのファイルとデジタルコミュニケーションを統合することです」とStamperyのCEOであるDaniele Levi氏は声明で述べた。「エストニアのe-Residencyプログラムとの提携は世界でも初めてのことで、世界中のビジネスマン、ビジネスウーマンに大いに役立つはずです」。

Korjus氏は、エストニアにとってこれはまだ始まりであり、他国政府が同じことをするための道を切り開いたと考えている。他国が追い付くには時間がかかるだろう。しかしKorjus氏は、追い付いた時には市民には膨大な恩恵がもたらされるだろうと語った。

「こういったことが社会に受け入れられるには長い年月が必要です」とKorjus氏は語る。「しかし、20年後には過去を振り返ってこのようなことがすべて紙で行われていたことが信じられなくなるはずです」。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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