
欧米の「ワールド・オブ・ウォークラフト(以下、WoW)」プレーヤーの間では、「ゴールドファーミング」やほかの採掘ゲームなど、MMORPG (多人数同時参加型ゲーム)でゲーム内の仮想アイテムを掘り出し、それらを他のプレーヤーに販売し現実のお金にする行為は、不適切だと見られることが多い。
大抵の場合これといった理由はなく、「ゴールドファーミング」と言えば中国を連想し、YouTubeにも「中国のゴールドファーマーは死ぬべきだ」というようなビデオがたくさん投稿されている(警告:ビデオにBeckの曲が流れている)。そして、それらのビデオはゴールドファーマーを捕まえて殺す自警団プレーヤーを映し出している。
ゲーム世界やゲーム内経済に与える効果についての懸念は妥当なものだとしても、こうした「農夫」や「炭坑夫」への憎しみは行き過ぎのようにも見える。中国の囚人たちが WoW の世界で金を増やすことを強要されているということが明るみになっては特にだ。最近では、障害を持った男が家族を食べさせるために WoW で金を増やす作業をしているという話が中国の掲示板で書き込みされ、地元紙の記事にもなっている。
友人にはAh Jie、WoWのプレイヤーには Ah Jie Mining として知られる男、Su Jie は27才の労働者だ。彼は仕事中の怪我が原因で、少し歩くだけで激しい痛みに襲われるようになってしまった。彼の雇い主は賠償を拒んでいる。訴訟の手続きが進んでいるが、司法の動きは遅く、Su はその間にも医療費はもちろん、妻や子を食べさせるために稼がなくてはならない。夏の始めに、彼の妻は親戚からWoWの金鉱掘りについて聞いていた。Su氏によれば、それ以来彼と妻は交代で、一日20〜24時間もの間、金鉱掘りをしているという。
ゲーム代金と、PCの電源をほぼ入れっぱなしにしておくことで発生する電気代を差し引いても、二人は丸一日の作業で30から40元を得ることができるとSuは言う。多くはないが、彼と妻そして息子を食べさせるには十分な金額だ。この物語が掲示板にポストされると、多くのネチズンたちがスーたちに現金を寄付しようとしたが、スーはそれを拒んだ。「寄付をしてほしくて投稿したわけじゃない。みんなに知ってもらって、ボスから手術の代金をもらいたかったんだ」スーは言う。しかし中国のゲーマーたちは、寄付するための別の方法を思いついた。 スーから鉱石を買った後、彼がそれを再び売ることができるように、買ったものをこっそりと返すのだ。
「彼らの行為はとてもありがたかったが、自分には礼を言う機会がなかった」スーは言う。
Su Jie の事件は数週間のうちに法廷に向かう。賠償金をもらえることを願っている。そしてそれまでの間、彼とその妻は今日もまた息子のために WoW で金を掘り続けるだろう。
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